後編

エルテルとコットーの女神陣営(西ヨーロッパと北米大陸)とMotherたちの陣営(そのほかの地域)に世界が2分され、戦争が起こった。女神陣営が勝利し、Mothersたちを生贄にしてアーヴスが復活した。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアが新しい常任理事国になった。国際連合に新たに「国際魔術管理機関」が設立された。

日本はかつての首相、小林美波の娘である美子が率いる「アエロピース」が新政府を樹立した。美子は女神と国連に対し交渉を行い、アエロピースが正式に日本を統治することを認められた。

しかし、日本人の間に女神たちに対する憎悪が強いことで、再び女神たちとの間に戦いが起こる可能性があるため、国連による監視が行われている。

常任理事国は女神たちから魔力を取り出して、新兵器の開発を行った。水爆を超える威力を持った爆弾である。この兵器により、それ以外の国に対して圧倒的な優位に立った。

これに対して女神たちは反撃を開始し、全世界を巻き込んだ戦争となり、地球上のほとんどの国が滅びた。

女神たちは地球の支配者として一から世界を作り直し、人類は奴隷となった。

その後、地球上で生き残った人間は女神たちの手下となって支配されるか、女神たちの怒りに触れて殺された。

最後に残ったのはアメリカだけだったが、アメリカも結局は女神たちの力の前に屈服するほかなかった。

こうして、女神たちの勝利によって地球は統一された。

だがそのあと、女神たちは自分たちを信仰しなかった人間や、自分たちの力を悪用しようとした人間を殺し始めた。

やがて地球の文明レベルは急速に衰退していき、中世ヨーロッパ程度の生活水準まで衰退した。

そして数百年後、地球上に残っていたすべての人間が死に絶えた後、地球は再び女神たちによって征服された。

こうして、地球は再び女神たちのものになり、地球上のあらゆる資源は彼女たちのものになった。

「これが『魔女の遺産』に関する資料だ」

そう言って僕は机の上に書類を置いた。

ここはニューヨークの郊外にある小さな教会の中にある応接室。そこには僕は昨日この教会で結婚式を挙げたばかりだ。

今日は朝早くからここの教会に来ていて、今は結婚式の後片付けの最中。教会の中は昨日の式のせいで散らかっているし、神父さんたちも忙しく働いている。そんな中で申し訳ないけど、どうしても聞いておきたいことがあったので、無理を承知の上でお願いをしてみた。すると、神父さんの方は快く引き受けてくれたのだ。

「世界は一度滅び、女神たちが再び世界を支配した……ですか?」

「えぇ、そうなんです。しかしかつて真っ先に女神たちと戦った小林美子の子孫がアメリカに渡り、また女神たちに反旗を翻そうとしているらしいのです」

神父が答えた。

「そんなことが……」

「子孫の名はミリー・コバヤシ。新興宗教の修行によって得た強力な魔法を用いて『ニュー・アエロピース』という名の組織を率いて勢力を拡大しています」

「ニュー・アエロピース……」

「最近できた宗教団体ですからね。とはいえ、彼らはもともとアメリカで暗躍していた秘密結社だったようです。それがいつの間にか世界中にメンバーを増やし、今では世界でも有数の巨大勢力になっています」

