15.成果報告



「第一階層だけではなくて、ボスまで倒しちゃいました」


「「――へ?」」


 アルトの報告を聞いて、お姉さんとエラソー隊長はポカンと口を開ける。


「ぼ、ボスって、え、第四階層にいるBランクのボスですか?」


 受付のお姉さんがそう問い返してくる。


「はい……」


 アルトは、リュックから魔石を取り出す。

 お姉さんはそれを確認する。


「確かに、Bランクボス、ミノタウロスの魔石です……ではアルトさんが本当に!? いまFランクライセンスなのに!?」


「どどど、どういうことだ?! あの無能アルトがBランクボスを!? そんなわけあるか!?」


 エラソー隊長は顔を真っ赤にして問い詰める。


「今日あのダンジョンでのクエストを任せたのはエラソーパーティと、アルトさんだけでしたから、エラソー隊長が倒してないなら、アルトさんしかありえません。尤も、アルトさんにはEランクレベルのモンスターを倒してもらうことを想定していたのですが、まさかたった一人でBランクのボスを倒してしまうとは!!」


「すみません、仕事を横取りしてしまいました」


 アルトは申し訳なさそうに謝る。


「いえ、いいんですよ! 今回のボス攻略は早いもの勝ちです。確かに、エラソー隊長がボスを倒すものとしてモンスター討伐クエストを発注しましたが、アルトさんにもクエストは出していたので、問題ありません。実際、この人は失敗して帰ってきたので」


 お姉さんは辛らつにそう言った。


「き、貴様!? 俺がのろまだとでもいいたいのか!?」


 エラソー隊長は激昂する。しかし、普段から態度の悪い上に、ボス攻略に失敗したエラソーの相手をする気はお姉さんにはなかった。


「アルトさん、まさかこんなに強いなんて。今までわざとFランクのクエストばかり受けていたんですか?」


「いえ、そういうわけではないのですが……たまたまうまくいって」


「Aランク冒険者でもBランクダンジョンを一人で攻略するのは難しいんです! これはめちゃくちゃすごいことですよ!」


 お姉さんはアルトをほめちぎる。

 そしてそうすればするほど、エラソー隊長は顔を真っ赤にしていく。


「お、お前!! いったいどんなズルをしたんだ」


 エラソー隊長の頭の中では、嫌がらせでズルをして手柄を横取りされたことになっていた。

 自分のプライドを守るために、自然と頭が情報を自分に都合のいいように処理してしまったのである。


 ――しかし、そんな横暴なエラソー隊長に対してお姉さんが一言。


「あの、ちょっと黙ってもらえます?」


「き、貴様!!」


「Aランクのくせに攻略に失敗したあなたにこれ以上何か言う権利はありません。私は、ボスを倒したアルトさんと話していますから邪魔しないでください」


 ピシャリと言い放つお姉さん。

 エラソー隊長はたまらず、その場を後にした。


「あ、アルトお前! 覚えてろよ!!」


 その姿を二人は生暖かい目で見送る。


「さて。うるさい人もいなくなりました……。アルトさん、鑑定はこれからちゃんとしますが、ひとまず初のボス攻略おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「ボスを倒して規定を満たしたので、Dランクライセンスを交付しますね」


「あ、ありがとうございます!」


 アルトは笑みを浮かべる。

 Dランクのライセンスがあれば、最初からBランクの仕事を受注できる。


「一人でBランクのボスを倒したので、本当はAランクライセンスの力もあると思うのですが。ひとまずはDランクということで。でもまたボスを倒してくださればすぐにAランクになると思います!」


 お姉さんにそんな風に太鼓判を押されて、喜ぶアルトだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る