第2話 「あなたに褒められたくて」………後編
もう一つ面白い話。
健さんに好きな女優さんが居て、実名は出てこないのだが、彼女が海外旅行から帰って来てお土産を渡したらしい。
ウサギか何か忘れたが、キーホルダーに毛の小さな尻尾のようなものが付いた奴である。おそらく何人かのお友達にまとめ買いをしたものだろうと想像できる。
バレンタインで言えば義理チョコである。健さんはそれを肌身離さず大事に持っていて、そのうちこのままでは毛が汚れるということで、この尻尾をそっくりおおう革製のカバーを特注で作らせたという。
えっ、いくらするの?と聞きたいが、そしていっそう大切にしたのである。
とても驚いた。
中学生と変わらない。銀幕の中やTVで寡黙にする健さん、みんなのイメージを壊さないようにと努めている姿とのあまりの落差に驚くと同時にすっかり親しみを覚えた。
役者の道には厳しいが、心根はそんなに我々と違うものではないとそう思った。だが仕事に向かう姿勢は、ストイックで厳しさがにじみ出ている。僕は、その両面に惹かれるのである。
で、このウサギの尻尾はどうなったかというと、バッグか何かに付けていて、鎖といっしょに無くなったらしい。
ヤレヤレである。男性の恋愛事情というのは、こうした滑稽さがあるように思う。
こういうのって女性にはわからないだろうなと思う。もし渡した女性がこのエッセイを手に取って読んだらわかる筈だと思うかもしれないが、きっと読まないと思うし、万が一読んだとしても気づかないと思う。
お母さんは本当は良くわかっていたと思う。
でもあのお母さんならきっとわかると思う、天然だから。
そんな素晴らしい母親ではなかったのではないだろうか。
海の見える高台にお母さんの為に家を作ってあげたという。しかしお母さんは一度も行ってくれなかったという。そういう母親だったのだ。
なぜこんな些末な文章を書いているのか。
実は考えていることがある。一つは文章修業の為。
もう一つは、何人か共感して貰える人に読んで貰いたい為である。5人でも10人でも良い、僕と同じように感じて貰える人に読んで貰いたいとあつかましく思っているのだ。
そんな新しい楽しみを見つけたのである。
「あなたに褒められたくて」………高倉健さんは、カッコいいだけでは無いですよ! Ochi Koji @vietnam
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます