流星群との衝突により制御不能となった日本の宇宙ステーションが地上に落下する。その落下予測地点は人口三百万人の大都市。残された時間はわずか。さらに続発する数々のアクシデント。この絶望的な状況を脱する方策はあるのか。
実にベタな設定である。ゆえに、おそらく最後は無事に解決できるのだろうという想像がつく。
だが宇宙ステーションは落ちてしまうのだ。
「おいおい、ここでネタバレを書いてしまってもいいのか」と思うかもしれない。
問題ないと断言しよう。
この作品の肝は、危機的状況に立ち向かう人々の人間ドラマの部分にあるからだ。
数多くの登場人物たちがそれぞれの立場でこの困難に立ち向かう姿は、熱く、実に頼もしい。個人的には富永が良い。
それでも最終的な事態打開のためには、どうしても一人の犠牲が必要となり、それを誰が担うのかという究極の選択が迫られる。
この難題に対して作者が用意した解答は予想外のもので、でもそれしかないと納得させられ、実に切ない結末を迎える。
そして読後にやって来るのは、澄み渡る空を見上げたときのような感動と一本の映画を観終わったような深い満足感。
万人に自信を持っておすすめする。