第三章 王女奪還編

42.配属


 ――騎士試験から一か月後。


 アルトとミアは王都の騎士本部の訓練場へ来ていた。

 騎士試験に合格したアルトたちは、今日から正式に騎士として働くことになっていて、今日は所属する隊員との顔合わせをすることになっていた。


「それにしても……まさかアルトさんと同じ隊になれるなんて」


 ミアが顔をうつむきがちにそうつぶやいた。


「驚いたね」


 アルトはミアの感想に同意する。

 新人騎士の配属は、一つの隊に一人ということが多い。しかし今回は少し状況が違った。


 というのも、今回王女直属の新しい隊ができることになったのである。

 急遽できた隊ということで、他の隊からの異動ですぐさま隊員を確保するのが難しいという事情があり、新人であるアルトとミアの二人が同じ隊に配属されることになったのだ。


 しかも、その隊長はアルトたちの試験の監督を務めていたアーサー隊長が務めることになっていた。


「友達と一緒に働けるってのはラッキーだね」


 アルトが言うと、ミアは控え目にうなずいて、そして先ほどよりもさらに小さい声で言う。


「本当によかったです……」


 だが、アルトにとってそれ以上に驚くことが起きた。

 訓練場で同僚となる隊員が現れるのを待っていると、そこにアルトのよく見知った人間が姿をあらわしたのである。


「リリィ!」


 それは、まぎれもなく――幼馴染のリリィの姿だった。


 適性の儀で、圧倒的な才能を見せつけ、アルトより先に騎士になっていたリリィ。

 突然彼女がアルトたちの目の前に現れたのである。


「アルト!」


 リリィは驚いた表情で駆け寄ってきた。


「まさか……アーサー隊長の新しい隊に配属されたの?」


 リリィが聞くと、アルトは「ってことは、まさか……?」と聞き替えす。


「私もアーサー隊に異動になったの」


 アルトたちは事前に、新しい隊には隊長以外に二人のメンバーが配属される予定と聞いていたが、メンバーについてはまだ決まっていないと聞いていた。


「まさかリリィが同じ隊になるなんて! でもうれしいよ」


 小さいころからずっと一緒だった、けれど適性の儀を境に離れてしまった幼馴染と同じ隊で働けると聞いて、アルトは心の底からうれしく感じていた。


「私も!」


 ――だが、アルトたちとは別の意味で驚いていたのがミアだ。


「あ、ごめん……ミア、紹介するよ。リリィだ。俺の幼馴染なんだ」


 ミアをおいてけぼりにしたことに気が付き、関係を紹介するアルト。


「はじめまして、リリィです」


 ペコリと頭を下げるリリィ。


 ミアはおどおどしながら応じる。


「は、はじめまして。ミアです……」


「ミアは俺と一緒に試験を受けて受かったんだ。それで隊も一緒になったんだよ」


 アルトがリリィに、ミアとの関係性を紹介する。


「そっかあ。これからよろしくね」


 にっこり微笑むリリィ。


「よ、よろしくお願いします……」


 ミアは伏し目がちに答える。


「(こ、こんな美人さんの幼馴染がいるなんて聞いてないよ)」


 ミアは心の中でそうつぶやくのであった。



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