ある日、浦島太郎に転生した。

無限飛行

第1話

「は?なんで俺は、釣竿担いで玉手箱を持って亀に乗っている?!」

「アー《浦島太郎だからだっぺ》」


「…俺はバレンタインデーの日、彼女からチョコを貰う為に、デートの約束をした場所で彼女を待っていたんだ。すると、偶然通りかかったと言っていた、昔、捨てた元カノから義理チョコを貰ってな。食べたんだが、急に腹が痛くなってな。浦島太郎に転生したらしい」

「アー《そりゃ、大変だったっぺ》」


「考えてみたらな、元カノから巻き上げた金で今の彼女と付き合ってたのがバレてな。その理由で元カノを捨てたんだが、随分と恨まれていたらしい」

「アー《浦島太郎、最低だっぺ》」


「だが、こうして第二の人生を歩めるとは、ある意味、僥倖だったな」

「アー《反省感、ゼロだっぺ》」


「ところで、何処に向かっている?」

「アー《今日は、金太郎に玉手箱を渡す為、家で待つ日だっぺ》」


「おお、そうだったな。馬鹿な金太郎に玉手箱を押し付けて、逃げる予定だった。奴には、美少女からのチョコのプレゼントだと言ったら、直ぐに受け取りに来ると言っていたから、もう着いているだろう。亀よ、マックススピードで向かえ!」

「アー《すでにマックススピードだっぺ》」


「………………遅?!」

「アー《亀に何を期待してるだっぺ》」


「ウサギには勝っただろう?」

「アー《童話読んだっぺか?》」


「仕方ない、多少目が回ってもかまわん。飛べ、亀よ」

「アー《KADOKAWAに失礼だっぺ》」


「く、仕方ない。歩くか」

「アー《最初からその方が早いだっぺ》」


「む、あれは、誰だ?」

「アー《あれは、桃太郎のとこの、キジだっぺ》」


「何処にいくんだ?」

「アー《多分、金太郎の熊のところに、きびだんごチョコを届けに行っただっぺ。前回、洗脳きびだんごを渡して、金太郎達を肉壁にする計画が失敗したんで、作戦変更したって言ってただっぺ》」


「なんか、ヤバいワードがあったんだが!?」

「アー《浦島太郎も似た者同士だっぺ》」


「……まあいい、だが空振りではないか。おそらく金太郎達は、俺の家にいるだろう」

「アー《多分、居ないだっぺ》」


「何故、そう言いきれる?」

「アー《前回も、来なかっただっぺ》」


「そうだった!おかしい、奴は玉手箱の中身を知っているのか?まさか、俺と同じ転生者か?」

「アー《女子高生にサンドにされ、転生したって言ってただっぺ》」


「なんか羨ましいな、おい」

「アー《浦島太郎も、乙姫様に骨抜きになるといいだっぺ》」


「骨抜きになる?」

「アー《タコどんが気持ちいいって、言ってただっぺ》」


「でろんでろん浦島太郎になるだろぉ?!」

「アー《それも、一興だっぺ》」


「むう、どちらにしても、桃太郎が危険人物である事が分かったわけだ。奴の部下に無闇に近づくなよ」

「アー《分かっただっぺ。あ~っ、キジ、しばらく会うのは止めるだっぺ》」


「おい、何故、言ったそばからキジと話しをする?!」

「アー《このきびだんごチョコ、旨いだっぺよ。ほれ!》」


「あぐっ!貴様、得体の知れないものを俺の口に!?」

「アー《亀は洗脳中だっぺ》」


「ぐああ、笛の音がする!俺の良心回路が」

「アー《誰だ、あんた?》」


「く、こうなったら、玉手箱を開けてやる!」

「アー《いいのか?ジジイになるだっぺ》」


「構わん、操られるよりましだ!パカッ」

「アー《バフンッ、煙だっぺ》」


「ぐわぁ、ジジイに、ん?」

「アー《なんか、手紙と衣装が入ってるだっぺ》」


「何じゃ、こりゃ?サンタクロースの衣装セット???」

「アー《手紙は乙姫さんからだ、だっぺ》」


「何々、その衣装でサンドイッチマンでもやって、早くツケを払ってね。クラブ乙姫よりだと???」

「アー《払わないと、本当にジジイになるよ、乙姫よりだっぺ》」


「は?何じゃ、この金額は?!」

「アー《仕方ないだっぺ、クラブ乙姫は超高級クラブだっぺ》」


「払えるかーっ!」

「アー《散々飲み食いして、乙姫さんの身体触ったのに?お客さん、そりゃ、不味いだっぺ》」


「か、亀さんや?急にサングラス付けて、凄みが怖いんですが?」

「アー《オラァ、キリキリ働け!取り立てるんだだっぺ!》」


「ぎゃああ、ジジイまで働かなきゃ、返せねーっ、誰か、肩代わりしてくれーっ」



こうして浦島太郎は、借金返済の為、その一生をクラブ乙姫に捧げたとか。




◆ある日の浦島太郎


パカッパカッパカッパカッパカッ


「はぁ、今日も客引き、失敗だーっ」

「アー《けんど、なんで一年中、サンタクロースなんだっぺ。暑くないかだっぺ》」


「暑い……今年は猛暑日ばっか」

「アー《クラブ乙姫から他の衣装、貰っただろうが》」


「お前がサンタクロース、勧めたんだろ?」

「アー《だからって、亀に赤鼻トナカイは無理があるだっぺ》」


「良いじゃないか。冬は温か」

「アー《今は夏だっぺ!》」


「しかしなぁ、他の衣装って言ってもなぁ」

「アー《夏サンタは、見る人も暑くなるだっぺ》」


「仕方ない、玉手箱衣装箱を見て見るか」

「アー《やっと、トナカイ卒業だっぺ》」


「………亀よ、熊の着ぐるみ、キジの着ぐるみ、犬の着ぐるみ、猿の着ぐるみ、どれがいい?」

「アー《暑!着ぐるみしかないだっぺ?!しかも、その意味ありげな着ぐるみはなんだっぺ!?》」


「あー、なんだな。俺が犬の着ぐるみ、着るから、お前、猿の着ぐるみ、着ろ」

「アー《…なんで犬と猿、犬猿の仲になるだっぺ》」


「取り敢えず、金持ち桃太郎を騙して、クラブ乙姫で破産させる。奴の部下の犬と猿に成り代わるんだ」

「アー《ちょと無理があるだっぺ。おら、木に登ったり出来ないだっぺ》」


「大丈夫、君なら出来る。ほら、首の後ろのスイッチ、押してあげる。カチッ」

「アー《勝手に【やる気スイッチ】押すんじゃないだっぺ!はう……おらは出来る、おらは出来る、おらは出来る、おらは出来る》」


「おお、煽てると、【亀も木に登れる】もんだな。新発見!」



こうして犬と猿に化けた浦島太郎達は、桃太郎の屋敷にリクルートした。

そして暫くの間、桃太郎の屋敷には不細工な犬と、不細工な猿がいたそうな。


その後、桃太郎は破産した。

その理由は謎らしい。

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ある日、浦島太郎に転生した。 無限飛行 @mugenhikou

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