14.【side】エラソー隊長の信用失墜



 ――ダンジョンから逃げ帰ってきたエラソーパーティ。


 当然だが今日の成果を、クエスト紹介ギルドに報告しなければならなかった。


 エラソーは部下は解散させて、単独紹介ギルドに向かう。


「え、攻略に失敗したんですか!?」


 ギルドの受付のお姉さんが驚いて声を上げる。

 それに対してエラソー隊長は顔を真っ赤にして声を荒らげる。


「失敗したんじゃない!! わけあって時間内に終わらなかっただけだ!!」


「しかし、あのダンジョンはBランクで、しかもあまり規模も大きくありません。Aランクライセンスなら、一日で攻略できるはずでは?」


 エラソーパーティの「本来の実力」からすると、Bランクダンジョンは楽勝であるはずだった。

 お姉さんとしても、まさか一日では攻略できないとは想定外であった。


「き、貴様! 俺たちが弱いとでもいいたいのか!?」


 エラソー隊長は顔を真っ赤にして言う。


「いえ、そうは言ってません。ただ別のパーティに頼まないとですね。あそこは街から近いので、万が一モンスターがあふれてきたら大変ですから」


「待て! 失敗したわけじゃない! 明日必ず攻略する! だから一日待ってくれ」


 エラソー隊長は焦ってそうまくし立ててた。

 天下のエラソーパーティが、Bランクダンジョンの攻略に失敗したなどとなれば、信用は失墜するからだ。


「……とりあえず明日決めましょう……」


 お姉さんは、カンカンに怒ったエラソー隊長とそれ以上話しても埒が明かないと思って話を切り上げようとした。


 と、その時だ。


「……あ、あの。クエストの結果を報告したいんですが」


 ギルドに現れたのは、アルトだった。


「アルトさん! お疲れ様です」


 受付のお姉さんは満面の笑みでアルトを迎え入れる。


 ――と、アルトは受付の前にいるのが、かつての上司であるエラソー隊長だと気が付き、凍り付く。


「……なんだ、無能野郎じゃないか。いっちょ前にクエストを受けたのか?」


 エラソー隊長はアルトを見てそんな皮肉を言ってくる。


「ええ、まぁ」


 しかしアルトはもう隊長やそのギルドにまったく興味がなかったので、適当に聞き流す。

 すぐにエラソー隊長から受付のお姉さんに視線を戻す。


 お姉さんは引き出しからアルトへ頼んだクエストの書類を取り出す。

 それを見て、エラソー隊長は鼻で笑う。


「なんだ、黒のラビリンスでの仕事をとってたのか。第一階層のEランクモンスター討伐とは、お前にお似合いだな」


 エラソー隊長は偉そうにそう言った。

 するとお姉さんはキッと隊長をにらみつけてから、アルトに視線を戻す。


「魔物、倒せました?」


 お姉さんが聞いてくる。

 それに対して、アルトは少し言いにくそうに口を開く。


「ええ。ただあのすみません、実は……」


「実は……?」 


「その、第一階層だけではなくて、ボスまで倒しちゃいました」


 アルトの報告を聞いて、お姉さんとエラソー隊長はポカンと口を開ける。


「「――へ?」」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る