49.誘導
魔物が巣食う坑道の最奥部。
巨竜が息絶えると、その後ろでそれを操っていた男たちは息を飲んで呆然と佇んでいた。
アルトとフランキーは彼らの方へと向かっていく。
「く、来るな!!」
先ほどまでの余裕はどこへ行ったのか、男たちの切り札である巨竜を倒された今、彼らにできるのは怯えながら後ずさりすることだけだった。
先頭の男が、アルトたちに向かって“ファイヤーボール”を投げつける。
だが、アルトのオートマジックによってそれは阻まれる。
逆に、フランキーは丸腰状態の男たちに“ファイヤーボール”を食らわせる。
「うッ!」
男たちの身を守っていた結界が破られる。
そしてそこにフランキーは慣れた手つきで剣を突きつける。
「た、助けてくれ!!」
男たちは怯えた目で命乞いをする。
「てめぇら、一体何もんだ」
フランキーが聞くと、男たちは首を横に振る。
「お、俺らは金で雇われただけだ!」
「雇われた?」
「ただ、ここで魔物たちの面倒を見ろって、雇われただけだ!」
「何のために?」
フランキーが問いただすと、男たちは首を横に振る。
「し、知らねぇよ!」
そう答える男。だが、フランキーはその表情がわずかに変化したのを見逃さなかった。
剣をわずかに動かし、男の皮膚に当てる。
「嘘をつくな。知っていることがあるだろ」
「……ほ、ほんとに知らねぇんだって!」
男がそう言うと、フランキーが剣を後ろに引いてそのまま斬りつけようとした。
そこで、男はわずかな悲鳴とともに、吐き出すように言った。
「た、ただ他の仲間はミントンにいる」
――その言葉を聞いて、アルトは驚く。
「み、ミントン!?」
そこはさっきまで自分たちがいた場所。
――そして、他でもない王女様がいる場所だ。
山で魔物たちを操っている者たち。
彼らの仲間がミントンに。
偶然――のはずがない。
アルトたちは確信した。
「まさか」
アルトがつぶやくと、フランキーは踵を返す。
「――急いでミントンに行くぞ」
†
その頃、ミントン城。
「お、王女様!! 大変です!!」
警護を担当していた騎士が王女に伝える。
「何事ですか?!」
「し、城に敵襲が!!」
「ッ――!?」
慌てて部屋の外へと向かう王女。
――だが、既に覆面のものたちが大挙して押し寄せてきた。
あっという間に王女たちを包囲する。
護衛していた兵士と騎士たちが、剣を抜く。
だが、多勢に無勢だった。
王女を守っていた騎士も兵士も次々やられていく。
「捕らえろ!」
――こうして、次の瞬間には王女は覆面の男たちに捕らえられたのだった。
†
アルトとフランキーは、アーサーたちのチームと合流し、すぐさまミントンへと向かった。
だが、城に戻ったときには、既に手遅れであった。
床は血だらけで、その上に無残にも騎士たちの死体が転がっている。
アルトたちも、あまりに凄惨な光景に吐き気を催した。
「……なんてことだ」
この時ばかりは、アーサーも感情をあらわにした。
騎士たちは全員殺され、王女が連れさられた。これ以上ないほど最悪の事態だった。
「王女様の死体がありません。おそらく連れ去ったものかと思います。であればまだ生きていらっしゃる可能性はあります」
フランキーが言うと、アーサーは即断する。
「助けを呼んでいる暇はない。今すぐに追うぞ」
†
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