第39話 予定通りにはいかないもの


 父さんから我が家の夏休みに綾香を連れてきていいと言われ早速その夜彼女に連絡をした。

『綾香、父さんが我が家の夏休み、京都の別邸へ君を連れて行って良いと言われたんだけど都合つくか?』

『いつですか?』

『八月十五日を挟んだ一週間だ』

『えーっ、そうなんですか。残念ですが行けません。その時期は我が家も夏休みが有って別荘に毎年行っています』

『……仕方ないな。京都から戻ったら連絡入れる』

『残念です。気を付けて行って来て下さい』

『ありがとう。綾香も気を付けて』



 はーっ、慎之介さんと旅行か。行きたかったなあ。でも我が家もお父様お母様と私だけ。セキュリティやお手伝い達はともかく、私が行かないとなれば二人共寂しいはず。ここは仕方ない。諦めるかなさそう。



 父さんの真意は分からないが綾香と一緒に行けばいつもとは違った景色も見られたのに残念だ。仕方ないか。戻ってきたら一日位会えるだろう。




 俺は我が家の京都への旅行が終わった後、綾香へ連絡した。高原家の別荘への保養も終わっている。

 残念ながら京都から帰った後も来客が毎日あり、俺が外に出るのは難しい様だ。しかし、なんで最近こんなに多いんだろう。


『綾香、父さんに確認したが、どうも一日も会えないみたいだ』

『えーっ、そんな』

『でも仕方ない。俺も会いたいけど』



 結局俺達は二学期始めの始業式の日に会った。

「慎之介さん、おはようございます」

「綾香、おはよう」

「会えなくて息も出来ない程苦しかったです」

「そうか俺もだよ」



「ねえ、あの二人どうなっているの?」

「さあ、でも夏休み会えなかったみたいね」

「可哀想だけど、でも始業式の日にあれは無いわね」


 綾香は俺の片手を両手で挟み込む様に持って、頬に近付けていた。まあ女子に何言われようが、もう知った事ではない。九条家と高原家の話はついている。


始業式が終わり、席替えが行われた。俺は運悪く廊下側前から三番目だったが、綾香は俺の前だった。席位置は悪いが二人にとっては悪くない位置だ。


 放課後、図書室に行くのは止めて綾香と一緒に帰る事にした。目的はデートだ。夏休み宿題をする時間を除いては二人で遊ぶという事が出来なかった。

 だからと言う訳ではないが、今日はその代わりと言う訳だ。土日にすればいいという考えも有ったが、二人共我慢出来なかったというのが本音だ。



 駅に向かう途中

「やっと二人きりになれましたね」

「そうだな。ところで何処に行く?」

「それは慎之介さんが決めて下さい」

「…………」

 困ったな。会いたい事しか考えて無かった。何処と言われても。黙ったままにしていると


「どうしたんですか?行く所が思い浮かばないんのですか?」

「いや……。悪い。綾香と会いたいという気持ちばかりが前に出ていて、実際会ったら何をするという事が思い浮かばなくて」

「そうですか。そうですね私もです」


 綾香は握っている手を何故かにぎにぎしながら

「ではショッピングモールの側にある公園にでも行きますか」

「それでは綾香が帰り遠くなるぞ」

「慎之介さんが送ってくれるんでしょ。問題ありません」

 そういう事か。


 学校のある駅から俺が帰る方向の電車に乗って二つ目にあるショッピングモール。そこをずっと歩いて行くと公園がある。自然公園ではなく日本庭園風に造られた公園だ。


 二人で木で作られたベンチに座って景色を見ている。ここは少し高い所に位置しているので遠くに川が見える。二人共何も話さない。ただ手を握り合って座っているだけだ。


 一学期までは本城さんの件といい、浅川さんの件といい、色々有ったけど、それも片付いて今は何もない。何もない事は良いのだが、それが問題だ。そもそも二人共お喋りな方ではない。

 こうしているのはいいが、いつまでもこうしている訳にはいかない。


「「あの」」

二人で同時に声を出してしまった。


「綾香先に」

「いえ、慎之介さん先に」

 困った。綾香に何か話して貰う様に促すつもりだったのに。


「何かするか」

「えっ!何かって?」

「いや何かだよ」

 慎之介さんもしかしてあれしたいのかな。でも学校の帰りで制服だし。このままそれが出来る所に入るのは……。


「あの、そういう事は土曜か日曜の方が。今は二人共学生服ですし。このまま入ったら…」

「えっ!綾香そんな事考えていたの。まあいいけど、そうだな土曜か日曜にしようか」

「はい」

 綾香が顔を赤くして下を見ている。そうか綾香したかったのか。そう言えば一ヶ月以上ご無沙汰だし。


「じゃあ今日はどうする?」

「どうすると言われても……。このままでもいいですよ」

 あれ、俺さっきなんか勘違いしたのか?



結局この日はこれだけが会話?で陽が暮れ始めた時、彼女を家まで送って行った。ゲームとかカラオケとか二人共しないからな。塾に行ったら勉強だけだし。何か二人の共通の話題を見つけないと。


―――――


 中々難しいですね。共通の趣味が無いと。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから) @kana_01

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