デビルバットは僕に対して襲いかかってきているけど、ミューリエには近付いていく素振りすらほとんどなかった。


 もしかしたら、実力の差――つまり彼女には勝てないと本能的に察しているのかも。それなら弱い僕を集中的に狙ってくるのも頷ける。知能はスライムより高そうだもんね。


 だとしたら下手に動くのはますます危険だ。その隙を狙って攻撃されてしまう。


「ミューリエ、どうしよう? 僕は身動きが取れないよ……」


「そのようだな。今回はどうする? デビルバットを倒して良いのか?」


 どことなく無機質な感じがするミューリエの声。もしかしたら、臆病な僕の姿を見て呆れているのかな……。


 でも相手は凶悪なモンスターなんだから、怖がってもおかしいことじゃない。ミューリエにとっては弱いモンスターであっても、僕にとっては桁違いに格上の相手なんだから。


「うん、お願いするよ。このままじゃ二進も三進もいかないもん」


「だが、あれはモンスターではあるが獣に近しい存在だ。もし邪気がなければ大型のコウモリと変わらん。それでも本当に倒して良いのだな?」


 念押しをしてくるミューリエの顔は冷ややかだった。鋭い目付きで僕の方を睨み、その瞳には光も温かさも感じられない。


 目が合った瞬間、威圧されるような空気を感じ、背筋に寒気が走って体が強張る。


 今のミューリエは……ちょっと怖い……。



 →55へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927860513437743/episodes/16816927860516135104

 

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