26.王女の期待



「――アルトさん、暴走したボスから街を救ってくださってありがとうございます」


 アルトは王宮の一室に呼び出されていた。

 そこで待っていたのはシャーロット王女であった。


「騎士でも勝てなかった相手をアルトさんが一撃で倒したと聞いています。そのお力は既に騎士レベルを超えていますね」


「いえ、そんな……。あくまで皆さんと協力して戦ったので」


「謙虚なところも素晴らしいです。まさしく理想の騎士像です」


「もったいないお言葉、ありがとうございます」


「今回のクエスト、そして街を救ってくださった功績が認められて、正式に騎士選抜試験の受験が認められることになりました。受けてくださりますよね?」


「……もちろんです!!」


「それはよかったです。アルトさんなら試験は楽勝だと思いますが、騎士になった暁には、ぜひ私の下で力を貸していただきたいと思っていますから、ぜひ高い成績で合格してくれるとうれしいです。頑張ってくださいね」


「ありがとうございます!!」


 †


 アルトが部屋を去った後、王女は配下の騎士に語り掛ける。


「――最近、王子派閥の不穏な動きを感じます」


「ええ。どうやら、ボーン伯爵家も味方についたようです。我々がアルトさんを味方にしようとしていることは既に知られています。おそらく妨害もあるでしょう」


「しかし、アルトさんは強いです。ちょっとやそっとの妨害など軽々はねのけてくれるでしょう」


 王女は自分の命を救ってくれた少年の姿を思い浮かべて目を輝かせるのだった。


 †


 ――アルトは少ない荷物をまとめて、王立騎士学校へと向かった。


 王都から少しいったところにある街に、学校はある。そこの寮に部屋を借りられることになっていた。


「ここが王立騎士学校か……」


 アルトは広い敷地と、威厳を感じさせる建物に圧倒される。

 ここでは国中から集まったエリートたちがしのぎと削ってきているはずだ。

 彼らを倒さなければ、騎士になることはできない。

 

「――まぁ、できることをやろう。いつも通り、粛々とコスパ良く」


 アルトは決意を込めて、敷地へと足を踏み入れた。

 †

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