第56話 真実の愛

「で、レイモンド。時々言っていたキュンて何?」

「ああ、あれはお茶会で君が『私をキュンとさせる言葉を100個言ってくれたら結婚を考えてあげる』って言ったんだ」

「キュンを100個も!」

 小さい時の私、何考えていたのよ。


「俺だって、100個もだなんて無理だと思ったよ。それにその時はキュンがなんだか知らなかったし」

「まさか、さっきの数字はカウントダウンだったの?」

「そうだ。独断と偏見で君が俺にキュンした回数を数えていた」

 レイモンドが真面目な顔で説明するのを見て笑いが込み上げてくる。

 そんな小さい時の約束を間に受けて、実行していたなんていくらなんでも……。

「拗らせすぎ」


「うん、アスライにも言われた」

「でも、分かったわ。レイモンドは純粋な人だって。そして私を真剣に愛してくれている」

「そうだ。俺は君を愛している」

 チュッと唇にキスをされ、私はため息をついた。


「今のキュンはいくつって数えたの?」

「ああ、キスと愛してるで2個だ」

「違うわ。愛してるの言葉でキュンは10個はあったわね」

 本当はキュン100個あげてもいいくらいだったけど、それは秘密にしておこう。


「勿論、愛しているって言えばいいわけじゃないのよ。こう言うのは気持ちが大事なんだから」

 忘れないで念を押しておかないと。


「それくらいは分かってる。俺の一途さを分かってないのは君の方だぞ」

 そう言ってレイモンドは私を立たせると、自分は膝をつく。


「アンジェラ愛してる。俺と結婚しよう。一生そばにいて笑っていて欲しい」

「はい。レイモンド、私もあなたを愛してる」

 私の返事にレイモンドはとろけるような笑顔をくれ、いきなりお姫様抱っこしながらくるくると周りだす。


 それから、しばらく庭園を二人で散歩した。


「あ、もう一つアンジェラには伝えておかないとな。どっちみち初夜にはバレるし」

 サラリとレイモンドがとんでもないことを口にする。

 初夜って、今度はいったいなんなの?


 王族の変なしきたりととか?

 初夜のシーツを回収するとかなら聞いたことあるけど。

 変なことを考えていると、レイモンドはいきなり上着を脱ぎシャツのボタンを外し始めた。


「レイモンド!」

「ちょっと、これを持っていて」

 あたふたする私にレイモンドは自分の上着を差し出す。

 こんなところでどうして脱ぐの?


「アンジェラ、目を開けないと見えないぞ」

 そんなこと言ったって、まだ結婚前だし。


「ほら」と促されて、私はそっと目を開けた。


「紋章が……金色になってる」

「ああ、王子様のキスっていうのは本当の話だった……眠っているアンジェラにキスした時、急に胸がズキンとしたんだ。その時は気づかなかったけど部屋に戻ると紋章が金色になっていた」

 すごい。

 金色に変わった紋章を見られるなんて。

 思わず手を伸ばして、ハッとする。


 なんてはしたないことを……。

 いや、すでに酔っ払ってすりすりしてるんだけど、ここは王宮だ。


「触ってもいいぞ。君のものだ」

 深い意味はないんだろうけど、なんだかいやらしい。


「ただ、触られたら今度は我慢できないかも」

「え?」

「この前は嫌われたくない一心で奇跡的に我慢できた。あの時の俺を褒めてやりたいくらいだ」


 恥ずかしさで固まってしまった私に、レイモンドは顔を近づけてきた。

 キスされる?

 と思い目を閉じるが一向に唇は触れない。


「アンジェラ。君のおかげで真実の愛を手にいれられたんだ」

 パッと目を開けた瞬間、レイモンドは私にチュッと軽くキスをした。


「もう離してやれないから覚悟しろ」




 おわり





 ✳︎最後まで読んでいただきありがとう。

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 コートニーとアスライ。ララとアレスの恋の行くへもいつか書きたいと思っています。


 次何読もうとお探しの方。

「悪役令嬢はもう一度恋をする〜ちょっと待て! 次こそはご褒美転生じゃなかったの?」

 https://kakuyomu.jp/works/16816700429625555196こちらももう少しで完結です。


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【完結】呪われアンジェラは愛のない政略結婚を希望します。 彩理 @Tukimiusagi

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