書籍化記念おまけSS

エリシアに手紙、ふたたび(メタ要素および宣伝マシマシ)


「エリシア様。こちら、また謎の言語のお手紙が……」


 サランレッド公爵家の離れ。


 私、エリシア・サランレッドは大切な侍女のマルゲから、懐かしい言語――日本語が書かれた封筒を受け取った。


 というか、いまさらだけど、どうやって届いているんだろう?


 いやまあ、メタ短編だから、そんなこと考えてもしょうがないんだけど!


 ともあれ、「エリシア様へ」と日本語で書かれた封筒をどきどきしながら開け、中の手紙を読み――。


「マ、マルゲマルゲマルゲ――っ!」


 私は読み終わるやいなや、乱暴に扉を開け放ち、階下にいるマルゲへと駆け出した。


「マルゲマルゲっ! 大変なの――っ!」


「お嬢様っ!? どうなさったんですか!?」


 台所に駆け込んだ私に、夕食の支度をしていたマルゲが手にしていた包丁をまな板に置き、目を丸くして振り返る。


 そのマルゲに、私は興奮のままに飛びついた。


「お嬢様っ!? 危のうございますっ!」


 あまりの勢いにたたらを踏んだマルゲが、それでもしっかと抱きとめてくれる。


「出た……っ! ついに出たのよ、マルゲ……っ!」


「いったい、何が出たのでございますか? 確かにお嬢様は王太子殿下のお話をされるたびに『尊すぎて魂が出ちゃう』とか『心臓が喉から飛び出しちゃう』とおっしゃっておりますが……」


 私の興奮っぷりに若干引きつつも、マルゲが冷静に問いかける。


 さすがマルゲ! 私の推し語りで日々鍛きたえられてるだけはあるわねっ! こんな時でも冷静だなんて!


 が、いまの私はマルゲを褒めるどころじゃない。


「こ、今度こそ出ちゃうかもしれないわ……っ!」


「お嬢様っ!? まさか、本当に出たわけではございませんよね!?」


 がしっ! と私の両肩を掴んで引きはがしたマルゲが、不安もあらわに顔を覗き込む。


「以前、謎の言語の手紙が届いた際のお嬢様の反応も凄まじかったですが……っ! 今度は、いったい何が書かれていたのです!?」


 マルゲの問いに、私は興奮が抑えきれずに震える声で叫ぶ。


「出たのよ、マルゲ! 『転生聖女は推し活がしたい!』の書影と特典情報の一部が……っ!」



 『転生聖女は推し活がしたい! 虐げられ令嬢ですが推しの王子様から溺愛されています!?』は角川ビーンズ文庫様から2023年12月1日発売ですっ!

 WEB版から7割近く大幅修正しておりますので、書籍版ならではの魅力をどうぞお楽しみくださいませ~っ!



 ん……? 何かいま、天からの声が聞こえたような気が……?

 って、それどころじゃないっ!


「第21回角川ビーンズ小説大賞受賞作刊行記念キャンペーン実施決定! って公式ホームページに掲載されたのよっ!」


https://beans.kadokawa.co.jp/blog/infomation/entry-4029.html

 

「その内容がなんと……っ!」


 どきどきと心臓が高鳴って、うまく声が出てこない。

 私は大きく息を吸い込むと、あらん限りの声で叫ぶ。


「TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』シャル・フェン・シャル役の水中雅章様が、レイシェルト様の台詞に声を当ててくださった特典ボイスが聞けるのよ――っ! しかも、それだけじゃないの! 第21回角川ビーンズ小説大賞受賞作は『転生聖女は推し活がしたい!』を含めて3作あるから、それぞれでテーマの違う特典ボイスが聞けるのっ!」


 作者からの手紙によると、公式ホームページには「12月1日に刊行される受賞作を購入し、帯の二次元コードを読み込むと、購入書籍により異なるシチュエーションの心に響くヒーローのセリフ×3作品をWEBにてお楽しみいただけます♪」と書かれているそうだ。


