第四十九話 『VS冥皇①』


《略奪を発動します》

《スキル「浮遊」を手に入れました。》



 久々に新しいスキルを手に入れたな。

 まあ、クルト曰くスキルを何度も獲得することなんて普通は無いらしいけど。

 地球にいた時の癖というか習性で、もらえるものはもらっていくスタイルが定着していると改めて実感する。


《次元転移を発動します》


 俺は「次元転移」を使い、葉山とリトライラの元へと転移した。

 俺が転移した瞬間に目に入ったのは、土で拘束されたあの時の冥皇の弟子の一人だ。

 一瞬そういうプレイかと思ったことは、墓場まで持っていこう。


「あ、もうこっちも終わってたか。」


 俺達は一旦互いの情報を共有した。

 今も尚拘束されているツカサと戦う時に、一人の少女を助けたこと。

 俺の「略奪」用としてまだツカサ生かしているということ等々。


『まあ、オイラは今の内にササキバラさんのところに行ってくるのさ。』


 そうだよな。

 もうまもなく冥皇は俺と葉山の元まで飛んでくるだろうから、その時に邪魔をされない様にしてもらわないとな。

 そう言えば、まだやってない事があったな。


「ありがとう、リトライラ。後、このボールに「浮遊」を付与しといて欲しいんだけど。」

「いいけど、何で?」


 これのお陰で、俺はナギサに勝てたのだから。

 もし俺が意図的に過去にこのボールを転移させずに何か変なことが起きたら、目もあてられない。


「俺、ナギサと戦闘してる時に「浮遊」が付与されているこの玉が未来から送られてきたんだよ。だから、今度は俺が過去にこの玉を転移させれば辻褄が合うだろ。」

「なるほど、そういうことか。」


 リトライラは頷き、ボールに「浮遊」を付与してくれた。

 そして、ボールを「次元転移」で過去に送れば万事解決だ。


「おっ、サンキューな。」

「お安い御用だよ。」


 一応、未来の俺から送られてきた「浮遊」が付与されたボールは手元にある。

 俺が勝ったからこのボールがあるのか、このボールが来たから俺が勝ったかは分からない。

 このボールが送られて来なかった世界線でも、俺がナギサに勝つことは十分考えられる。

 地球でも、こんな有名なパラドックスを聞いたことがある。

 とある少年が過去へと転移することが出来る様になったとする。

 そして、もし転移した先の過去で親を殺してしまったとする。

 その場合、親を殺害したのならその少年は生まれないし、少年が生まれなければ親は殺されない。

 つまり、少年は生まれる。

 これが矛盾だ。

 俺の結論としては、親を殺せないから過去に転移出来る可能性のある世界線に存在出来ているということだ。

 例えば、クラスメートの中で俺だけが今から親を殺せない状況、もしくは親を殺しに行く可能性がゼロだからこそ「次元転移」を手に入れたということだ。

 まあ確かに、俺は世界の何処にでも行けるのだから、地球にも転移は出来る。

 冥皇に負けそうになったら、地球に行くつもりだ。

 だが、俺は両親の居場所を知らない。

 まあ、こんな考察は今必要あるのかと聞かれれば、ノーとしか言えないけれど。


「あそこにツカサは捕えて、あれ?」


 俺がどうでもいいことを考えてる時に、リトライラは石で拘束されていたツカサを指差した。

 しかしその先には今さっきまで居たはずのツカサはそこには居らず、崩れた土が残っているだけだった。


(な、なんだって!? 石が崩れた音が無かったぞ。 )


「もしかして、逃げられた!?」


 もしかしなくても、逃げられた。

 リトライラは焦った様に付近の建物の周りを探し始めた。


「俺も探すか。」

「手掛かりが無いのがつらいよね。彼女さっきまで両手から出ていた大量の血の血痕すらも、残ってないし。」


 俺と葉山は周囲を探し始めようとした。

 だがその時、ようやくあいつが飛んできた。


ド――――――ン!!


 前回と同じ様に、冥皇が空から降って来た。

 だが前回と違うのは、冥皇が俺を敵と認識しているという点だろう。


「よくもわしの可愛い弟子を二人も殺してくれたのぉ。」

「毎回お前空から降ってくるよな。」


 俺は冥皇を少しからかってみることにした。


「単に、建物の無い屋根の上を走った方が早いってだけじゃよ。」


 まあ確かに、律儀に整備された道を歩く様な男には見えないからな。

 それにしても、こいつの方から来てくれたのは実にありがたい。

 探す手間が省けた。


「ようやく、ようやくって感じだよな。」

「何がじゃ?」


 俺はこれまでの生活を思い返す。

 本当に濃い二週間だった。

 ようやく、ようやくだ。


「お前をぶちのめすのがだよ。」



~あとがき~

「親殺しのパラドックス」について、暇な時に考えてみてはどうでしょう?

僕の意見は、清原が代弁してくれています。

もしかしたら今後も、こんな感じのスキルから生まれる面白いパラドックスとかを使っていくかもです。

他にも様々なパラドックスが世の中には有るので、調べて考えるのは面白いと思いますよ?


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始めのダンジョンをループし続けた俺が、いずれ世界最強へと至るまで~固有スキル「次元転移」のせいでレベルアップのインフレが止まらない~ Rough ranch @tekkinntawamanntaro

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