第39話 堅石さんとランジェリー?



 東宮は高校二年生にしては身長は少し低いが胸も少し大きく、細身なのでスタイルはいいが……堅石には遠く及ばないだろう。


 何も纏っていないからこそわかるが、もう芸術ではないかというほど整っていた。

 胸はとても大きく、だけど腰の辺りまでは緩やかな曲線を描き細くなっていき、お尻はまた肉付きがいい。


 ただ全く下品な雰囲気な雰囲気はなく、だけど艶やかな色気がある。


 男性が見たら、誰でも見惚れて動けなくなってしまうだろう。


(そ、空野くんは、堅石さんのこの身体を、ほぼ見てるんだよね……!)


 女性の東宮でも美しすぎて、色気がありすぎてドキドキするくらいだ。


 それを男性、しかも高校生の空野が見たら、もう本当に大変なことだろう。


「採寸が済みましたが……お客様、すごいですね。こんなスリーサイズ見たことないというか、モデルを超えてるというか……」

「褒めていただいているのですよね?」

「はい、もちろんです。イラついてもいますが」

「ありがとうござい……イラつく?」

「失礼しました、なんでもありません」


 先程から妬みが漏れてる女性店員がいるが、東宮は仕方ないだろうと思った。


 その後、いくつか下着を選んで着ていく。


 東宮のサイズはほとんどの下着があったのだが、堅石はサイズが合わずに選べる下着が少なかった。


「申し訳ありません、お客様」

「いえ、私の身体が大きすぎるというのが原因なのであれば、しょうがないです」


 ということで好きなものを選んで試着するということになったが、堅石も東宮もこれだけ数があると迷うし、どういった基準で選べばいいか迷った。


「私としては機能性がいいのであれば、色やデザインはどれでもいいのですが」

「正直、私もそうかなぁ……」

「なっ!? お客様! わかっておりませんね!」

「えっ!?」


 さっきまで堅石に悪態をついていた店員の反応に、東宮がビクッとした。


「確かに機能性は大事ですが機能性なんて二の次! 大事なのは見た目です!」

「そうなのですか? ですが下着は外着とは違い、見えないではないですか」

「見えなくても着ているだけでテンションが上がることもあります! それに……いずれ、見せる相手が出来た時、綺麗で可愛い自分を見せたくありませんか!?」

「……好きな人に下着姿を見せるのですか?」

「もちろん! 盛り上がってきた時に見せて、可愛かったら男性は喜んでくれるですよ! 逆に適当なのを着てたら……うぅ」

「すいません、お客様。彼女は最近、恋人にフラれてしまったようなのです」

「は、はぁ、私は大丈夫ですが……」

「私も気にしておりません」

「うぅ……私もお客様みたいなスタイルだったら……」


 さっきから堅石を妬みの目で見てたのは、そういう理由だったようだ。


 落ち込んでしまった店員さんが脱落し、もう一人の店員さんが接客してくれる。


「さっきの子が言っていたのは過激でしたが、そこまで間違ったことは言っておりません。中に可愛い、綺麗なものを着るだけで高揚感はありますし、男性に見せる時にもいい下着をつけていて損はありません」

「わ、私はその、男性に見せる予定はこれっぽっちもないですが……」

「すいません、お客様方は高校生でしたね。少し踏み込んだ話をしすぎてしまいました」

「い、いえ! 大丈夫です!」


 東宮がそう答えていたのだが、堅石が少し考えた末に話し出す。


「確かに外着を着た時は高揚しましたし、下着でもあるのかもしれませんね」

「はい、そうですね」

「私は友達に……親友の空野さんに下着を見せることがあるので、そういった理由でも買っておいて損はなさそうです」

「……ん? えっと、その親友というのは、男性でしょうか?」

「はい、男性です」

「あ、そ、そうなんですね……そういう関係性の男性が、いらっしゃるのですね……」

「そういう関係性というのはわかりませんが、親友です」

「そうですか……今時の高校生は進んでるんだなぁ」


 店員が最後にボソッと言った言葉は堅石には届いていなかったが、東宮には届いていた。


(た、多分店員さん、親友の空野くんっていうのが、そっちの意味でのフレンドだと思ってるよね……ひ、否定した方がいいのかな?)


 そう思った東宮だが、東宮自身も堅石と空野の関係がよくわかってないから、否定することは出来なかった。


(も、もしかしたら、本当にそういうお友達だったり……! ふ、二人が、そういう行為を、してるなんて……!)


 頭の中で妄想してしまい、顔が真っ赤になってしまう。


「東宮さん? 大丈夫ですか?」

「は、はい! だ、大丈夫です……ちょっと、肌色を想像してただけで……!」

「よくわかりませんが、私はこちらの下着のセットを試着したいと思いますが、東宮さんはどうしますか?」

「じゃ、じゃあ私も、これを試着しようかな……」

「かしこまりました。では試着室へどうぞ」


 二人はそれぞれ別れ、下着を着る。


 最初に来てカーテンを開けたのは、東宮だった。

 少し大人しめのデザインで、青色の下着であった。


「お似合いです、お客様」

「あ、ありがとうございます……」


 恥ずかしくて顔から火が出そうだったが、確かにオシャレで鏡を見るだけでテンションが上がる。


「着ました、どうでしょう?」


 そう言って隣の試着室から堅石さんが出てきた。


 その瞬間、東宮も店員も息を呑んだ。


 漆黒の髪に合わせた黒色の下着。

 こちらも装飾は派手ではないが、上も下も少しだけ透けるようになっていた。


 白くて綺麗な肌と漆黒で大人っぽい下着がとても合っていて、妖艶な雰囲気を漂わせていた。


「……どうですか? 似合ってませんか?」


 堅石が返事がなかった二人を見て、もう一度聞いた。


 ハッとした東宮と店員は、慌てて感想を言う。


「と、とてもお似合いです、お客様」

「う、うん! 堅石さん、すごく似合ってる! その、とても、えっちで……!」

「ありがとうございます。東宮さんもとても似合っています」

「あ、ありがとう……」


 お世辞を言っていないとわかるが、堅石の下着姿を見た後じゃ素直に喜べない東宮だった。


 だけど……。


(堅石さんの下着姿……! はぁ、眼福すぎる……! さっきは完全に裸姿も見ちゃったし、私は今日幸せすぎて死ぬのかな……!?)


 と、そんなことを思っていたので、東宮としては何も問題はなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る