第17話 エピローグ㈡

 ゴックスさんとナーセリーさんが働いてくれる様になり、俺もミヤも余裕が出来たので稽古に集中できるようになった。

 俺は師匠からは既に武術の方は教える事は無いと言われて自主稽古をしていた。ミヤには俺が稽古をつけていた。

 師匠からは薬草や、粉末にしない部分を利用して畑の肥料にする方法を学んでいた。それから整体術を。コレはミヤもゴックスさんもナーセリーさんも一緒に学んでいる。


 ある日師匠から家に来いと言われて行って見たら棒を持てと言われた。俺は棒を、師匠はじょうを持っている。そして、


「タイキよ、そろそろ本気でやってみるぞ。ワシを殺すつもりでかかってきなさい」


 そう言われた。遂にこの時がきたかと思った俺は素直にハイと返事をして棒を構えた。

 結果は俺は師匠に勝つ事が出来た。それから師匠の家に入り、最後の口伝くでんだと言われて、コレまでの俺に対する師匠の立場を教えてくれた。


「タイキ、先ずはワシを超えてくれて有難う。コレでワシも師匠との約束を守る事が出来た。そして、師匠直系のタイキにはまだ少し教える事がある」


「師匠! 直系ってどういう事ですか!?」


 それから師匠は教えてくれた。柔剛術は元々は俺の祖父じいさんに教わったという事を。


 俺が物心ついた頃には既に家に居なかった祖父じいさん、祖母ばあさんだが、そう言えば祖母ばあさんは亡くなったと聞いていたが、祖父じいさんが亡くなったとは聞いてなかったな。


「ワシは師匠と出会った時は獣に襲われておってな。そこを助けてくれたのが師匠だった。連れ合いと二人で礼を言っていたら、『どうだ、好きな女子おなごを守る為に武術を学んでみないか?』と言われたんだ」


 その頃トミジ師匠は家に帰る途中だったらしく、祖父じいさんを家に招待して、一緒に移動したらしい。そして、家に帰ってから正式に祖父じいさんに弟子入りしたそうだ。

 トミジ師匠は今の俺と同じ様に薬草を採取して売り生計をたてていたという。そして、俺の家は俺の高祖父が武術【柔剛術】の開祖で、当時では武術よりも薬草学で名を馳せた家だったそうだ。

 俺はその話を知らないけどね。恐らく両親はもう少し大きくなったら話してくれたんだろうけど、流行り病で言う前に亡くなってしまったんだろう。

 まあ、とにかく祖父じいさんに弟子入りしたトミジ師匠は一所懸命に稽古をしたそうだ。そして、何とか俺の祖父じいさんを超える事が出来た時に、祖父じいさんから頼みごとをされたらしい。

 その頼みとは、母しか産まれなかった為に薬草については教えたが、武術に興味を示さなかった母に無理に武術を教えなかった事。もし、母が連れ合いを見つけて子供がいて、その子供が武術に興味をもったなら、弟子にしてやって欲しいと言われたそうだ。

 既にトミジ師匠は五十代になっていて子供二人も独立して、連れ合いは先立ったので自由に動く事が出来た為に、その頼みを了承して俺の前に現れてくれたそうだ。

 そして今日、武術で師匠を超えた事でこの話をしてくれたそうだ。更に明日からは自主稽古を続けていく事と、祖父じいさんから教わった薬草学の教わってない部分を教えてくれる事になった。

 俺は両親が残してくれた資料があると言うと、それと照らし合わせながら、教えてくれる事になったんだ。

 

 

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