「なるほど。それでその団体の目的は何なのでしょうか?まさかただ単に女神様を称えるだけの団体というわけではありますまい」

「彼らの目的は一つだけです。それは女神たちをこの世界から完全に駆逐すること」

「そんなことできるわけがな……」

突然爆発音がした。それと同時に教会の窓ガラスがすべて割れる。僕と神父さんは慌てて外に出ると、空から何かが落ちてきた。これは3人の女神の1人、アーヴスの死体だ。

「きゃあああっ!!」

「なんなんだ一体!?」

人々は悲鳴を上げて逃げ惑った。

「おい!あれ!」

誰かの声で僕は上を見ると、巨大なドラゴンに乗った女性がいた。

「あの女は……?」

「間違いありません。ミリー・コバヤシです!」

「なんてことだ。奴らは女神たちに攻撃をし始めたのか!?」

「このままだとまずいことになりますぞ!」

エルテルとコットーがミリーのもとへ到着し、戦いが始まった。

ミリーは女神の攻撃を受け止めて弾き飛ばす。そして2人に反撃する。

「生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し。寂!」

ミリーが唱えると、彼女の周りには炎が出現して彼女を守るように燃え盛っていた。ミリーの炎が2人の女神を焼き尽くそうとする。

エルテルは水の魔法で防御を試みるが、水は一瞬で蒸発してしまい、炎に包まれた。コットーは雷で防ごうとしたが、こちらも雷ごと焼かれてしまった。

「どうなっているのよ!?」

その場にいた叫んだ。

「これで終わりだ!!」

ミリーがは巨大な火の玉を女神たちにぶつけて、2人を灰にしてしまった。

「女神様ぁっ!!」

女神の信者たちが悲鳴を上げた。

「この世界は我々が支配する!」

「ひいっ……」

「お助けください!」

女神の信者たちは泣きながら命乞いをする。

「黙れ!」

するとミリーは手から電撃を放った。信者たちの悲鳴が上がる。

「我々はお前たちとは違うのだ!選ばれし者なのだ!女神はもういない!」

「ああ……私たちも死ぬのね……」

人々があきらめかけたその時、死んだはずの3人の女神が現れた。3人の女神は手を合わせて上に挙げて、魔法を唱えた。

「「「『天界門』!!」」」

3人の魔法によって、空に大きな扉が現れる。扉が開くと、天使の大群が出てきてミリーとドラゴンを襲い、打ち倒してしまった。

女神と天使たちは他の人間にも攻撃をし始めた。

「やめろぉおおおっ!!!」

僕は叫び声を上げるが、女神たちには聞こえない。

「ぐわぁああっ!!」

「ぎゃあああっ!!」

「うわあああんっ!!」

女神の信者たちも次々と殺されていく。こうしてニューヨークは壊滅した。

1年後、世界は混乱していた。各地で天使たちが暴れ続けていた。国際魔術管理機関は世界の魔術師に戦いを命じていたが、魔術師たちは誰も動かなかった。天使たちが女神たちの扉に入って地上から消えたときには世界は荒れ果てていた。地球は完全に女神たちの支配下になった。人類はかつての常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアでひっそりと暮らした。日本列島は完全に消滅させられた。

だがしかしそれでも女神に抗おうとする人間たちが反乱軍を立ち上げ、女神に戦いを挑んだ。

「しつこい!」

アーヴスが叫んで反乱軍に攻撃をしようとすると、空気が異様な状態に変化した。

「これは……?」

エルテルがきょろきょろと顔を動かした。

「すべてを終わらせる……!」

反乱軍のリーダーがこぶしを突き出すと、地球上のあらゆる場所でピカ!ピカ!ピカ!と閃光が走った。

「うぅっ……」

女神たちは倒れ伏した。

「これで終わったな……」

リーダーがつぶやいた。

「消えろ!」

剣から白い炎が出て女神たちは跡形もなく燃やし尽くされた。

その後の世界は、反乱軍のリーダーであるシン・コバヤシが永久に統治することになった。魔力を扱える者は彼だけが残った。人類の文明は少しずつ再生され、女神たちが現れる前の状態にまで回復した。