安崎依代様の『押しかけ執事と無言姫 忠誠の始まりは裏切りから』では「落ち込んだ貴女に喝! ヒーローの励ましボイス3選!」が、


英 志雨様の『身代わり花嫁は命を賭して 主君に捧ぐ忍びの花』では「ひたむきな献身に胸キュン! 貴女を守るヒーローのボイス3選!」が、


そして『転生聖女は推し活がしたい! 虐げられ令嬢ですが推しの王子様から溺愛されています!?』では、「思わず貴女もドキドキ! ヒーローの甘々ボイス3選!」が聞けるらしい。


 しかも、電子書籍でも特典ボイスが聞けるので、その点も安心っ!


「つまり、レイシェルト様の美麗なお声が三種類……っ! これはもう、三冊とも買うしかないでしょ!? 作者からの手紙が届くんだもの! 時空の壁を越えても何としても手に入れてみせるわ……っ!」


 ぐっ! と拳を握りしめ、私は決意を固める。


「あの、お嬢様……。わたくしにはよく理解できない単語が怒涛どとうの勢いで語られていたのですが……。その『とくてんぼいす』なるものは、それほどまでして手に入れなければならないものなんですか……?」


 いまひとつよくわからない様子で首をかしげるマルゲに、力強く頷く。


「もちろんよっ! 作者は作者特権ですでに聞けたらしいけれど……。手紙に書いてたものっ!」


「……なんて書かれていたんですか?」


 律儀に尋ねてくれたマルゲに、真顔で答える。


「『イケボ過ぎて耳が融ける』って! 『特に、『転生聖女は推し活がしたい!』の甘々ボイスのレイシェルト様は本気でヤバイ! エンドレスで聞けちゃう』って……っ!」


 ※作者注

 これはマジです。ほんと破壊力がヤバイですっ!

 このレイシェルト様は、ほんとのほんとに聞いていただきたいです……っ!


「王太子殿下のお声でしたら、お嬢様は会われるたびに聞いてらっしゃるではありませんか」


「それはそれっ! これはこれなのよっ!」


 間髪入れず即答する。

 問答無用の決意を固めている私に、マルゲが諦めたように吐息した。


「王太子殿下のことになると、お嬢様は我を忘れられますからね……」


「さすがよくわかってくれているわね、マルゲ! カバーのレイシェルト様の凛々しい素敵さ……っ! もう見ているだけで融けちゃう……っ!」


https://promo.kadokawa.co.jp/beans/21st-awardbook/


「っ!? これは……っ!? お嬢様だけでなく、まじない師エリのバージョンのお嬢様まで載ってらっしゃるではありませんか……っ!?」


 手紙に同封されていたカバーイラストをマルゲに見せると、マルゲが鋭く息を呑む。


「私? 私のことなんてどうでもいいのよ! それよりもレイシェルト様よ、レイシェルト様っ! ああ……っ! こんな風にレイシェルト様に腰に手を回されて手を握られて、しかも……っ! だ、だめ……っ! 考えただけで心臓が爆発しちゃう……っ!」


「お嬢様っ!? しっかりなさってくださいませっ!」


 胸を押さえてうずくまった私にマルゲが駆け寄り、床に膝をついて顔を覗き込む。


「だ、大丈夫……っ! まだまだ昇天なんてしてられないわっ! だって、特集はこれだけじゃないのよっ!?」


 マルゲを見上げ、くわっ! と目を見開く。


「だって、冒頭チラ見せ漫画では、出逢った時の……。二年前のレイシェルト様のお姿を拝めるのよ⁉ 今のレイシェルト様ももちろん文句なしに! 素敵で凛々しくて、お姿を拝見するだけで尊さにひざまずいて光神アルスデウス様に感謝の祈りを捧げたくなるけれど……っ! 二年前、たったひとときだけ拝見できたレイシェルト様のお姿を何度も見返せるなんて……っ! これはもう奇跡としか言いようがないわっ!」


