第十六話「ランチで学ぶ階級社会」
社会科のテスト終わりのお昼休み時間です。愉快な三人組はそれぞれの昼飯を持ち寄り、これから女子トークを開始するようです。試験という大山を超えた後のホッと気持ちが落ち着くひと時。…まあ、試験自体マトモに戦っていたヤツはこの中には誰一人としていないんですがね。
「わあー!今日は私の大好きなものばっかり入ってる!お母さんありがとう//」
「どれどれ?…おおー、これはなかなかですな!特にこのリチャードとアルベルトとボブが最高だね!」
「ええっ?どれがリチャードで、どれが…どれって?」
「あひちゃん、その三つあるタコさんウインナーの目をよーく見て。・・・ほら、僕がリチャードだ!って主張しているでしょ?そして彼がアルベルト。ほらほら、俺がボブだ!って彼も主張してるよ!」
「えーとえーと・・・こっちがチャールズで…こっちがアルフレッド…いや違った、えーと・・・こっちがリチャーベルト、そしてこっちがボブスレー…ああ、もうダメ〜。また、頭痛くなったよ〜。(プシュ〜)」
あひりママが生み出したタコさんウインナーに勝手に命名を始めるほまれさん。それを受けて懸命に名前を覚えようとするも情報がパンクしてしまい、またもや頭から湯気を出す桃咲殿。三つ子の顔と名前を一致させるのは難しいので無理もないですよ〜…っとプチフォローを入れてみるw
「ほまれさん、間違っていますわよ。彼がボブでこちらの方がリチャード、そして残った彼がアルベルトですわよ。全く、これだから下人は…」
「(ムカ!)いや、どう見ても彼がリチャードだろ。腹黒ゲス令嬢は黙ってろ!」
「(イラ!)…んですって!高貴なワタクシだからこそ、彼らの偉大な功績を理解しているのですわよ。下僕の戯言なぞ、信用に欠けますことよ。」
「そんなの知るかよ。これがリチャードだ!」
「いいえ、彼がリチャードですのよ!」
なんか勝手に名付け戦争が勃発し始めたっぽいです。こまろさん、遊び半分でこの謎トークに介入したせいで無用な諍いを生んでヒートアップしてしまったようね…そして非常にどうでもいい低レベルな内容での軋轢。
「もう!ほまれちゃん、こまろちゃん。三つともただのたこさんウインナーじゃん!何自分たちで勝手に名前つけてるの?私そういうの恥ずかしいことだと思うよ。(プンスカ)」
「・・・」
「・・・」
天然っ娘のあひりさんにド直球の説教をいただく、大人気ないお二人。お顔を真っ赤にして何も言い返せないのワロウ。その後、リチャードとアルベルトとボブは桃咲あひり様が美味しくいただきましたとさ。
どれがリチャードでどれがアルベルトでどれがボブだろうと、結局お腹に入れば皆一緒っすよね、あひり先輩w
※
「おにぎりとサラダチキン…って、ほまれちゃんのお昼ご飯、それだけ?」
「ああ、私は毎回コンビニで調達してきてるからこんな感じよ。あひちゃん、女の子ってのは健康面や美容面も考えて食事は選ぶべきなんスヨ〜!」
「ご自身で手料理をすることもなく、コンビニで済ませているわりには随分と高尚な考えをお持ちですわね、ほまれさん。」
「皮肉大好きウーマンは引っ込んでてくんねーかな…マジで!(ムカムカ〜)」
ほまれさ〜ん、こまろさ〜ん。お食事は楽しく取りましょうね。相対的にだんだん天然っ娘主人公がまともな人物に見えてきちゃいますから〜w
最近は食事を一食分丸々抜いたり、サラダチキンだけで済ませたり、究極はサプリメントだけで済ませたりする人も多くいるっぽいですね。あと、急なダイエット宣言をしてドカ食いからいきなり飯抜きしようとしたけど、ものの見事にリバウンドした勢とか…
新陳代謝のコントロールが上手くできるかが重要なんすよね。要は無謀なことせず、単純に入ってくる量分、出ていく量を調整すればいいのよ…って持論ですけど、どうでしょうか?
