第十七話「三人寄れば凡愚の地へ」

「それじゃ、この前の社会科のテスト返しますよ〜。名前を呼ばれたら取りにくるように。」


さてさて、とても結果が楽しみな社会科テスト返却の日のようです。まあ、例のお三方は対策万全の余裕な感じだったんで全員満点でしょうねぇ〜w

テストを返却されているモブ達の表情を見るにそこまで落胆してる子はいない様子。難易度的にもあまり難しくはなかったようね。


「岡本!…北村!…黒田!…坂本!・・・」


「ん?・・・って!ちょいちょい、先生ストップストップ!!…わ、私名前呼ばれてないっす!・・・か、柿木さんのは?」


「えっ?柿木の解答用紙?・・・ああ、もしかしてコレか。」


「せ、先生。名前書いてなかったから0点とかありませんよね?先生はどっかの悪役令嬢みたく非情な人間ではないですよね?私、柿木ほまれの頑張りを認めてくれる人物ですよね?」


「な、何を言っているんだね君は…本来なら0点ですけど、今回はちゃんと採点しました。次からはちゃんと気をつけなさい。」


どうやら一生懸命に鉛筆を転がしていた名無しの権兵衛さんは社会科の先生の温情により、0点は逃れられたようです。次からはちゃんと名前を書いた上で運任せではなく、しっかりと勉強して実力で点を取りましょうね。…ん?いやでも、名無しの権兵衛を知らないままで0点のテストを受け取った世界線のほまれリアクションも正直見たかったかもw

そして何気にこまろ令嬢に不敬を働いているの草。


「さーて、私の点数は…えっ?な、ん、で。ウソダロ…(あっ!解答欄一個ずつズレてて、そこほとんど間違えてる〜)」


「へ〜、PS点はこのワタクシでも取れる点数ではないですわよ。ほまれさん素晴らしいですわね〜。」


「解答用紙の裏側から透けて見える人の点数覗くなや〜!!」


あ〜、ほまれさん29点なのね。名無しで0点じゃなくても、どっちみち赤点&補習対象なの笑う。まあ、その〜…点数があるだけいいと思うしかないね。ドンマイ!・・・ってか、少し前の100点ワンチャンとか言ってたあの自信はどこから出て、どこに逃げていったのだろうか。そこ触れない方が良いっスかw?


「城田!…鈴木!・・・」


「んん?…せ、先生ストップアゲイン!こまろちゃ…いや、栗宮さん呼ばれてないですよね?(ひょっとして…コヤツもうっかりの名無しの権兵衛の可能性が!?)」


「ああ、栗宮か。栗宮は・・・その…免除だ。」


「め、免除って!?・・・何やねん!それ…」


「ウフフ、資本主義の社会とは生きやすいものですわね。」


「なんか今までで一番ムカつくわ〜。絶対いい死に方しないわ〜コイツ〜。」


「ま、まあ…先生や学校にも色々と事情というものがあってだな・・・じ、時間がないからさっさと返すぞ!田中!・・・」


先生も有耶無耶で終わらそうとしててウケる。大人の事情に駆られながら本音と建前を両立させて生きる苦労、お察し致します。こまろお嬢様が元々受ける必要がないテストを受けていたのもただの暇潰しだったのだろうね。支配する側とされる側では努力をかける方向性が違うのだと、ほまれさんは早くも理解してしまいそうかもw





「前川!…村島!…桃咲!」


「は、ハイ!!やっと順番来た〜。何点だろうなあ〜//(ワクワク)」


柿木さんと栗宮さんのインパクトが強すぎて、ももっ娘ワールドの勇者の存在をすっかり忘れていましたわ。きっと彼女ならやり遂げてくれると思います。うんうん!←(いや、何を?というセルフツッコミ!)

先生から解答用紙を受け取り、そこに赤く記されている数字を確認する世界のヒロイン、桃咲。一瞬だけポカーンとした表情をした後、解答用紙を自席に持ち帰る足を進めるごとに瞳がウルウル涙目になっていき、ついに自席を目前にしてその場に座り込んでしまった。その様子を見兼ねた世界の脇役、柿木さんが彼女の前に駆けつける。


「…ぐすん。私…わたし・・・」


「おいおい、あひちゃん。どうした!?」


「私・・・前の学校の社会科テストの6倍の点数になってた。その時より20点も上がってたよ。過去最高の点数だったから思わず、嬉しくて泣いちゃった。…ぐすん。」


「え?・・・ちょいまち。つまり何点ってコトだ?」


6X = X + 20

5X = 20

X = 4

つまり、桃咲さんの前のテストの点数は4点、今回は24点だってコトですよ〜。OK?Homare。

6倍で20点も点数が違うのだから、圧倒的成長を彼女は見せてくれたのですよ〜。(元の点数が低すぎるからどうなのよ?みたいなツッコミは無しでw)OK?Kakinoki。

