第18話 誘いと魔術師!

「ね、イグニ君」

「なんですか? エレノア先生」


 昼休み、いつものメンツで昼食をとっているとイグニはエレノアに呼び出されて別室に連れていかれた。


「これなんだけどぉ」


 そういってエレノア先生が出してきたのは1枚の紙。

 そこにはイグニの名前や年齢。今の住所。


 そして【火:F】の文字があった。


「“適性”ですか? この学校は“適性”は関係ないはずでは?」


 ロルモッド魔術学校の入学試験の採点基準は受験生の中で決められた割合以上の場所に食い込むこと。ただそれだけである。


 それ以上でも、それ以下でもなく、その基準さえ到達すれば合格出来る。


 逆を返せば、それが難しいということなのだが。


「ううん。それは先生が一番知ってる。そうじゃなくてぇ……。その、言いづらいんだけどぉ」

「はい」

「"大会"……。出てみない?」

「はい?」


 意味が、分からなかった。


「あのね。イグニ君が知ってるか、知らないか分かんないんだけどねぇ?」

「はい」

「1年に1度。王国の中で誰が一番強いのかっていう"大会"をするのぉ。それでね、イグニ君に、どうかなってぇ」

「"大会"……。ですか」


 イグニはエレノアから受け取ったチラシを手に取って、眺める。


 確かにそこには大会の概要が書かれていた。

 

 参加条件:不問

 参加年齢:不問


 必要なものは強さのみ。


「この"大会"、有名なんですか?」

「うん。国中からいろんな強い人が集まるのぉ。ウチの学校からも毎年出てるんだけどぉ……。その、参加人数が今年は少なくってぇ……」

「少ない? 毎年何人出てるんですか?」

「じゅ、10人くらいかなぁ」

「今年は今のところ何人なんです?」

「3人」

「え?」

「だから、その……3人」


 エレノアはそこまで言って、黙りこくった。


「……だから、その…………。何と言うか……」


 イグニがどうオブラートに包もうか迷っていると、


「その、人数合わせで、出てほしいのぉ……」


 あっさりとオブラートに包もうとしたことを暴露された。


「……ちなみに、今のところ誰が出る予定なんですか?」

「2年生のフレンダちゃんに、1年生の“曙光しょこう”のフレイ君と、“ゆがみ”のエルミーちゃんよ……」

「3年生は? 生徒会の先輩たちは、何かあるんですか?」

「んーっとね、3年生はいろいろと任務で忙しいのぉ」

「任務?」


 初耳だったのでイグニは首をかしげた。


「あ、えっとね。まだ1年生に話しちゃいけないんだけどねぇ……」


 他のみんなには内緒だよ? と、前置きを念入りにおいてからエレノアがゆっくりと喋り始めた。


「ロルモッド魔術学校の3年生って、すごく優秀な魔術師たちなの。それで、今の内から凄い子には任務とか、クエストの依頼が来ちゃうのぉ」

「……なるほど」

「特に生徒会に入る子って大抵真面目だからねぇ。すごく人気なの。それでいっぱい任務がきちゃうのよぉ」

「確かにそう言われたらそんな気がしてきました。1つ聞きたいんですが、どうしてこれを1年生に言ったらダメなんです?」

「だってぇ。自分も任務を受けさせてくれっていう子が増えるに決まってるものぉ」


 …………。


 確かにいまの1年生たちならそんなことを言いそうだ。


「それで、イグニ君にも出てほしいんだけど……。ダメかなぁ?」

「良いですよ。先生の頼みなら」

「ありがとうねぇ。イグニ君。先生、これで今月しのげるのぉ……」

「……え?」

「あっ、あのねぇ。これもほかの生徒に内緒なんだけどね……」

「はい」

「自分のクラスの生徒が大会に出るってなるとぉ、ボーナスもらえるの」

「えぇ……」

「それでね。それでね。勝ち進んだらねぇ。もっとボーナスがもらえるの」

「えぇ…………」


 まさかこの学校にそんなシステムがあったとは。


 これにはイグニもドン引きである。


「だからねぇ。イグニ君、お願い」

「あー……。はい。ガンバリマス」


 いまいち気の乗らないまま、イグニは大会出場を受け入れた。


「あ、ちなみに。大会優勝すると、賞金もらえるんだけどぉ」

「欲しいんですか?」

「あっ、ううん。欲しいけど、欲しくなくてぇ……。あのね、イグニ君。優勝すると、いろんな貴族さんから声かけられるんだよ」

「どうしてですか?」

「自分の娘のところに結婚してくれって」

「……あー」


 元婚約者のいる身としては、少しイグニはそれに引っかかった。


「あれぇ? 嬉しくないのぉ??」

「なんか、そういう家の力で無理やり結婚させるのは……俺、好きじゃないです」


 それは、実力が足りずに貴族を捨てさせられたが故の理由だろうか。


 ……否っ!! 

