少女狂気5

――――

「てなわけで、それが証拠の映像。これで気は済みましたでしょうか?」

 明るい昼下がり、男は電話で呼び出され復讐屋に赴いた。

 大きなテレビ画面には前日の夜の一部始終を映されている。

「……」

 男は黙り込む。それは何故か、目の前の映像の恐怖からか。いや違うこれはそんなチンケな感情ではない。

「ありがとうございます……!これで妻は、妻は報われます!」

 これは歓喜だ。やっと達成できたのだ。あの男を殺せた、死なせた、これで……!!

「じゃあ約束通り代金いただきますかー」

 彩目が声を上げた。今回の契約の金額はまともに働けば手に入ることの無い金額だったのだ。だが、目先の欲に縛られそれを無視していた。

「か、金はもう少し待っててくれ。……直ぐに用意するから……」

「それは契約違反だよ?守れないなら警察読んじゃおうかなー?」

「け、警察は勘弁してくれ!そ、そうだ警察なんて呼んだらあんたらの方が困るだろ!実行したのはあんたらだ、お俺は関係ない!!」

 立ち上がり声高らかにそう言い放つ。しかし彼女たちは焦るでも無くただ笑って男を見つめている。

「な、なんだよ……なにがおかしいんだよ……」

「いやーここに来た馬鹿なお客さん達と同じこと言ってるから笑っちゃったよ、こっちは色々手を尽くしてあげたって言うのにねー」

「まぁ契約を違反するってことね。そちらには罪を被ってもらうわ」

パチリと誰かが指を鳴らせば男はいつの間にか自身の住んでるアパートの前にいた。目の前には警察がいた。

「足立和人さん、あなたに殺人容疑がかかっています。ご同行願えますでしょうか?」

 警察の手には逮捕状が掲げられている。

「お、俺はやってない!あいつらだ!復讐屋の奴らが勝手にやったんだ!!俺は関係ない信じてくれ!!」

 警察に縋るようにして声を上げ泣きながら話す。警察達は困った顔をしながら言葉を続ける。

「昨日の夜あなたが被害者の男性をホテルに連れ込んだ映像が撮れてます。言い逃れはできません」

「違う!違うんだ!!俺じゃ、俺じゃないんだー!!」



――――

「ねぇ杏ちゃん、今回はDVD作って送るだけにしなかったのなんで?」

 男が消えたあと、各々はリビングで昼食の準備に取り掛かったりお菓子を食べたり本を読んだりしていた。

「あの客、最初から払う気なかったのは目を見ればわかったからね」

 ソファで疲れた体を癒すように体を預ける。ふわふわとした感触が肌に心地よい。

「そういえばあの子供たちどうするの?二人とも連れ帰って来てたけどお世話できるの?」

「大丈夫、片方、もう使わないから、女の子だけ遠野のご飯用にする」

蜜雪がぼそぼそと喋りそれに納得する。

 今日もまた客が訪れるのだろうか、どんな醜い欲を吐き出すのか見ものである。

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復讐屋〜gatto〜 真宵猫 @mayoi041

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