でも、結局はあなたと同じ赤点&補習対象者だというコトですよ〜。OK?Shimobe。


「…前が4、今回24・・・ま、まあ…あひちゃん凄い勉強頑張ってたしね!(小学生の教科書で)私と同じでもう一回再テストで遊べるドン!だしね!(流石にこの天然ガールに点数負けてたら私の立場ないからホッとしたわ〜)」


ほまれさん、何気に心の中であひりさんディスってる表情してませんかw?点数だけ見れば五十歩百歩ですからね、あなた。彼女は単に頭が天然級のアヒルってだけで、正しい努力の仕方や方向性を分かっていないだけなのよ。勉強サボって当然の如く点を落としている永遠のエキストラ風情が人の努力を貶してはいけませんよ〜!私はいつでも頑張り屋で正直者の味方ですからね〜・・・天から見守る、優しい〜優しい〜保護者ですから。


「えっ?もう一回テストって…ひょっとして、またテストあるの?…私、凄い点数上がったのに、なんでぇ〜!?」


「お、落ち着けアヒル!!たしかに君は頑張った。でも世の中には理不尽にも超えなければいけない壁とやらが存在するのだよ。だからこの私と共に乗り越えようではないか!補習という名の試練を!!」


なんかカッコいい事言ってますけど、ほまれさんの現在の戦闘力は目の前の天然アヒルと同じレベルなんですからね。しかもあなたの場合、理不尽ではなくて、ただの因果応報です。・・・っとほまれさんにこれ以上ツッコミを入れると、涙目になりながら柿木製激辛パウダーを周囲に撒き散らしかねないので、ここで留めておきます。


「…なんだかよく分からないけれど、私もほまれちゃんと同じ選ばれし者だって事だね。普通の人はもう一回テストなんてしないって聞いたことあるから、なかなか経験できる事ではないんだよね?…よ〜し、私なんだかやる気が湧いてきたよ!!ほまれちゃんとなら何回でもテストと戦えそうだよ!」


「お、おう…よ。(なんか、あひちゃんの謎のスイッチを起動してしまったらしいな。めっちゃ純粋無垢な輝かしい瞳してるし。・・・ってか、私は何回もテストと戦いたく無いんですが…悪いけど、アヒルだけで勝手にやってて下さい。)」


先ほどまで嬉し涙で泣き崩れていたあひりさんが急に何かに燃え始めたようです。自分でイミフの燃料を投下しときながら『そ、そんなつもりでは…』みたいなリアクションしないで下さい、ほまれさん。

でもまあ、よかったじゃん。お二人ともある意味、選ばれし者にしかできない貴重な経験ができるのだからさ。もういっそのこと胸を張ってノー勉&ぶっつけ本番で挑もうぜw





社会科授業のテスト返却が終わった後の休憩時間です。いつものお笑いトリオたちがいつもの如く、賑やかな演劇を見せてくれているようです。謎パワーで見事にテストを攻略した?免除者、名前を書き忘れた上に解答欄ズレでどっちみち赤点必至だったバトル鉛筆の使い手、かつてない大きな成長を披露してくれたが結局赤点なことに変わりはない永遠の補習生。・・・キャストが豪華すぎて、最高に面白い劇団だわねw


「あひりさん!今回のテストで6倍も点数が上がったらしいですわね。実に素晴らしいですわ。惨めにも先生にあれやこれやでしがみついて、補習で再びご迷惑をおかけする情けないお人になっては終わりですものね〜。」


「それは誰のことですかね〜?イカサマ令嬢様。ってか、一応あひちゃんも補習対象者なんですが?」


「うん、そうなんだけど・・・そ、それがねほまれちゃん。私はこまろちゃんが家庭教師役になってくれるみたいだから、再テストの点数は心配しなくていいって。凄く心強いよね!!」


「ウフフ、でも実際に頑張るのはあひりさんご自身ですわよ。ワタクシもあひりさんのサポート役に回れて光栄ですわ(ニタニタ)」


「・・・こいつ、今度は何を企んでやがるんだ。少なくとも補習が平和に終わることはないと見るべきだな…」


僕(しもべ)として主(あるじ)に長い期間弄られているととても勘に鋭くなっていくもんなんですね〜w

純粋無垢で鈍感な桃咲さん、今回も無事生きて帰ることはできるのだろうか?・・・続く(閉店ガラガラ)

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