記念式典でシンが演説を開始した。

「これからの世界は、我々の手で守っていかなければならない。そのためには団結が必要だ。我々は今こそ一つになる時が来たのだ。さあ、皆の者、共に進もうではないか!!」

「「「「「「「オオォオオッ!!!」」」」」」」

歓声が上がった。その時、生贄になったはずのMotherたちが現れた。

「いけない子たちだねぇ。私たちがお仕置きしてやる!」

Mothersたちがそう言うと、あたりに暴風が吹き荒れ、式典の会場設備が吹き飛ばされた。

「出でよ!3女神!」

Motherの一人が叫ぶと、3女神が顕現した。

「どこまでも人類を苦しめる気かお前らは!」

シンが戦闘態勢を取る。最後の戦いが始まった。

シンが稲妻の束を放つ。

「甘いわね!」

女神たちはバリアを張ってそれを防ぐ。

「まだまだぁっ!!」

シンはさらに強力な衝撃波を放ち、女神とMotherたちを弾き飛ばす。すると今度は炎の塊が落ちてきて彼女らを襲う。

「きゃあああっ!」

Motherたちは全滅した。

「残りは3人だ……」

「まだよ……」

アーヴスは両手を掲げて巨大な炎を出現させ、シンに向かって放った。シンはバリアを張って防御するが、バリアは巨大な炎に押されてひびが入り始め、ついには突き破られた。

「うわーっ!」

シンは炎に巻かれて倒れた。

「そんな……」

その場にいた人々は絶望した。アーヴスが告げる。

「これより最後の審判を行う!」

3人の女神は手を合わせて上に挙げた。

「「「『天界門』!!」」」

空に現れた扉からまた天使の大群が現れ、世界中の人類を襲った。

ある者は刃によって貫かれ、ある者は燃やされ、ある者は水に沈められ、ある者は雷に打たれ、ある者は岩に押しつぶされるなど、虐殺が続けられた。

そこへ、殺されたはずのシンが現れた。

「まさか!?」

エルテルが驚きの声を上げた。

「何度現れても同じこと!」

コットーが攻撃の構えを取る。

シンは手を合わせて

「濁りなき こころの海の 宝船 ここと吹きくる 風にまかせて……『往々来華』!」

と叫ぶと、世界が漆黒の闇に包まれた。

「「「「「うわああああああああああああっ!!!!!」」」」」

女神を含めたすべての人々が叫んだ。そして…… すべては女神が顕現する前に世界の時が戻り、人類の記憶から魔力や女神、Motherのことが消えた。

小林美波による内閣は歴代最長となる長期政権となっていた。

そんなある日、美波が記者会見で言った。

「私は、今まで国民の皆さんに嘘をついていました。私がこの国を治めていると思っていたのですが、実は違いました。本当の統治者は私ではありません。それは3人の女性です!」

そこに現れたのは、あの3女神だった。記者は一様に困惑した。エルテルが口を開いた。

「この世界には『魔力』というものが存在します。『魔力』とは万物の素です。全てのものは魔力を宿しています。しかし、人間はその力を上手く使えません。魔力は人間の体に毒なのです。だから人間はあまり長生きできません。でも私は違う。私たちだけは違います。私たちは他の生き物の体の中にいる魔力を取り出せるのです。そうして取り出した魔力で魔法を使うことができます。それが私達女神の力なんです」

誰もエルテルの話を理解できなかったが一人の記者が声を上げた。

「私は朝川新聞社のライナス・ベックマンです。」

「どうぞ質問を許可しましょう」

「あなた達はなぜ魔力を持っているのか?」

「女神と結婚した男の一族は女神の血を引いています。つまり私たちと人間は血を分けた家族のようなもの。その男が結婚して子供を作った時に女神としての性質を受け継ぐことがあるのです。」

「魔力を取り出して別のものに変換できるということは、あなた達の力は無限大ではないですか? どうして我々人類に協力を求めるのですか?」

「魔力は有限です。魔力は人の命を奪います。例えば、今から10年後、私たちのうちの誰かが病気で死ぬかもしれません。その時に私たちの魔力を使えば、寿命を延ばすことも、病を癒やすこともできます。」

こうして、3人の女神と日本政府との間で魔力提供に関する条約が結ばれた。小林美波は魔力の提供と引き換えに、総理大臣の地位を手に入れたのだ。

それから1ヶ月後、総理官邸の執務室で閣議が行われていた。

「次の予算案はどうなっているか?」

美波の質問に財務事務次官が答える。

「えーっとですね。まず最初に防衛費を20パーセント増額します。次に医療体制の整備のため……」

「待ってください! 軍事優先主義ですか!? これではまた戦争が始まってしまいます!」

外務大臣が叫んだ。

「うるさい!」

「総理…… これは流石にやりすぎだと思いますよ。確かに世界は緊張状態にありますが……」

「我々には女神と魔力がある!」

美波が息巻いている頃、ニューヨークのとある教会にて。

「始まるか……」

窓のそばで呟く女性、それはミリー・コバヤシだった。彼女はひそかに武装組織を結成していた。彼女は世界が元に戻る前の記憶を持っていた。今回はアメリカ政府とのつながりも持っている。準備は抜かりなくやっている。

「今度は私が女神を阻止する!」

彼女は固く誓った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【約1万文字】女神女神女神 シカンタザ(AI使用) @shikantaza

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