部屋の灯り

 そうして家に帰ると……

「まさか……!」

 部屋の灯りがついてて、ギョッとなる。はやる気持ちを抑えながらやっぱりゆっくり歩いて玄関を開けようとするが、鍵がかかってる。

「くそ…っ! やっぱりか……」

 置いてある予備の鍵は普通なら見付けられないところに隠してあるはずだった。いや、警察の家宅捜索ばりに徹底的にやりゃ見付けられるかもだが、普通ならそこに行きつくまでにも何日もかかりそうなところだ。なのに鍵がかかってるってことは、中からかけたってことだ。しかも、人の気配がある。

「お前、何のつもりだ!?」

 鍵を開けて玄関を開け、音量は抑えながらも俺はそう声をかけた。が、キッチンに立っていたのは、尻丸出しの大虎。厳密には、

 <裸エプロン>

 ってヤツだ。

「あ、おかえり。ちょうど晩ゴハンできたとこだよ。ハンバーグ。金なかったからやっすい合い挽きミンチだけどさ」

 とか、まるで旦那の帰りを待ってた新妻みたいに言いやがる。

「一晩泊まったら出てくって言ってただろ!? なんでまだいやがんだ!?」

「は? 誰がそんなこと言ったよ。ウチは一晩だけとか言ってねえよ」

 出来立てのハンバーグをフライパンに乗せたまま大虎は、割り箸を鍋敷きみたいに使って炬燵の上にフライパンを置いた。

「てか、ここ、食器もねえんだな。汁椀が茶碗代わりかよ。炊飯器しか使ってなさそうだし、フライパンはほとんど新品みたいなだったし、マジでインスタントとレトルトばっかだったんだな」

 とか言ってきやがる。

「まだ引っ越して四日目なんだよ! 落ち着くまでは別にいいだろ!」

「あ、そうなんだ。そりゃメンドイよな。でも」

 言いながら大虎は、炬燵の上に置いてあったレシートみたいなものを手に取ってひらひらさせながら、

「二千万以上も貯金あんだったらもうちょっといいとこに住めばいいのにさ。そんでメイド雇うとかすりゃいいじゃん。まあでも、手取り二十二万じゃそりゃ難しいか」

 さらにもう一枚、封筒みたいなのを手に取ってひらひらさせて言う。

 銀行のATMの明細と給料明細だった。

「てめっ! そんなもん……!」

 焦った俺に、大虎は、

「ダメだよ~、オッサン。ATMの明細に預金残高なんかいれちゃ~。今は残高書かないようにもできるんじゃないの~?」

 ニヤニヤ笑みを浮かべながら口にした。って、そう言えばATMの画面でそんな表示が出てたな。何となく預金残高確認したかったから印字したが、なるほど他人に見られるとアレだから選択式になったのか……!


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