 告げた瞬間、ぴしゃ――んっ! と雷に撃たれたようにマルゲが硬直する。


「に、二年前のお姿を……っ!?」


「そうなのっ! マルゲもわかってくれた!? この素晴らしさをっ!」


 思わずぎゅっとマルゲの手を握ると、負けないくらいの力で握り返された。


「わかりましたっ、お嬢様……っ! 今のお嬢様ももちろん素敵ですが、二年前のお嬢様もとってもお可愛らしかったですもの……っ! そのお嬢様のお姿をもう一度この目で拝見できるなんて……っ! 本当に素晴らしいですね……っ!」


 ……うん? なんかマルゲの反応が私が予想していたものと違うんだけど……?


 でも、マルゲにも試し読み漫画の素晴らしさがわかったようで何よりだわっ!


「カバーイラストも試し読み漫画も、二部入ってたのよ。マルゲにも、って」


 これはきっと、マルゲにもレイシェルト様の素晴らしさを布教しなさいってことよねっ!?


 でも、マルゲってばなかなか手強いんだよね……。


「わたくしにも……っ!? これは作者に礼を言わなくてはいけませんね……っ!」


 マルゲが珍しく喜色満面になる。いつも沈着冷静なマルゲが、これほど手放しで喜んでくれるのは珍しい。


 ついにマルゲもレイシェルト様の素晴らしさに気づいてくれた……っ!?


「お嬢様っ! 夕食の支度はまだですが、先に見せていただいてもよろしいでしょうか!?」


「もちろんよっ! 一緒にレイシェルト様の尊さにひたりましょう!」


「いえ、わたくしはそれより……」


 私から試し読み漫画のコピーを手渡されたマルゲが「こ、これは素晴らしすぎます……っ!」と絶句する。


 ……結局、私もマルゲもカバーイラストと試し読み漫画の素晴らしさに夕食も忘れて身悶みもだえ続け、その日の夕食はかなり遅くなったのだった……。


                                おわり


~作者より~

 

 ノリと勢いのメタ短編をお読みいただき、誠にありがとうございました~!


 エリシアとマルゲが騒いでいるとおり、角川ビーンズ文庫様の公式ホームページで12月1日発売、『転生聖女は推し活がしたい! 虐げられ令嬢ですが推しの王子様から溺愛されています!?』の情報が公表されました~!ヾ(*´∀`*)ノ


 もう、びっくりするほどたくさんの情報に、作者の私が一番、おろおろしております……っ!(((((; ゚Д゚)))))


 ですが、レイシェルト様の特典ボイスは本当に素晴らしいのでっ!(੭ु。ÒдÓ)੭ु⁾⁾バンバン


  紙書籍でも電子書籍でもどちらでも聞けますので、ぜひぜひ聞いていただきたいです……っ!(*´人`*)

(※特典ボイスの公開は発売後1年間の予定だそうです)


 そして、試し読み漫画を見ていただければわかるかと思いますが、書籍版ではエリシアとレイシェルト様の出逢いから、WEB版よりさらによいものにしようと改稿しております……っ!( *´艸`)


 7割近く改稿して、あれこれ新しいシーンも増えておりますので、お手に取っていただけましたら嬉しいです~!(深々)

(なお、書籍版、電子版の特典の公表はまだなので、そちらは公表され次第お知らせいたします~!)


 また、書籍化記念のカクヨム版おまけSSはもちろんこれだけではありませんっ!


 ジェイスとエリの出会いを書いた「ジェイスとまじない師エリの出会い」とレイシェルトとエリシアの1シーンを書いた「レイシェルトとエリシアのドレス」の2本を発売日直前近くで更新予定ですので、そちらも楽しみにしていただけますと嬉しいです~!(ぺこり)


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