承
雨の日はどうしてこおも気分が落ち込むんやろか。
私は雨の日だって嫌いじゃないよ!
そりゃ髪の毛もうねるし、服は濡れるけどさあ。
そうだ、雨の日の海って行ったことある?
なんか晴れの日の海より静かなの。
今度一緒に行こうよ。きっと雨だって嫌いじゃなくなるよ。
そおなんか。行ってみたいなあ。
彼の靴は穴が空いていて、雨が嫌いなのもなんとなく理解ができた。
都内の何処かの美術展に一人で遊びに行った時に私から声をかけた。
彼氏と別れてすぐだった事もあり半ばやけくそになっていたのもあるが、雨の絵をぼーっと見ている彼に「この絵、綺麗ですよね」なんて顔も見ずに変な言い方をしたのは今でも覚えている。
「まー」
顔を見た。
眼鏡の奥の二重の瞳は少しだけ暖かい。
あまりにぶっきらぼうに返事されたので後悔をして
でも話をかけてしまったが故に、そのまま立ち去る訳にもいかず絵について何か事細かに説明をしていた。
彼は何も言わずに聞いていたと思う。
「あの、来月の1週目、先生の好意で私の絵、一つだけですけど、学校近くのショッピングモールで展示されるんです。良かったら見に来てください!」
困惑した空気が伝わってきた。
勢いや流れだといっても流石にやりすぎたか、、。
彼は恐らく5秒ほど沈黙をした後気が向いたらと、またぶっきらぼうに答えた。
来てくれるだろうか、いや、正直どっちでもよかった。
勢いで声をかけてしまっただけだ。
そう言い聞かせる。
でなきゃなんとも恥ずかしい事をしてしまった気がして、美術展の照明が薄暗くて良かったと何度も思った。
結果的に彼は美希の絵が展示されている展示場に足を運んでくれていた。確か水曜日の放課後。
自分の絵を見に放課後、展示場に何となく行った時、彼は同じ服で、私の絵をぼーっと見つめていた。
彼の靴には穴が空いていた。
睡蓮 伏見 明 @fushimiaki
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