わたしのさがしもの
春雨
第1話 朝来ると
あ、まただ。君はいつも私が朝学校に来て教室に入ると窓の外を眺めている。
何を見ているんだろうって毎回思うけど、あえて聞かない。
私は一眼目が始まる一時間前には学校に来ているのだが、君はもっと早く来ている。大抵私より早くきているのは君とお寿司屋さんと呼ばれている眼鏡をかけた真面目くんだけだ。どこから彼はそのあだ名がついたかというと、最初はずっと勉強しているからという理由で、ガリ勉くんと呼ばれていたのだが、次第に短縮されてガリって呼ばれるようになり、ガリっていえば寿司だよなって誰かが言ったことによっていつしかお寿司屋さんって呼ばれるようになっていた。
いや、実際そっちの方があだ名が長いやないかと最初は心の中でつっこんだ。またみんないずれ面倒になってスッシーとかになるんじゃないかと思っている。というかもう私はそう密かに呼んでいる。でも自分のあだ名に興味がないのか人間に興味が無いのかいつもどんなあだ名をつけられても無反応だ。そうはいっても彼はある程度のコミュニケーションはとれる人で、勉強を教えて欲しいというと、自分の勉強が忙しくないときにはかなり丁寧に教えてくれるため、クラスの家庭教師ともいわれている。
私は必ず朝来て1番に彼におはようと言う。するといつも勉強しながらだが、おはよと言ってくれるのだ。あまり男子に自分から話しかけに行くようなタイプではないのだが、挨拶することで彼と少しずつ距離を縮めていけるのではないかと思っている。だって、私が学校に来る前の君のことについて知れるかもしれないから。
わたしのさがしもの 春雨 @penchan32
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