第3話 旅行計画

一学期もそろそろ終わりに近づいていた。

定期テストもすべて終わり、後は残りの授業を消化してそして夏休みだ。

部活動をしている人たちは大会に向けて熱心に練習している。

そんな練習を眺めながら祐樹と遥は珍しく晴れの屋上にいた。

別に何の用もなしに来たわけじゃない。

祐樹たちが屋上で待っていると目的の人物たちがドアから出てきた。

築と阿見鳥である。二人は足早にこちらに駆け寄ってくる。

「よし、じゃあ旅行計画を立てるか」

と築が意気揚々と紙とペンを背負っていたリュックから取り出した。

「いやなんで屋上でする必要あるんだよ。別に家でやればいいじゃん」

祐樹が苦言を漏らすと

「いやだって俺たちといえば屋上じゃん?そして屋上といえば俺たちじゃん?」

「いや私たちといえば屋上なのは理解できるけど屋上といえば私たちは違うから」

と築の発言に対して阿見鳥が横から指摘をする。だが築はその指摘を何も聞かなかったかのように意気揚々と紙を広げた。隣の阿見鳥はため息をついている。

「でもどうするんだよ、俺たち別にお金が特別あるわけでもないし、なかなか行くところないぞ?」

「そこでだ」

と築が胸ポケットから黒のスマホを取り出し俺たちに地図を表示する。

それは衛星写真らしく、木しか見えない。

「どこ?ここ」

「山奥にある旅館、ここで泊まるんだよ。安かったしな」

「で、ここで遊んで何をするんだ?」

「その質問間を待ってたぜ」

と築は少し口元をニヤニヤさせながらスマホを操作していく、それほどこの質問を待っていたらしい。そして築は一つの光景を残りの三人に見せてきた。そこには足場がロープしかなかったり、板しかなかったりするそれは森の中にあるアスレチックのようだった。

「で、ここで遊ぶ」

「そしてこの後はどうするんだ?」

「その場で決める」

「計画立ててるようであんまり立ってないんだよなぁ」

と祐樹はため息交じりに呟きながら他二人の反応を見る。別に嫌という感じではなかった。

築が「これでいい?」

と聞くと、祐樹含めたほか三人はその旅行計画に賛成した。


その後その四人は各自解散となり、築と阿見鳥は屋上に残って祐樹と遥は屋上から去って帰路についていた。

「アスレチックかぁ、最近中学生以降全然運動してなかったからなぁ」

「でも中学校の頃も徒競走ではほとんど負け知らずだったじゃん」

「二年生のころはな...三年生はぼろ負けの最下位よ。やっぱ部活やってる人には勝てんわ」

雑談をしていると不意に祐樹が笑い出した。

「どうしたの?」

と遥が困惑の表情を浮かべながら左から祐樹を見つめている。

「いや、ちょっと滴のこと思い出してさ」

「お姉ちゃんの?」

滴とは今は亡き遥かのお姉ちゃんだ。

「そう、滴がサルと山で仲良くなった話」

「それはいったい何がどうなってどうしてそうなったの?」

遥は祐樹が突然笑い出した時とは違う困惑の表情を浮かべている。祐樹は表情豊かだなぁと思いつつ歩いていると分かれ道につき、祐樹は右に、遥は左に曲がって別れの挨拶を告げてまたそれぞれの帰路についた。


夏休みが近づいてきたある日の昼休み、祐樹が一人窓際の席で弁当を食べていると横から二人近づいてきた。三ツ谷君と秋宮君である。

「一緒に食べていい?」

と二人は購買で買ってきたであろう焼きそばパンなどを手に持っている。

「別にいいよ」

と祐樹は弁当に入っていた卵焼きを割りばしで口に運びながら返事を返す。

祐樹たちはあの体育以来、結構仲良くなっていた。IDなどを交換して連絡アプリには二人の名前が登録されている。

二人は祐樹の前の人の席を借りて俺の前に座った。

「そういえば最近遥さんとどうなの?」

「遥と?別に何ともないよい。いつもと同じ感じ。あっ割り箸折れた」

二人は祐樹とその日初めての会話をするときは大体遥との関係から始まる。理由は三ツ谷君に好きな人がいて参考にするためらしい。参考になっているかどうかはわからないが。

俺は折れた割り箸をもともと割りばしが入っていた袋に戻して予備の割りばしを取り出した。

「祐樹って最初の印象と結構違う性格してたよなぁ」

と秋宮君が三ツ谷君に対して話しかける。その口には少し焼きそばパンを頬張っている。

三ツ谷君は食べ終わったメロンパンの袋を鞄に直してあんパンを取り出していた。

「確かにそうだね 」

「そうなの?自分では全然わかんないけど」

「結構違うよ。最初はなんか『誰とも群れねーぜ、俺は一人孤高で生きていく!』みたいな感じだったけど」

「俺そんな感じだったの?」

「まぁ盛ったけどそんな感じだったけど、なんか関わってみたら結構明るいやつみたいな感じだよな」

「まぁ普通の説明受けても俺よく分かんないけど」

その後も同じような雑談をしながら過ごしていき、昼ご飯を食べ終わり、弁当箱を袋に入れリュックに直すと教室の後ろのほうのドアで遥が手招きしていることに気づき、駆け寄っていく。

「どうしたんだ?」

「阿見鳥たちが屋上に来てほしいって」

遥はそう言い、屋上へつながる階段を登って行った。そして俺もそれに続いて登っていく。

屋上につくともう三人は屋上の真ん中らへんに座っていた。天気は晴れている。

「どうしたの?」

と俺は聞きながら遥の隣に座った。

「いや、そういえば旅行の日時とか決め手なかったなと思って」

「いやそういうのは家でやればいいじゃん」

「いや俺たちといえば屋上だろ?」

と築は祐樹に向けて親指を立ててくる。ごり押しだ。

「ちなみに俺夏休みの前半バイトでほとんど埋まってるから前半はNOで 」

「俺抜けていい?」

「却下だ」

「で、日時どうするの?」

祐樹たち四人は一分ほどの沈黙の後

「もう二十九日とかが逆にいいとかない?」

「で、旅行終わったら即学校と」

「そう」

「ハードワークな...」

「でもいいんじゃない、別に真ん中ぐらいに行っても最後らへんに行っても同じでしょ」

遥の意見を聞き、祐樹は少し納得して築の意見に賛成した。阿見鳥はもともと納得してたらしい。

それによって祐樹たちの旅行は二十九日に決まった。

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