第4話 ハッピーハロウィン

「野菜くれないとイタズラしちゃうよ!」

「千瀬、それを言うなら〝お菓子〟だろ?」

「あ……」

 目を丸くする千瀬ちせ

 やれやれ、千瀬はうっかりさんだな。

「もう。いいじゃない。野菜も好きなんだもの」

「じゃあ、今日買ってきたキャベツをやるよ」

「ホント! ありがと!」

 俺はキャベツを丸々一個手渡す。

「うう。想像していたのと違う……」

 魔女のコスプレをした千瀬は魅力的だな。

 他のコスプレもやってはくれないだろうか。

 そんな疑問が湧いてくる。

「ほら。これも持って行け」

 俺はチョコの菓子をわたす、と千瀬は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「ありがと! 愛しているよ!」

 安い愛だな。

 定価二百円だぞ?

「そんなことよりも、少し遊んでいかないか?」

「いいの!」

 再び笑顔になる千瀬。

「いいよ」

「やった!」

 千瀬はガッツポーズをして駆け寄ってくる。

 可愛いな。まったくもう。

 ハロウィン仕様になった部屋に通すと、千瀬は嬉しそうに跳ねる。

「わー。ハロウィンって感じがするねっ!」

「そうだろう。今日のために色々頑張ったんだ」

「あれ? でもわたしが来なかったらどうしていたの?」

 うぐ。

 痛いところを突いてくるな。

「まあ、いいじゃないか。ははは」

 乾いた笑みが零れる。

「そう?」

 千瀬の視線は一点に向かっていた。

 テレビの前に置かれたゲーム機。

「少しゲームするか?」

「うんっ!」

 ゲームによってはハロウィン仕様があるけど……。

 千瀬が選んだのは二人で協力する形のゲーム。

 ハロウィン仕様で至るところにカボチャやコウモリ、魔女などがいる。

 少しにぎやかだ。

「すっごーい!」

 千瀬は嬉しそうにゲームを始める。

 最初は息を合わせるのにも必死だったが、一時間もすればかなりペースが合うようになっていた。

 夕暮れになり、窓から差し込む陽光も柔らかな季節。

 そろそろ帰る時間だろうと思い、千瀬を見やる。

「なんだか疲れちゃった」

 ずっとゲームをやっていて疲れたらしい。

 まあ、そうだよね。

「さ。そろそろお開きだ」

「うん。ありがとっ! 今日は楽しかったよっ」

 千瀬が立ち上がり、玄関へ向かう。

「じゃあ、またね」

 玄関で小さく手を振る千瀬。

 魔女の杖を持って外に飛び出す。

 そのまま自分のうちに向かっていった。

「楽しかったな」

 俺はふいに呟き、自分の部屋に向かう。

 と、

「あいつ、キャベツと菓子忘れていったな……」

 さすがうっかり者。

 まあ、明日渡してやるか。


 ハッピーハロウィン。千瀬。


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うっかり者の千瀬さん 夕日ゆうや @PT03wing

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