付き纏ってくる女の子が俺好みの格好をしてくるようになったんだが
六花
GTR
やっと高校生になったがまだまだ先は長い。
人生って意味ではなくて車の免許を手に入れるまでだ。
来る日までの準備期間だと思えば決して長くはないが、それにしても待ち遠しい。
免許や車を買う金を貯める為に入学してすぐにバイトも決めた。どうせやるなら車に関係したバイトが良かったが、欲しい車を手に入れるには金が必要だから涙を飲んで時給の高いバイトにした。
高校生ともなれば恋愛だの何だのにうつつを抜かす奴も多いが俺はそんなものに興味はない。
車から言い寄られたら別だが。
日々学業とバイトに勤しむ俺は休日の今日もフルタイムでバイトの喫茶店で働く。
「いらっしゃいませ」
客が来たから入店挨拶を反射的にするが、その相手は客であって客じゃなかった。
「来たよ! 久留間くん!」
一般的に容姿も声も可愛いと絶賛される中学からの同級生の女の子、一途愛花。何が楽しいのか初めて会った時からずっと俺に付き纏ってくる奴だ。
「呼んでないんだが……はっ! そ、その格好は!?」
「これ? 久留間くんが好きかなーって思って……変かな?」
変もクソもない。
グリーンの色調で静かな中にも存在感のある洗練された佇まいを表現している色の服はまるでNISSANのGTR『R34Mスペック』に採用されたミレニアムジェイドを連想させられる。
それに加えて彼女が肩から斜めに掛けているポシェットのカラーリングはゴールド。Tスペックのエンジンカバーと同じ色だ。
これは正しくGTR最新モデルTスペックコーディネートと言っても過言ではない。
まさか一途愛花は俺が車好きと知ってこのコーディネートを選んだというのか……。
「べ、別に……変じゃねぇし。その……結構いいと思うぞ」
「やったー! 結構作るの苦労したから、そう言って貰えると嬉しいな」
「喜んでいるところ悪いが、早くテーブルへ行ってくれないか? 入り口で滞在されると他のお客さんの迷惑になるから」
「あっ……ごめんね。つい嬉しくって……」
少ししょんぼりした一途愛花はキョロキョロして良さそうな席を探し、ゆっくりとそこへ一直線に向かい座った。さしずめ車庫入れと行ったところか。
いつもなら何とも思わないのだが、ついつい一途愛花を目で追ってしまう。車好きの性が俺をそうさせてしまうのだ。
もしこれを狙ってやってきてるのだとしたらかなりの策士。一途愛花、恐ろしい存在だ。
俺が好きなのは車。恋愛などにうつつを抜かさないように気をつけなくては。
付き纏ってくる女の子が俺好みの格好をしてくるようになったんだが 六花 @rikka_mizuse
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます