第43話 空野の部屋?



「楓、これはもう言い逃れ出来ないぞ? つまりもうお前と堅石さんは、進んでるところまで進んでるってことだな?」

「違う、説明させて」

「私と空野さんは荒木さんが想像出来ないところまで進んで……」

「堅石さん、ストップ。そして一回黙ってて」

「はい、すいません」


 まさか堅石さんがこんなにも挑発に弱いとは……。


「そ、空野くんと堅石さんが、想像も出来ないところまで、進んで……!」

「東宮さん、違うからね。というか東宮さんは多少の事実を知ってるよね?」


 その後、真也に僕と堅石さんの関係を話した。

 つまりは隣の部屋に住んでいて、僕が彼女の部屋の家事をしていることを。


 あまり他人に言いたくないことだが、真也なら誰にも言わないでくれるだろう。


「マジかよ……え、じゃあもう親公認で同棲してるのか?」

「ど、同棲はしてないよ。ただ隣の部屋に住んでて、僕が家事をしているだけで……」

「いや、寝る時に自分の部屋に戻るだけなら、ほとんど家では一緒に過ごしてるってことだろ?」

「うっ、ま、まあそうだけど……」

「同棲じゃん」

「ち、違うから、寝る場所が違うから」


 だけどそれ以外は本当にずっと同じ部屋にいるから、同棲の一歩手前くらいだ。


 そして今、堅石さんに一緒の部屋で寝ようとも誘われてるし……。


 なんかその一線を超えたらもう戻れなくなりそうだから、寝る場所くらいは違う部屋がいい気がするんだよなぁ。


「ほぼ同棲しているから、私の方が空野さんと仲が良い親友ですね」


 無表情ながら、ドヤっている雰囲気がすごい堅石さん。

 そういえば真也に揶揄われたから、堅石さんが対抗していろいろと暴露しちゃったんだった。


「まあ確かに、同棲している人に比べたら負けるかもしれないな」

「私の勝ちですね。このまま空野さんの恋人の座は私がもらいます」

「……ん?」

「えっ?」


 堅石さんの言葉に、真也と東宮さんが目を丸くした。


「楓、やっぱりお前、堅石さんと付き合ってるのか……?」

「いや違う! 違うんだよ!」

「ああ、そうか。確かに今の堅石さんの言葉からすると、まだ付き合ってはないみたいだな」

「それも違う!」


 また堅石さんが暴露してしまった。

 周りがザワザワして、ここにしか聞こえていないのが本当によかった。


「荒木さんも空野さんの恋人を狙っているのですよね?」

「はっ? いや、全く狙ってないけど……?」

「そうなのですか? ですが親友でそこまで仲が良いのなら、恋人になりたいと思うのでは?」

「いや思わねえよ! 俺と楓は男同士だし、そういう意味で好きじゃないから!」

「そ、空野くんと、荒木くんの、カップリング……! い、いいかも……!」


 堅石さんの天然の質問に、真也もさすがにたじろいだ。

 あと東宮さん、君はなんで興奮した様子で僕と真也を交互に見てくるのかな?


「堅石さん、親友っていうのはどこまで仲良くなっても親友止まりだぞ?」

「そうなのですか? ですが私は親友じゃなく、空野さんの恋人になりたいと思っていますが」

「お、おー、結構言うのな、堅石さん。楓、早く答えてやれよ」

「違うんだよ、だから。堅石さんは僕と一緒に寝たいから恋人になりたいって言ってるだけで……」

「はっ? 一緒に寝たい?」

「あっ、しまった……!」

「はい、私は空野さんと早く同じベッドで寝たいので、恋人になりたいのです。親友では一緒に寝れませんから」

「ち、違うんだよ、真也。説明させて」

「……いや、もう早く付き合えよ」


 そんなことを言っていたら、もう昼休みが終わりそうな時間になってしまった。


 説明するには時間が足りない。


「真也、今日部活はない?」

「ああ、今日は休みだ」

「じゃあ今日、放課後にちょっと時間ある? その時に話したいんだけど」

「いいぞ。それなら楓の部屋に行ってみたいんだが。一人暮らしを始めたって言ってたから、遊びに行ったことないから」

「うん、別にいいよ」


 確かに真也は一年生の頃から、何度か実家の方に遊びに来たことがあるけど、今の一人暮らしの部屋には来てない。


 友達が僕の部屋に遊びに来るのは初めてなので、僕もそれは少し楽しみだ。

 ……ん? 僕の部屋に、友達が誰も遊びに来てない?


 そう思った時、肩をちょんちょんと突かれる。


 振り向くと堅石さんが一言。


「私も空野さんの部屋に行きたいです。よろしいですか?」


 そうだ、そういえば僕は堅石さんの部屋に入り浸っているけど、堅石さんは僕の部屋に一度も来ていない。


「僕はいいけど、真也はいい?」

「もちろんいいぞ。堅石さんの話もまだまだ聞きたいしな」

「さっきみたいにあまり揶揄わないでよ?」

「くくっ、どうだろうな」

「心配だなぁ……東宮さんは来る?」

「え、わ、私もいいんですか?」

「うん、もちろん」

「じゃ、じゃあ、私もお邪魔します……!」


 ということで、放課後にみんなが僕の部屋に遊びに来ることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お堅い堅石さんは、僕の前でだけゆるエロい shiryu @nissyhiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