鉄パイプ
都市部に近づいていく途中でホームセンターや服屋さんが敷地内にある大きなスーパーに通りかかった。
「もう疲れたし物集めるのここでよくなーい?」
だるそうな声で香菜が言う。
「そうだね、これだけ広かったら色々ありそう。」
そう言ってスーパーの駐車場に入っていく。
スーパーの中は灯りが点いておらず、かなり暗かった。
「よく見えないなー…」
「先にホームセンターに行こうか」
ホームセンターならランプがあるだろう。ほかにも色々役に立つものがありそうだ。
ホームセンターの中も灯りは点いておらず、暗い。早くランプを見つけないと。
「何がいるかわからないから気をつけてね」
香菜はウンウンと何度も強く頷く。
入り口においてあった鉄パイプを持って、恐る恐る店内へ入っていく。
スマホのライトを頼りに懐中電灯やランプを探す。
どこかから視線を感じるのは気のせいだろうか。
カツン…カツン…と足音が店内に響く…。
「あった!」
声の聞こえる方を見るとランプと懐中電灯がたくさん並んだ棚を香菜が指差していた、だがそれと同時に奥の方の棚の角から人影が一瞬見えた。
懐中電灯をパッと手に取る。
「人がいた…静かにしてて。」
そう香菜に伝えて、人影が見えた方に足音を立てないようゆっくりと近づく。
鉄パイプを強く握り締める。汗が止まらない。
バッと勢い良く角を飛び出し左手に持った懐中電灯を向けて、
「動くな!!!」
と叫んだ。
「きゃあっ!」
影が悲鳴を上げた。
顔の方に懐中電灯を向けると女性であることがわかった。ロングヘアの頭にニット帽を被っていて、少し厚着。
「殺さないでっ!」
女性がまた叫ぶ。
「おっ、落ち着いて!その…怪しい人かと思って身構えただけで…安心してください…!」
「そ、そうなの…?なら良かった…さっき怪しい男に追いかけられて…怖くてしょうがなかったんです…。」
そういうと女性は泣きだしてしまった。
「大丈夫ー?」
と言いながら香菜が走ってくる。
「人がいた、危害は無さそう。」
そう言って子供のようにワンワン泣く女性の方を見る。
「大丈夫ですかー?」
香菜が女性に尋ねる。
「はい…。安心したら何か泣けてきちゃって…」
そう言うと女性は涙を拭いて立ち上がる。
「お騒がせしました…横井葉子っていいます…。大学2年生です…。お二人は
どうされたんですか…?置いてかれちゃったんですか…?」
「あー…その…寝坊しちゃったせいで乗り損ねたんですよね…」
香菜がそう言いながら恥ずかしそうにこっちを見てくる。
「逆に葉子さんは…?」
「まあ…その…いろいろありましてねぇ…」
「あっ、言いたくなかったら言わなくていいんですよ。」
葉子さんは俯いてしまう。
少しの間沈黙が続くと葉子さんが顔を上げる。
「あのぉ…お二人は今後どうするつもりで…?」
「日本各地をぶらぶら旅しようと思って。」
「はぁ…なるほど…それはなかなか楽しそうですねぇ」
「それでホームセンターに物資を集めに来たんですよー」
「そういうことでしたか…あの…もし良かったら一緒にホームセンター回りませんか…?一人だと不安で…」
「あぁ、全然いいですよ。」
香菜の方を見ると香菜はこちらに向かって頷く。
「じゃあ早速生活に使えそうなもの、ひとしきり集めていきましょうか。」
「そうですね。」
そう言って店内の散策を始める。
着火剤とかファイアースターターとか、他にも調理器具とかその他諸々生きるために便利になりそうなものを集めていく。ついでに護身用にさっき入り口で拾った鉄パイプも持っていくことにする。
スーパーマーケットでも、長期保存が効く缶詰や、乾パン、水などを一通り揃える。
「このぐらい集めればいいかなー?」
「そうだね。」
そう言って集めた荷物を確認する。
「あの…」
葉子さんが話しかけてくる。
「どうかしましたか?」
「さっき旅をするって言ってたじゃないですか、もしよかったら私の車で送りましょうか…?」
それはなかなかありがたい提案だ。免許も無く運転するのは少し不安だった。
「よろしいのであれば、是非お願いします!」
「じゃあ…そういうことで…」
「じゃあ早速出発しよ!」
そう言って、香菜が外へ走っていく。私達も続いて外へ出ると外はもう日が暮れだしていることに気づいた。思っていた以上に時間が経っていたらしい。
「やっぱり出発は明日にしよっか、行き先も決めてないし。」
「えぇー」
香菜が顔をぷっくら膨らませる。
「確かに…夜道は危ないですからねぇ。もし良かったら今日はうちに泊まっていきませんか?すぐ近くにあるんです。」
確かに、ここから家まで帰るのは少し危険だ。そうさせてもらおう。
「じゃあ…お言葉に甘えて。」
その言葉を聞いた瞬間香菜がお泊りだー!と、はしゃぎ出した。香菜は本当に単純だ。子供みたいにはしゃぐ香菜を見て体の緊張が解け、なんだか笑えてしまった。
もうすぐ地球が終わるそうで 偽物 @nisemono_
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