第2話 仲良くなろう

「ふああぁぁ…思ったよりぐっすり寝れたな」


朝六時。俺はいつもこの時間に起きる。


「あれ、スマホどこ…あ、あったあった」


昨日充電してから寝たつもりだったのだが、なぜかベットの下に落ちていた。


「…まぁいいか」


別に壊れてるわけでもないし、多分寝ぼけて落としたのだろう。

取り敢えず一階に降りて、顔を洗った。

とりあえずリビングに―――


「だーかーらー、バイト先の店長がぶっ倒れたんだって。」


「だからって朝帰りにはならないでしょー」


…リビングから何か声が。

この声、遥さん?もう一人は聞いたことない声だ。

何やら言い争ってるみたいだし、ここはいったん部屋に退避を。

そこへポン、っと肩に手が。


「おーい」


「うおっ!?…って花栗さんか」


「うおぉ...そんなに驚く?てか三谷、ドア前で何してんの」


「えっと...なんか言い争ってて入りづらくて...」


「へ?…ああ、雪とお姉ちゃんだよ。別に喧嘩してるわけじゃないから安心して」


そう言ってドアを開けてリビングに入っていく。

ていうか全く足音しなくてびっくりした。


取り敢えずついていく。


「おはよー」


「あ、おはようー水沙。と、佐希君。」


「姉ちゃんおはよー...ってもう一人の人は一体」


「ん?ちゃんと伝えてたでしょ。佐希くんよ。昨日から住むことになった子。」


「あ、確かに言われてた気も...」


「忘れたてたなお前...まぁ、取り敢えず自己紹介しろ」


その少年がこちらに振り向く。…イケメンだなこの少年。

やっぱり奈峰家は顔面偏差値が高い。俺の場違い感もすごい。泣きそう。


「う、うん。…初めまして。奈峰雪なみねゆきです。えっと...中三です。

あの、よろしくお願いします。サキさん。」


「こちらこそよろしくお願いいたします...。」


「お互いビクビクしすぎ。もっと力抜け力。」


取り敢えず自己紹介は済ましたが...昨日いなくなかった?雪君。

気になったのでソファに座りながら朝の番組を見ている花栗さんに聞く。


「あの、奈峰さん」


「…なに」


「雪君さ、昨日いなくなかった?」


「―ああ。あいつバイトしてるの。よく分かんないけど彼女の実家が店やってて、

そこで働いてるっていう...まぁ、昨日は朝帰りだったんだけどね」


「おいそこ強調するなよ…」


「じゃあ何で朝帰りとか言うことになるの」


「だーかーら、店長がぶっ倒れて病院送ったんだけどそれで遅くなっちゃって。

もう遅いから泊ってけって言われたから...ってかちゃんと連絡入れただろ。」


「昨夜はお楽しみでしたね」


「やってねえよバカ」


仲が大変よろしいようで。


「ねぇ姉ちゃんもう朝ごはんにしようよ。お腹減った。」


「え、早くない?今日日曜だけど…まぁいっか。雪、残り二名起こしてこい」


「へーい」


皆が朝食の準備を始める。


というかなんだかんだ花栗さんとは普通に話せている。

まぁ一緒に住むのなら無視、というわけにもいかないだろうし当然か。


それにしてもちょっとだけ上機嫌?な気がする。

何か良いことでもあったのだろうか。


そのまま朝食になった。

秋葉さんは起こしても起きなかったらしく、昼に起きてきた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・はぁ」


時刻は午後の一時。昼ご飯も食べ終わり、俺は部屋に引きこもっていた。

下の階では何人かが仲良さそうに話している声が聞こえるが、

元々人見知りな俺が混ざりにいくのは難易度が高い。


「てか母さんもう行ってたのかよ」


そう。なんと母さんもう昨日のうちに転勤先に飛んでたらしい。

「見送られるの恥ずかしいから」とのこと。


仕方なくスマホをいじっていると、コンコンと俺の部屋をノックする者が。


「三谷ー?開けていい?」


「…奈峰さん?」


入ってきたのは、奈峰さん(水沙さん)だった。


「こら。昼ご飯食べ終わったらすぐ逃げやがって。」


「緊張で死にそうになったんです...。」


頭を下げまくる。


「ちょいちょいちょい。そこまで謝んなくてもいいってば。別に大丈夫大丈夫。

…で、本題なんだけど。」


そういいながら花栗さんが取り出したのはとあるゲームソフト。


「それって…」


「懐かしい?子供の頃これでよく遊んでたよね」


対戦型のゲームで、ダメージを与えて吹っ飛ばす愉快なパーティゲームの最新作だ。

小学生のころ奈峰さんの家に行ったときは大体これをしていた気がする。


「…今から遊ぶの?」


「おっ、大正解!仲を深めるためにもやろうってお姉ちゃんが。

佐希、じゃなくて三谷これめっちゃ強かったでしょ。お姉ちゃんたちボコそ。」


「…うん!」


その後、みんなで騒ぎながらゲームした。めちゃくちゃ楽しかった。

それに結構仲良くなれた気がする。ゲームってすごい。


意外だったのが、恭哉さんが死ぬほど強い。

俺もかなり強いほうだと思っていたが、全く歯が立たなかった。


雪君と奈峰さんはめっちゃ接戦だった。

殴り合いに発展するくらいには。


――あ、そういや明日から学校だ。

何事もなければいいのだけれど。


―――――――――――――――――――


「変な誘い方じゃなかったよね!?!?」


その日の夜、隣の部屋で悶絶していた人がいることを、俺はまだ知らなかった。





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昔フラれた幼馴染の家に住むことになりました。問題だらけの大家族付き。 空賀くも @mottomo

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