子猫と俺
バブみ道日丿宮組
お題:猫の虫 制限時間:15分
子猫と俺
姉貴が拾ってきたにも関わらず、
「お前のご主人様は俺じゃないんだぞ?」
子猫は俺の部屋の主のようにくつろぐ。
今は俺の膝の上でにゃーにゃーと気持ちいいのか鳴いてる。
「まぁ邪魔しないでくれるならいいけど……」
MMORPGはタッチさえできれば操作は大丈夫。子猫がキーボードにジャンプとかしてこない限りは、とか思ってるとそうしてくるんだよな。
前はそれで酷い目に遭ったものだな。
ギルメンには猫と言ったものの、こちらとしては言い訳の理由としてなんかパッとしない。スカロプに写真貼ってと言われて、ギルメンに見せるとなぜか人気になった。
『お前の操作がおかしくなってもいいから、子猫を乱暴にするなよ』
『むしろ、ウェブカメラスイッチつけて猫ちゃん見せて』
『猫の声が聞きたいな。部屋連れてきて』
とボス狩り攻略というのに音声チャットでも猫の話題ばかりだ。
「ん……? どうかしたか」
かりかりと俺のお腹をぽんぽんとかいてくるので時計をよく見てみると、
「餌の時間か」
熱中しすぎてまた夕飯の時間を軽くオーバーしてた。
「休憩がてら、一緒に御飯にするか」
言葉が通じたのかにゃーと返事をしてジャンプし、先に廊下へと素通りしていった。
「本当の主が俺になりつつあるな」
とはいえ、姉貴は仕事上昼ぐらいから夜遅くの仕事だからこの時間はどうしても俺が面倒を見なきゃいけなくなる。
養ってもらってる以上、恩は返さないとな。ネトゲで稼いだお金もかなりあるが、それでも普通に姉貴の給料には勝てない。
エリートには俺はなれなかったからな。
「……」
親父もお袋もそんな俺に愛想をつかして家を出てったのかもしれない。
期待に答える義務はないと俺は思うが、あの二人は機械のように思ってたのかもしれない。過去を振り返ってると、お腹の虫が鳴いた。
本格的に何か食べなきゃなと、立ち上がって廊下へ出ると子猫は律儀に待ってた。
「なんだ先に行かなかったのか?」
しょうがないなと抱えると嬉しそうにもぞもぞと腕の中で動いた。
案外外に出れなくなった俺のために姉貴はこの子猫を家に連れてきてくれたのかもしれない。
たった一匹の家族。友だちとして。
へんな資格も取ったし、勉強もしたからな。
今更になって、エリートとは言わないけどきちんとしてきてももう遅いよな。
「……あぁすまんな、ご飯だったな」
手をぺろりと何かを感じ取ってくれたのか子猫が舐めてくれた。
餌をあげ、俺がご飯を食べるとまた子猫は俺の部屋に来た。
そして姉貴が帰ってくるのを待つように俺と一緒にベッドで眠りについた。
変わらない日常。
でも、いつかは俺もこの子猫が成長するように変わっていかなきゃいけない。わかってるけど、無視することはできないんだ。
子猫と俺 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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