芸術の秋

「あー!!私のバカバカ!!何でこんな仕事引き受けたのかしら!!」

「日和ちゃん手動かすッスよ…!頑張れー!」

「うるさい!」


どうしてこんなことになったんだっけ…


·

·



約2ヶ月前

従兄弟である瞬の電話がきっかけだった。


「え?私がReve9のライブグッズのイラストを描けって!?」

「どうかな…?」


「どうもこうもないわよ!なんで私?!」


「いやー『なんかイラスト描ける人居ない?』って聞かれて、そういえば日和ちゃんが居たなーって思って推薦したっすよ!」


「なるほどね…」


「描くものは多いんだけど…その分日和ちゃんのキャリアに繋がるかなーと」


「確かに。それにグッズになるんでしょ!めちゃくちゃ魅力的じゃない!!その仕事受けるわ!!」


「やった!!じゃあ詳細送るっすね!」


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「メンバー9人が揃ったカラーイラスト1点、デフォルメイラストがカラーとモノクロ9人分…これ一人でやる仕事量じゃないでしょ!ノリで受けた私、バカ過ぎる…!」


正直、人には頼りたくはないけど締め切りは近いので、恥を捨ててメッセージアプリを開き部活のグループにメッセージを打ち込む。


『今日の夜、私の作業を手伝ってくれる人募集してます。行ける人は冬寮の私の部屋まで!

日和』


そして来たのが…


「日和ちゃん来たよ!」


久真、槇、七、ハルトの4人だった。


「えっと先輩達、絵って…」

「うーん…」

「なんとかなるなる!」

「ちなみに絵は無理ッス!雑用係とかあれば!と思って来たッス!」

「自己申告ありがとうハルト」


「とりあえず成瀬先輩とハルトはこの原稿2枚ずつコピーして貰っていいですか?あとのメンツで作業場所確保しましょうか」


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20分後


「久真先輩と私でモノクロイラストのトーン貼りをやりましょう。槇先輩はカラーイラストの色塗りしてもらいます。」

「おう!」

「はい」


「パソコンセッティングしてるので、写真から色スポイトしてバケツで色を塗ってください。こんな感じで。わからなくなったら聞いてください」

ペンタブを操作しながら教える日和。

「おう!」


「さて、トーン貼りましょうか。こんな感じで、だいたいの大きさに切ってからデザインカッターで綺麗に絵に沿ってトーン切ってヘラでごしごしと固定してください。あと原稿は切らないように。こんな感じです。私も隣でやりますから何かあったら呼んでください。」


「ハルトは夜食と飲み物の用意をお願い」

「ひよりん、私は~?」

「何かあった時の為にいつでもコピー取りに行けるように待機してて」


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·


「あ…」

(ヤバい、これ絶対怒られるヤツだ…)


見事に髪の毛の形にくりぬかれた原稿を持つ久真。


「ごめん…」

「大丈夫ですよ、久真先輩。そのためにコピー取ってるんですから。

成瀬先輩、原稿のコピーよろしくお願いします。あと念のため全部のコピー1枚ずつしといてください」

「はーい」

「怒らないの?」

「正直やるかなとは思ってました。初めてだから仕方ないですよ。弱音吐いてないで、手を動かす!」


·

·


「~♪︎意外と楽しいな、この作業!大人のぬりえって感じか?」

「楽しいのは良いですが、ちゃんと作業してくださいね」

「わかってるって!神城、少しは先輩のこと信用しろよなー」


パチパチパチ…

「って、え?!」


ボカン!


「すまん、神城。パソコン爆発した。」

「はぁ!?何がどうしてこうなったんです!?」

「なんか楽しくなって無意識に雷魔法を使ってたみたいだな」

「そうですか。槇先輩は今後パソコンとか機械に触るの禁止」


「ひよりん、コピーの追加出来たよー!」

「槇先輩がやらかしたので、もう一回コピーお願い」

「えー」

「夜食のおにぎりとお茶、用意出来たっす!」

「ありがとう、とりあえず食べましょう」


·

·


「あー壊れたPCについてはタブレットの方で作業すれば良いとして…槇先輩と成瀬先輩は作業交代ね」

「了解」

「槇先輩とハルトはやることなかったら、作業の邪魔にならないようにゴミ捨てとか片付けテキトーにしてて。あと寝てたら起こして」

「わかったっす!」

「成瀬先輩は今から仕事教えるわね」

「うん!」


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·


「あー!!私のバカバカ!!何でこんな仕事引き受けたのかしら!!」

「日和ちゃん手動かすッスよ…!頑張れー!」

「うるさい!」

大声で怒鳴る日和。


「そういえば夜中だった…すみません」

すぐに謝る日和。

「日和ちゃん声大きいっす……」

「もうちょっとボリューム下げようぜ。」

「ごめんなさい……」


「あ、そうだ日和ちゃん!イラスト描いてるところ見てていいっすか?」

「別にいいけど……」

「やった!ありがとうございます!」

「あんまり見られるの好きじゃないんだけど……」

「まあまあ!」


·


·


「はぁ…なんとかなったかしら」


「いやー最初はどうなることやらーと思ったが、なんとかなったな!」

「ですね…」

「先輩達も日和ちゃんも凄かったッス!マジで尊敬ッス!俺には無理ッスよ!」

「それはハルトが不器用すぎるだけでしょ。」


「いやー楽しかったな!」

「俺は久しぶりにこんなに楽しいって思える時間を過ごした気がするッス!」

「ひよりん、ありがとう!」

「いえ、こちらこそ。みんな手伝ってくれてありがとうございました。」

「気にしないでください。」

「困った時はお互い様だからな」

「…ありがとう。」


「ひよりん、私達は帰るねー」

「じゃあまた明日ッス!!」

「はいはい、気をつけて帰ってくださいね」

「さ、ハルト行きましょうか」

「はいッス!」

日和の部屋を出た久真達。


こうして無事、グッズのイラスト制作は終わったのであった。


·

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·


後日、Reve9ライブのグッズがサンプルで届いた。


「イラストを描いて、タダでグッズを貰えるなんてラッキーよね」

ビリビリと封を開け中のグッズを見る。


「あー、なるほどね。」


締め切り前に描いていたメンバー9人が揃ったカラーイラストがクリアファイルになっていた。デフォルメキャラは別のイラストレーターさんが描いたようだ。


「これ…手伝ってくれた先輩になんて説明しようかしら…?」


苦笑いをする日和。

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