第4話 夏休み
担任の教師のお別れの挨拶を聞いて、祐樹たちの夏休みは始まった。
みんなは放課後カラオケ行く?とかもうちょっと都会の町まで遊びに行こうぜとかいろいろな話題で盛り上がっている。ただ祐樹はそれを聞きながら家への帰路へ着いていた。ちなみに遥は少し用事があるらしく一緒に帰っていない。
祐樹は家に着くと誰もいない家にただいまだけと言い二階にある自分の部屋へと向かっていく。
そしてベッドわきに置いてある読みかけの小説をベッドに寝転がりながら読む。これが祐樹の毎日のルーティンだった。
学校がある日の放課後もいつもの休みも夏休みもやってることは大して変わらないので祐樹は別に夏休みはあまり好きではなかった。ただただ暇なだけなのである。
でも今回の夏休みは楽しみな予定ができたため楽しみである。まぁほとんど最終日だが。
祐樹はベッドから立ち上がり壁にかけている七月のカレンダーを一枚めくり、八月の二十九日三十日に机に置いてあったボールペンをとって『旅行』という文字を書いた。
そしてもう一回ベッドに戻り小説を手に取るとズボンのポケットに入れてあるスマホが震えてバイブが鳴り、スマホを取り出すと三ツ谷君から連絡が来ていた。
『祐樹君って暇?』
という内容だった。今日は特に何も内容がない。というかほぼ毎日予定がない。なので
『暇』
という一文字で返信するとすぐに返信が返ってきた。
『ちょっと遊びに行かね?』
『どこに行くんだ?』
『川とかどう?ちなみに秋宮もいるぜ』
『ごめん、ちょっと無理だわ』
『どうしたんだ?もしかして泳げないとか?泳ぎ教えるぜ、俺元水泳部だったんだ』
『いや、ちょっと用事を思い出しただけ』
『そうか、また暇なときあったら教えてくれよー』
と祐樹は返事をしてスマホを枕元に置いてまだ読んでた途中の小説に目を戻す。
今読んでいるシーンは物語も転換点に入り、主人公が昔覚えた恐怖を克服するというシーンだった。
夏休みが始まって十日ほど経過した。その十日間は特に何もなく過ぎて行ってた。
何もすることがなく、夏休みの課題も終わり家でただマンガ読んだりするという生活をしていてこの生活が飽きてきた今日、祐樹のスマートフォンからバイブ音が鳴り、画面を見てみると三ツ谷君から連絡が来ていた。
『今日暇?」
祐樹は通知で内容をする。十日前みたいなことになると嫌なので祐樹は三ツ谷君のメッセージに既読をつけない。
そしてそれから一分ほどスマホを眺めていると新たな通知がスマホの上側からやってきた。
『俺の父ちゃん実は昨日宝くじ当てたんだよ』
その内容に祐樹は思わず起き上がった。
そして三ツ谷君のメッセージの内容を睨むように見つめる。
『まじで?やばいじゃん』
『まぁ嘘だけど』
『なんで?』
祐樹は三ツ谷君の返信をを見て、ふーと息を吐きベッドに再び寝転がった。
『いやメッセージは見てるけど既読付けないようにしてるなと思って』
『なんでわかった』
『だって俺たち長い仲じゃん』
『長いといっても半年も経ってないけどな』
『半日話したらもう友達じゃん』
『すげぇ友達多そうだな』
『五人ぐらいじゃないかな』
『合わせて二日半と』
『そんなことはどうでもいいんだ。
これから秋宮の家行くんだけどお前も行く?』
『行く』
祐樹二度ほどベッドの上をゴロゴロと転がるとベッドから立ち上がり外出する準備をした。
祐樹は玄関から出て眩しく光る太陽の光を全身に浴びた。
そして手で目元に影を作り二日ぶりぐらいに見た家の外の光景を見つめる。そして思い出す。
「俺、そういえば秋宮君の家知らねぇ」
と
三ツ谷君に秋宮君の家の場所を教えてもらった祐樹はうろ覚えの町の地図を頭の中で作りながら歩ていく。そして途中であった信号で止まっていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「祐樹~」
と声をかけられ、祐樹が振り向くとそこには青いワンピース姿の遥が居た。
「どっか行くの?」
「うん、ちょっと友達の家に」
