第15話 堅石さんとメイドからの電話


 その後、食事の片付けをしてからソファでくつろぎながら話す。


「明日、僕はこの部屋に来ないほうがいいんだよね?」

「はい、薫さんには心配させないために、私一人でしっかり生活出来ていると伝えたいと思います」

「……そっか、うん、頑張ってね」


 ハンバーグが作れるようになったけど、それ以外は卵かけご飯とインスタント味噌汁しか作れないから、取り繕うには難しいと思うんだけど……。


 僕がそう思っていたら、堅石さんのスマホが震えた。


 どうやら電話のようで、チラッと表示されてる名前が見えてしまったが、堅石さんの父親からかかってきたようだ。


 堅石さんは「失礼します」と僕に言ってから、電話に出た。


「もしもし、お父さん。どうかしま……薫さん?」


 薫さん? あれ、メイドの人だよね?

 表示されていた名前は確かに「お父さん」だったはずだし、堅石さんもそのつもりで電話に出ていた。


「なぜ薫さんがお父さんの電話に?」

『ゆき様が心配だからですよ!』


 おっと、あちらの声が大きいからか、僕の方にまで声が聞こえてきた。


「私は大丈夫です。しっかり一人暮らしをしています」

『嘘です! 部屋の片付けも出来ないゆき様が、一人暮らしなんて出来るわけありません!』

「……出来ます」


 堅石さんが少し躊躇って、一瞬間があってから話した。


『ゆき様は嘘がお下手なので、すぐにわかりますから』


 もしかして堅石さんは嘘をつく時に、少し躊躇って喋るのかな?

 それはわかりやすいかも。


『今も家の中はぐちゃぐちゃなのではないでしょうか?』

「いえ、とても綺麗です」

『……あれ、嘘じゃない? なのに片付けは出来ていないのですよね?』

「……出来ています」


 うん、やっぱり嘘をつく時は躊躇ってしまい、間が空いてしまうようだ。


『もしかして同時に隣の部屋へ引っ越した、同い年の男性に片づけてもらっているのですか?』


 えっ、もうすでに僕のことも知られてるの?


「……いえ、その」

『そうなんですね!? なぜご主人はよくわからない男性をゆき様のお世話係にさせたのか、理解不能です……!』


 僕もそれについてはよくわかってないんだけど、一応訂正しておくけど、別に「お世話係」として任命されたわけじゃないと思います。


「よくわからない男性ではありません、空野楓さんです」


 いや、堅石さん、メイドの人は僕の名前を聞きたいわけじゃないと思うよ。


『名前なんてどうでもいいんですよ! ゆき様、その男に何かされてませんか?』

「何か、とは?」

『ゆき様みたいな綺麗で可愛い女の子と二人きりになったら、男は狼になって襲ってくるんですよ!』


 なんか言い方とかが古い気がするけど、襲ってないので大丈夫です。


「大丈夫です。襲うというのは具体的にどういうものかわかりませんが、特に空野さんから襲われてはいません」

『本当ですか? 嘘はついていないようですが、何か嫌なこととかされていませんか? 例えば裸を見られたとか、後ろから抱きつかれたとか』

「それはどちらもあります」

「ちょっ!?」


 思わず僕は声を出してしまった。


 いや、その言い方は絶対に語弊がある!


 確かに堅石さんの裸は見たけどしっかり大事なところは隠してたし、というか堅石さんの方から見せてきたでしょ!?


 僕は一切見ようとしてない!


 後ろから抱きつかれたってのも、堅石さんが「あすなろ抱き」をされたいって言ったからしただけで……!


『……はっ? ゆき様、それは本当でしょうか?』

「はい、裸を見られたことも、後ろから抱きつかれたこともあります。ですが薫さん、安心してください」

『……何をですか?』


「裸は私から見せましたし、空野さんは優しく抱いてくれました」


「堅石さん!? ちょっとその言い方はやめようか!?」


 その言い方はもう確実にヤバい方で勘違いをされるから!


『……ゆき様、今そこにクズはいるのでしょうか?』

「クズ? クズはいらっしゃいません、空野さんはおります」

『ではその空野さんに代わっていただけますか』

「かしこまりました。空野さん、薫さんが話をしたいとのことです」

「……うん、わかった」


 電話を代わるのは本当に嫌だったけど、これは僕が出るしかないのだろう。

 スマホを貸してもらい、耳に当てて話す。


「お電話代わりました、空野です」

『薫です。では、クズ』

「……はい」

『――明日、覚悟しておけよ』


 ブチっ……ツー、ツー……。


 電話が、切れた。


「……堅石さん、スマホ返すね」

「はい、すぐに切れたようですが、何を話したのでしょうか?」

「……殺害予告かな?」

「短い間にお二人に何があったのでしょうか?」

「それは堅石さんの胸に聞いて欲しいな」


 堅石さんは前のように胸に手を当てて考えたようだが、何もわからなかったようだ。


 ……僕は明日、生きていられるかな?




――――――――


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