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邪気がなければ大型のコウモリと変わらないなんて言われたら、確かにこのまま倒すのは少し可哀想に思えてきた。
そうだよね、この場を無事に切り抜けられるなら別に倒す必要はないんだもんね。
「あの……倒さずに済むなら、それに越したことはないけど……。どうしても倒さなきゃいけないってわけじゃないし……」
「……承知した。では、デビルバットの動きを止めて、その隙にここを通り抜けよう」
周囲を威圧するような気配がミューリエから消えた。目付きも少しだけ穏やかになり、フッと小さく息をついている。
ということは、モンスターを倒すのはあまり乗り気じゃなかったということなのかな。
「でもどうやってデビルバットの動きを止めるの? 死なない程度に攻撃するとか?」
「いや、
「あっ、なるほどっ!」
納得して思わず僕は手を叩いた。確かにデビルバットを眠らせてしまえば、お互い傷付かずに戦闘を回避できる。現状を打破するには最適な選択かもしれない。
でもそんな便利な魔法が使えるなら、僕に教えておいてくれてたら良かったのに。ミューリエも人が悪いなぁ――っていうか、そもそも聞かなきゃ教えてくれないよね。もちろん、聞いたとしても何もかも教えてくれるとは限らないけど。
その後、ミューリエは手のひらをデビルバットへ向け、静かに
するとデビルバットの動きが徐々に鈍くなっていき、ふとした瞬間にまるで糸が切れたかのように翼も体も硬直してポトリと床へ落ちる。ただ、よく見るとかすかに鼻が動いているから、やはり絶命したわけではないだろう。
これでようやく安心してこの場を離れることが出来る――。
僕はホッとしながら立ち上がると、ゆっくりミューリエに歩み寄っていく。
「っ!? アレスッ、危ないッ!」
差し迫ったようなミューリエの叫び声。表情もいつになく険しい。どうしたのだろう?
事態が掴めない僕はポカンとしながら、何気なく周囲をゆっくりと見回した。
直後、僕の眼前には猛スピードで飛行して迫ってくるデビルバットの姿。鋭い牙と真っ赤な口が視界に広がってくる。
あっ――と思った時には遅かった。デビルバットは僕の喉元に噛みつき、食いちぎろうと激しく動く。
地獄のような激しい痛みと何かが注入されているような気持ちの悪い違和感。声を上げようにもそもそも呼吸が出来ない。全身から力が抜けていく。
なん……で……っ?
デビルバットは床に落ちて眠っていたはずなのに。もしかしたら眠った振りをしていたのか、あるいは僕が目を離した隙に起きたのか。
程なく僕の視界は真っ暗になり、ミューリエの声も遠くなっていった……。
BAD END 4-2
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