 断じて否ッ!!!


 まさかこの男がで拒否するわけがない……ッ!!


 それは忘れたくても忘れられない記憶……っ!!


 イグニの脳裏には1つの記憶が流れゆく……っ!!


 ―――――――――

『イグニよ。貴族に戻りたいか?』

『ん? じいちゃん。どうしたの急に』

『いや、何、大事なことだからの。聞いておこうと思ったんじゃ』

『んー……。そりゃ戻れるなら戻りたいよ? モテそうじゃん』

『……ふっ』


 ルクスがニヒルに笑う。


『イグニ……。貴族は、モテんぞ』

『…………な、ん……だって……!?』


 あまりの衝撃にイグニは唖然とした。


貴族あそこにおったら分かるじゃろう。堅苦しい制度、めんどくさいお家関係。しかも冒険者の方が金を持っておる』

『……そ、そんな…………じゃ、じゃあ俺は……!』

『来たのじゃ、イグニ。お前は、、な』

『うおおおおっ!! ありがとう! 父上っ!! ありがとう!』


 イグニは涙ながらに父に感謝した。


『俺、貴族やめてよかったぁあああああああああッ!!!!』

 ―――――――――


「やっぱ、男は自分の力でモテるべきだと思うんですよ」


 ドヤ顔でそういうイグニ。


 そう、この男。

 単純に貴族に戻りたくないだけである。


「あらぁ。イグニ君、かっこいいのねぇ」

「ははは。それほどでも無いっすよ」

「ちなみに、庶民の女の子たちにはもっとモテるわよぉ」

「全力でやらせていただきます」


 イグニのやる気メーターは限界値を振り切った。


「じゃあ、あのね。早速なんだけどね。他の3人と顔合わせ、してほしいの」

「顔合わせですか?」

「うん。あのねぇ。一応、大会だと敵なんだけどぉ。学校は……同じ、だからぁ。その、親睦しんぼくを……ね?」

「ああ。なるほど。そういうことですか」

「隣の部屋にいるからぁ。大丈夫、昼休憩終わるまでには終わるからぁ」


 というわけで隣の部屋に移動。


 そこにはすでに3人席に座っていた。


「ごめんねぇ。遅くなってぇ。うちのクラスからの出場者。イグニ君です」

「どうも」


 1礼。


 こんなもんで良いかな。と、思いながら残りの3人を見る。


 1人目は女の子。

 淡いクリーム色の髪の毛の女の子で机につっぷして寝ている。

 寝不足なのかもしれない。かわいい。


 2人目は男だ。論外。

 イケメンなのが腹立つ。次。


 3人目は女の子だ。ハチマキをして、席に座ってうずうずしている。

 もしかして体育会系なのだろうか? かわいい。


「先生! その子は1年生っすか!? かわいいですねっ!!」

「えっ!?」


 3人目の体育会系っぽい女の人がそう言った。


(モテ期来た?)


 イグニの思考はこんなんばっかりである。


「こらこら。フレンダちゃん。あんまり1年生を怖がらせたらダメよぉ」

「怖がらせて無いっすよ! やあ1年生! あたしはフレンダっす! よろしく!」

「よろしくお願いします。俺はイグニです」

「2つ目の名前はあるっす?」

「ないっす!」


 ちょっと口調がうつるイグニ。


「じゃああたしと一緒っす! この2人、この歳でもう2つ目の名前もってるんすよ!? 怖くないっすか」

「いや、それは別に……」

「なんでっすか! あたしも2つ目の名前欲しいっす!」


 別にあったからってモテるわけじゃないしなぁ(ルクス談)。


「じゃ、じゃあみんなぁ。自己紹介していこっか。はい! エルミーちゃん!!」

「うるさい。寝させて」


 机に突っ伏したまま、少女がそう言った。


 ……えぇ。


「じゃあ、フレイ君」

「フレイ・タルコイズだ。よろしく」

「……ん? ?」

「ああ。そうだ。それが、何か……」


 イグニの目と、フレイの目が驚きに染まっていく。


「い、イグニっ!?」

「だ、誰だお前っツツツツ!!!?????」


 俺はこんなイケメン知らないぞっ!?



――――――――――――

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