「ほまれちゃん、サラダチキンに振りかけてるそれ何?」
「ん、これ?…ふふ〜ん、聞いて驚くな!『柿木家特製調味料!!』でござるよ。これを振りかけると、あら不思議。どんな食材でも美味しくなってしまう魔法の代物よ!・・・今回だけ特別にあひちゃんのその丸っこい唐揚げにも振りかけてあげようか?」
「えっ、いいの!?それじゃあ、お願い!」
「ワタクシもその誇大広告に大変興味があるので、あひりさんの後にお願いしたいですわ。」
ほまれさんはサラダチキンに味付けをして美味しく食するために自前の調味料を持ち込んでいるみたいです。その調味料をあひりさんのまんまる唐揚げに軽く2振りほど振りかける。ニコニコ笑顔で唐揚げを一口で頬張り、モグモグする純粋無垢な天然っ娘。
「うん!おいし・・・・・・」
「でしょでしょ!ご飯に振りかけてもまた美味いのよ、これが!」
「・・・・・・・・・・・・」
自身の調味料を自慢げに語ってノリノリなほまれさんだが・・・あひりさんの様子がなんか変。モグモグしていた口の動きが急に止まり、顔中からは汗がダラダラと流れ、かわいいお目々はウルウルの涙目になっている。口に含んでいた唐揚げを無理矢理にごっくんした後、止まらないゲホゲホ地獄でむせ始めた。
「あ、あひちゃん!?どうしたの?・・・そうかそうか!!涙が出て言葉で表現できないほどこの調味料が美味しかったのか〜!」
「ほ、ほまれさん。その調味料、中身は何で作られていますの?」
「ああ、これは柿木家の家庭菜園で独自改良したペッパーXを大量に使って、濃縮作業を何度も繰り返し、それを粉末状にして仕上げたヤツだよ。・・・あひちゃんもあんなに喜んでいるみたいだし、こまろちゃんにも特別にお情けで恵んでやらんでもないぞ…ホントは嫌だけど。」
「わ、ワタクシは遠慮しておきますわ。・・・そんな化学兵器…」
「化学…何だって?」
「か、輝くくらい平均的な美味しさを超越している調味料・・・ですわよ…(あの下僕の表情は、あひりさんが本当に喜んでいらっしゃると思っていますわ。しかし危ないところでしたわ。あと少しでこのワタクシがあの下僕にハメられるところでしたの…)」
「・・・ゲホ、ゲホゲホ、ゲゲホ、ゲホゲホ。ゲホホ、ゲホホゲホ、ゲゲホホホ、ゲホゲホゲー(訳:ほまれちゃんヒドイ、騙したね!また私に意地悪して〜、もう!!(プンスカ))」
ほまれさん、実は自覚のない超激辛党だったらしいです。超激甘党の桃咲さんと同じく、一般公開出来ないヤバいものを製造しているとか…こいつらもう、マッドサイエンティストだろw
※
柿木家の新型兵器(高濃度ペッパーX亜種ふりかけ)の被害者となった天然っ娘ヒロイン。のたうち回りながら口からドラゴンの如く火を吹き、体中の水分が消し飛んでそのままご臨終になると思われていたが、どうやら彼女には切り札があったらしい。
以前見た桃咲家特製の謎キューブを一個取り出して口に放り込むと、あれだけゲホゲホしていた症状が何事もなかったかのようにケロッと治った。劇物には劇薬で対応という荒療治の成功例w
他方でこまろお嬢さんは目の前に用意していた風呂敷包みを解き、五重にもなっている重箱を開け始めていた。
「さて、ワタクシもお昼をいただきましょうか。」
「うわ〜、なんかこまろちゃんのお弁当凄いよ!!ほまれちゃん見て見て!!」
「こちらは是非とも皆様にご賞味していただきたく、準備した物ですわよ。お食事は楽しくとるものですし。ほまれさんも嫉妬と羨望に満ちた残念な気持ちはそのお顔だけにして、ご一緒しませんか?」
「…明らかに怪しい代物だろうと思って敢えて突っ込まなかったけど・・・おせち料理を学校持って来んなや!(ってか、言い方がつくづく癇に障るヤツだわ。ホント…)」
軽い差し入れ感覚であひりとほまれだけでなく、一部のモブたちにもお誘いの声をかける金銭感覚のぶっ壊れたお嬢様。そのお重もいくら万円なのか…誰も知らない方が平和に生きられそうですけどw
そしてお嬢の撒いた餌に群がる下々のもの達。ま、まあ高貴なものにとっては彼ら、彼女らは可愛いペット扱いなんでしょ、きっと…
「ウフフ、あの程度のもので恩を売れるのであれば安いものですわ。さて、ワタクシはこちらのリッチなお食事でもとりながら、あのチープなお食事に群がる下の者たちを観察致しましょうかね。」
どうやら、栗宮様は別の超高級お弁当を用意していたらしいです。そんな事情も知らず、楽しくお重を満喫しているモブ達。それに少し出遅れてモグモググループに混ざり始めるあひ・ほま。
「うーん…この小さいつぶつぶの黒豆、甘くないね。・・・そうだ!(ガサゴソ)よし、これでちょうど良い甘さになるかも//」
「なんかどれも味にインパクトがないんだよなあ〜、やっぱ値段が高けりゃいいってもんじゃないのよね〜。・・・よし、(ガサゴソ)コイツで!」
「ちょっ!・・・な、何をやっているのですか、あなた方は!?厳選された究極キャビアに激甘パウダーを振りかけたり、最高級ばかりを詰め込んだ一段目の食材全てに激辛パウダーを振りかけたり・・・いくらチープなものとはいえ、これでは高貴な味が台無しですわ!!」
「えっ、『チープなもの』って・・・な〜んだ、そんな高くはないのかこれ。どおりで味が薄くて迫力に欠けるわけだ。」
「あっ、こまろちゃん!…ん、なんか険しい顔してるけど大丈夫?・・・ねえねえ、こまろちゃんが言ってた通り、『お食事を楽しく』とってるよ//」
「・・・・・・・・・・・・」
大財閥令嬢様よ、彼女らみたいな花より団子な平民には高貴、高尚なものなど通用しないのですよw
生まれも育ちも超上流の環境だからって生きやすいわけでは無さそうっすね〜。むしろ、このももっ娘の世界だと平民の方が生きやすい感じもするわね。なんか少しだけこまろお嬢さまに同情しちゃうかm・・・いや、日頃の行いがアレなとこあるからなあ。…んなことないかも(笑)
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