13.あれ、モンスターってこんなに簡単に倒せるの?
アルトはギルドで許可をもらい、ダンジョンでのモンスター狩りクエストに向かった。
紹介されたのは「黒のラビリンス」という名前の迷宮型ダンジョンだ。
第一階層にはEランクのモンスターがいる。
Eランクは、一般的には初級者向けといわれているが、アルトがそのレベルのモンスターと戦うのは初めてだった。
「よし、頑張るか」
ダンジョンに足を踏み入れるアルト。
すぐさま強化魔法をかける。
“同時発動”一気に16回分の強化が入る、一回一回は平均以下でも16倍にすればその威力はそれなりになる。
本当はもっと重ね掛けもできるのだが、パーティにいる時と違って、攻撃魔法にも魔力を使う必要があるので、ひとまず力は温存しておく。
そしてアルトは軽快にダンジョンを進んでいく。
迷宮型のダンジョンには罠がたくさん仕掛けられているが、これはオートマジックで常に探知しており、近づくとアラートで教えてくれるのでまったく恐れることはない。
――と、少し進んだところで、モンスターと遭遇した。
Eランクレベルのモンスター、ゴブリン。
一般的なモンスターで初心者がまず練習相手にするような敵である。
しかしアルトの低レベルスキルでは太刀打ちできず、今まで相手にしたことはなかった。
これが初対戦である。
「――起動<ファイヤーボール>」
アルトは、さっそく同時発動により16発同時にファイヤーボールを繰り出す。
剛球と化した火炎がゴブリンに勢いよく飛んでいく。
ドゴーン!!!
次の瞬間、爆発音がしてあたりのダンジョン地面ごとゴブリンが吹き飛んだ。
「あっ、ちょっとやりすぎた……」
アルトは改めて同時発動の強さに驚く。
「初めてのEランクモンスターだから手加減しちゃだめだと思ったけど、ちょっとオーバーキルだったな……」
アルトは大慌てで、オートマジックのウィンドウを開き、新たにテキストを追加する。
同時発動の数を4つのものと、8つのものを用意した。
「よし、これでいいかな」
気を取り直して、ダンジョンを進んでいくアルト。
Eランクモンスターは楽勝で倒せるうえに、常時発動している罠探知によって、余計な時間も食わないで済んだので、スムーズに進むことができた。
「……あ、第二階層だ」
ギルドの受付で、第二階層からはDランクモンスターが出ると聞いていた。
今のアルトの「レベル」を考えると、一般的には危険である。
「でも、Eランクモンスターがこれだけ楽に倒せるなら、Dランクもいけるでしょ?」
ということで、アルトは思い切って、第二階層へと足を踏み入れることにした。
†
「……だ、第三階層まで来てしまった……」
第二階層のDランクのモンスターも、アルトの同時発動を前に瞬殺されていった。
その結果、あっという間にこの階層を突破して、アルトは第三階層に到達した。
ここからは、Cランクのモンスターを相手にすることになる。
「……Cランクって、どれくらい強いのかな」
と、その答えはすぐに確認できる。
さっそく現れたCランクモンスター、エリートゴブリン。
「こ、これがCランク!」
明らかに強そうだとアルトは感じた。
すぐさまオートマジックを使う。
「――起動、<連打ではない>」
特大の火球が飛んでいく。
――ドゴーン!!
「……って、あれ?」
これまた何事もなく倒してしまう。
「ま、まじか……」
アルトは驚いて目をぱちぱちさせる。
「冷静に考えてみると、確かに低レベルとはいえ16倍したらすごい力になるよな……」
アルトはダンジョンを次々攻略していくことに高揚感を覚えていた。
「もしかして第四階層のBランクモンスターも……っていうかボスとかも倒せちゃうかも?」
ということで、どうやらCランクも楽勝だとわかったアルトは、そのままどんどんダンジョンを進んでいくことにした。
そして、それなりに進んで行った時。
「――こ、後退!」
ダンジョンのどこかから、そんな声が聞こえてきた。
大勢が走る音も聞こえる。
「ん、なんか今エラソー隊長の声がしたかな?」
しばらく耳を澄ませると、足音は遠ざかっていった。
「ん、気のせいかな」
アルトは気を取り直して、第四階層を目指すのであった。
†
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