16.【side】エラソー隊長、クビの危機



 ――エラソー隊長がBランククエストに失敗した翌日。


「――おい、エラソー! お前なにやってんだ!!」


 エラソー隊長はギルドマスターの部屋に呼び出された。


「ぎ、ギルマス……一体なんでしょうか」


「なんでしょうじゃない! Bランクのクエストに失敗して、逃げ帰ってきたそうじゃないか! うちのギルドの評判がお前のせいでダダ下がりだ!」


「ぎ、ギルマス! 違うんです! 本当にたまたま」


「バカ言え! たまたまでギルドの看板に泥を塗る気か!?」


「そ、それは……」


「まったく、お前に期待した私がバカだった」


 ギルマスはエラソー隊長を見下した目で見た。


「それに、お前はマネジメントもなってない!」


「ま、マネジメントですか!?」


「倉庫業務が遅れに遅れて、アイテムの換金が全然できてない。おかげで運転資金がつきかかっているそうだぞ」


「そ、倉庫が!? しかし倉庫なんてあの無能のノースキルが一人で片手間にやっていたような仕事です……他の者ならすぐに終わらすハズ」


「なら、さっさとやらせろ!! 今夜中に遅れを取り戻せ!! でないとクビだぞ」


「は、はい!!」


 エラソー隊長はギルマスの部屋から勢いよく飛び出し、倉庫へと向かった。


 そこでは、一人の男が疲れた顔で働いていた。

 エラソーが抜けたアルトの代わりにバイトで雇った者である。


「おい、貴様! なんで仕分けが遅れてるんだ!」


 そう怒鳴りつけるエラソー。


「隊長! こんな量一人でできるわけないじゃないですか! 無茶言わないでくださいよ!」


「バカ言え! あの無能のアルトでさえできたことがなぜできない!?」


「あ、アルトって、あのアルトさんですか!? あの人はスキルで倉庫の整理をやってたんですよ! 俺らが勝てるわけないじゃないすか!」


 ――そう。エラソーたちが知らないだけで、アルトがスキルで雑用をこなしていたことは下っ端のものであれば誰でも知っていることだった。

 アルトだから無茶ぶりにこたえられたのである。

 だから自分がそれを任されれば、理不尽に感じるのも無理はなかった。


「いいか。ここにあるもの、明日の朝までに全部仕分けろ! そうじゃないとクビだからな!」


「な、なんだって!?」


 雑用係の男は、隊長の横暴さにキレる。


「もう辞めた! こんな仕事やってらんねぇよ! クビになる前にこっちから願い下げだ!」


 そう言って雑用係は倉庫から出ていく。

 ――大量の整理されていない戦利品を置いて。


「お、お前! ちょっと待て!!」


 しかしエラソーの言葉など聞くよしもない。


「お、おい! どうするんだ!?」


 エラソーは途方に暮れる。

 明日までに倉庫を整理しないとクビになってしまう。


 部下たちももう解散してしまっている。

 それに冒険者たちに倉庫仕事なんてさせたら、今の雑用係と同じように辞められてしまう。


「……くそ!」


 エラソーは仕方がなく、自分の手で倉庫を整理し始めるのであった。

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