「いやぁ、最近なんの連絡もなかったから心配したよ」
遥がそう言ったのと同じタイミングで信号は青になり、祐樹は遥に手を振りながら横断歩道を渡っていった。
三ツ谷君に教えてもらったところに行くと、そこは二階建ての建物で一回には「秋宮占い店」と書かれた背景が紫色の看板がでかでかと貼ってあった。
一回を占い店とし、二階を住居にしているようだ。
祐樹は茶色の木目調のドアを開けると、中は薄暗い雰囲気で、広さはそこそこだった。
そして前の壁を見てみると【用がある場合はチャイムを鳴らしてください】と張り紙が張ってあり、その張り紙の横には黒いチャイムがあった。祐樹はチャイムのほうへ歩いていき、チャイムを鳴らすと上から足音が聞こえてきた。そして左側にあた階段から秋宮君が下りてくる。
「こっちこっち」
と秋宮君が祐樹に向かって手招きをしてくる。そして祐樹はそれにつられるように階段のほうへ歩いていき秋宮君に続くように階段を上った。
階段を登りきると真っすぐに廊下が伸びていて、そしてその廊下の左右にはいろいろな部屋がある。
そして秋宮君は一番奥にあるドアに入っていった。そしてそれに続くように祐樹も入っていった。
ドアノブを回し、ドアを開けるとそこには三ツ谷君と秋宮君が青いカーペットの胡坐を組んでたたずんでいた。
そして祐樹もその間に胡坐をかいて座る。
「で、来たけど何するだ?」
祐樹は何をするか何も聞かずに来たので、何をするのかが全然わかっていない。
「実はお前の運勢を占ってやろうと思ってな」
「占えるの三ツ谷君」
「俺は占えない。でもここには占い屋の孫の秋宮が居るからな」
三ツ谷君は両手で秋宮君を指し、どや顔で紹介する。
「いや俺占えねぇけど」
そんな三ツ谷君に対して秋宮君が顔の前で手を横に振る。
「占いやの孫なのに?できないの」
「だって興味ねぇし」
秋宮君はこの後なにすんだ?と呟きながら胡坐を崩し後ろに手をついてもたれかかった。
「まずはそれを考えるか」
三ツ谷君がそういったとき、ドアがノックされてドアが開けられる。そしてそこからは顔中にしわがある腰の曲がったお婆さんが入ってきた。その手にはおぼんが握られていてそのおぼんの上にはお菓子屋らジュースやらが乗っている。
「あっ、婆ちゃん」
机の上におぼんを置いて出ていこうとする婆ちゃんを秋宮君が呼び止める。
「祐樹...友達が占ってほしいって言ってるんだけど、占える?」
「いいよ」
婆ちゃんは優しそうな笑みを浮かべて、祐樹は占ってもらえることとなった。
祐樹たちは一回に連れてこられると、紫色のカーテンで区切られている部屋へ連れられて入るとそこは真っ暗だった。そしていきなり薄暗い電気がつく。前を見てみると婆ちゃんが電気をつけたようだった。そしてこの部屋は棚と丸机といすが2つ置かれてあるだけの小さな部屋のようだ。
婆ちゃんは奥側の椅子に座り、祐樹がそれに続いて手前側の椅子に座る。
婆ちゃんは棚から水晶玉のようなものを取り出すと、それを机の上にある座布団らしきものの上に置いた。
祐樹はあまり占いなどを信じるタイプではないが、いざ占われるとなると少し緊張してきた。
婆ちゃんはその水晶玉を両手で触りながら、上目遣いで祐樹を見つめる。目が合い、少し目を逸らしたくなったが逸らさなかった。
「分かったぞ」
婆ちゃんは水晶玉から手を放し、机の上に手を置く。
「どうですか?」
「凶と言ったところだな」
「凶..ですか」
祐樹は少し俯く。あまり占いなどを信じないからとはいえ、凶か大吉を選べるならそりゃ大吉を選ぶ。
「帰り道に花屋にでも寄って、青いヒヤシンスでも買うんだな」
婆ちゃんはそう言って立ち上がると、祐樹の横を通って行ってカーテンの外へと出て行った。
屋上の四人 @kekumie
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。屋上の四人の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます