雨は降る

黒木裕一

雨は降る

人混みに体をまかせ、標識のない道をひとり歩いていく

はじめは しょっぱいポップコーンのように軽い気持ちで

だんだん あまいはちみつをまとったように重い足取りで


雨が降り はちみつを洗い流す

人混みを抜け 意図せず晴れやかな笑顔がこぼれた



鍵の壊れた自転車に乗り、標識も無視してとばしていく

はじめは 空気がパンパンにつまった風船のように軽い気持ちで

だんだん 水にぬれたカーディガンをまとったように重いペダルで


雨が降り カーディガンを濡らし続ける

壊れた鍵をちらりと見て 意図せずしめやかなため息がこぼれた

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雨は降る 黒木裕一 @yuuichi_write

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