第16話桜散る

ということで俺の話は終わり。

まあ、ありきたりの話だろ?


父親が本当の父親じゃなかったとことかさ。


そういえば、あいつのことも家もみんなには見えてなかったんだよな。先生とか「みえる」人にはみえるみたいだけど、誰かみえた奴っている?

いないかぁ。


俺もなんだけど、怪異に巻き込まれるとか遭遇するってレベルじゃなくて馴染んじゃうタイプの人ってたまにいるんだよな。両親もそうだったんだろ。


だから、これは普通の人生なんだ。

怪異に馴染んで生きた人の人生。


始めから終わりまで怪異に付きまとわれる、そんな人生。

な? 普通の人生だろ?

俺の人生はそういうもんなんだ。

辛かったねとか、苦しかったねなんて誰にも言わせねえよ。

みんななら、なあ? 理解してくれるよな。


大事なのはこれ。


俺! 遅刻しないで来れたぜ!

誉めてくれよ、×××!


呼んだ名前が誰のものだったのか、俺にはもう思い出せなかった。

友人A?

助産師さん?

警察官のおっちゃん?

助産師さんの後輩?


それとも


「父さん」と呼んでいた、あいつ?


何処かで誰かの叫び声が聞こえる。

人ならざるモノの叫び声が聞こえる。


それは、


あいつの断末魔だった。


罪を犯した「鬼」の、最期の声だった。


桜の花びらが二枚、ぽとりと散り落ちた。

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遅刻常習犯 犬屋小烏本部 @inuya

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