エピローグ
サトルは日本宇宙機構の嘱託職員となり、多忙な日々を過ごしている。
今日も机に並べた三台のコンピューター端末を次々と操作し、富永から発注を受けた仕事を着々とこなしていた。
新たに組み上げた数式にデータを送り込み、算出された数値を元に様々なシチュエーションを想定し、別の端末に接続されたAIに問いを発していくのだ。
育成中のAIから返される回答はまだまだぎこちない。時には反応がないこともある。そういう場合はデータを少しだけ操作し、想定問のレベルを下げる。一日中、この作業の繰り返し。
単調な時間が静かに流れていく。
サトルは疲れた目を休めるために、窓の外に広がる白く霞んだ春の空を見上げた。
そして、空の奥、天空の彼方にある世界を思う。
ふと背後に気配を感じ、振り向いた。
そこにはもう一組の机と椅子、机の上には電源の落とされたコンピューターの端末があるだけだった。
――サトルさん、元気出していきましょう。
もう枯れてしまったと思っていた涙が一筋、サトルの頬を伝って流れた。
明日、新しい生活支援型ロボットが届くことになっている。
了
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