第40話 堅石さんと東宮さんのデート終わり?
その後、試着した下着を堅石は買った。
東宮も気に入っていたのだが、値段を見てビックリしてやめてしまった。
(ま、まさかあんなに高いなんて……買いたかったけど、今日の遊ぶお金もなくなっちゃうよ……)
ということで二人はランジェリー店を出て、お昼時になったのでご飯を食べる。
ハンバーガーが有名なチェーン店に入ったのだが、堅石はここでも初めての経験をする。
「えっ、堅石さん、ハンバーガー食べたことないの?」
「はい、ありません。面白い形ですね、お肉や野菜が重なっています」
「や、やっぱりお嬢様なんだね……」
「どうやって食べるのですか?」
「これは手で、こうやって……んっ、美味しいよ」
「なるほど、ピザと同様に素手とは。意外と手でそのまま食べる料理は多いようですね」
「うん、まあそうかも……」
「では、いただきます……ん、美味しいです」
(ああ、堅石さんの頬が緩んだ……! そ、それに、頬にソースが、ついた……! ど、どうしよう、取ってあげた方が……!)
最終的に自分で気づいて、自分で拭いた堅石だった。
その後もいろんなところお店を回ったり、カフェに入って二人でただただ駄弁ったりして、とても楽しいデートをしていた。
カフェで話していたら結構時間が経っていたようで、すでにもう日が暮れそうだった。
「も、もうこんな時間か……」
「そうですね。楽しい時間は早く過ぎると言いますが、本当にそう感じました」
「わ、私も! 私も、すごく早かった!」
「同じですね、東宮さん」
「う、うん……!」
堅石はあまり笑みを浮かべないから、東宮は本当に楽しんでくれているか少し不安になっていたところがあった。
だけど堅石もとても楽しかったと言ってくれたので、とても嬉しくなった。
「この後はどうしますか? 私は夕飯は家で食べようと思っていたのですが」
「あっ……そ、そうだよね。空野くんが、家で待ってる、よね?」
「はい、そうです。外食する場合は連絡することになっていますが、どうしますか?」
「う、うーん、どうしようか……」
東宮はとても迷った。
(このまま夕飯も一緒に食べたいけど、堅石さんは空野くんが待つ家に帰りたそうだし……それにずっと荷物も持ってるから、重いと思うし……やっぱりここは残念だけど、別れた方がいいよね?)
そう思って落ち込んだ気持ちを振り払いながら、「帰ろっか」と提案しようとしたが……。
「ん、空野さんからメッセージが……なるほど、東宮さん」
「か、帰ろ……えっ、なに?」
「空野さんが家での夕飯に、『東宮さんもどう?』とメッセージをくれました」
「えっ!? ま、また私がお邪魔していいの?」
「空野さんは大丈夫のようです。もちろん私も、東宮さんとご一緒に食事が出来れば、と思っています」
「っ……! あ、ありがとう! よければ、ご一緒させてください!」
「わかりました。では空野さんにそうお伝えします」
空野のお陰でまだ堅石とは別れずに済みそうだ。
(空野くん、本当にいい人……! 堅石さんの次に、好きです……!)
テンションが上がってそう思ってから、冷静になってすぐに顔が赤くなる東宮だった。
二人が堅石の部屋に着いた頃には、すでにもう日は暮れて暗くなっていた。
堅石が鍵を使ってドアを開けると、空野が迎えてくれた。
「おかえりなさい、堅石さん。東宮さんも、いらっしゃい」
「お、お邪魔します……!」
(ここは堅石さんの部屋のはずなんだけど、完全に空野くんがお出迎えするって感じがなんか、不思議だけど合ってるというか……)
そんなことを思いながら上がろうとすると、堅石が固まっていることに気づく。
「堅石さん? どうしたの?」
「……空野さんに出迎えていただいたのは、初めてな気がします」
「えっ? あー……そうかも。いつも僕の方が後に家に帰ってくることが多かったからね」
「……空野さんに出迎えられると、とても温かな気持ちになりました」
「そ、そっか、よかったよ」
「はい、ただいま帰りました、空野さん」
「うん、おかえりなさい、堅石さん」
(……私、いるよー? 二人だけの空気をすぐに作らないでー?)
そんなことを心の中で思っていた東宮だった。
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