牧島金剛
何とかギリギリ会社には間に合ったが、まったく、朝っぱなから鬱陶しいことになったぜ。
「珍しいな、コグマがこんなギリギリなんてよ」
そう声をかけてきたのは同期の
「ああ、厄介なのに絡まれてなあ……ツイてない……」
「厄介なの?」
「パパ活女子高生なんだけどな。相手にすっぽかされたからって俺の部屋に転がり込んできた」
「マジか? そんなことってあんだな」
「ホント、何のドラマだよ?」
「でもそれ、大丈夫なのか? 誘拐とかってことになるんじゃないのか?」
「まあその点は、昨日のうちに警察に通報して、『俺が誘拐したわけじゃない』とは説明しておいたけどよ。これがまたひどい話で」
「ひどい話?」
「そうなんだよ。俺んとこに転がり込んできた女子高生ってのが、警察でも有名な厄介者らしくって、『一晩保護をお願いします』とか言って逃げやがった」
「……! それってもしかして、<大虎>とか呼ばれてなかったか……?」
「! 知ってんのか? 牧島」
「あ~、それ、私の娘の同級生だわ。たぶん」
「は……!?」
「名前は<
「悪い意味で有名人……って、あの学校でか?」
「そ、いわく<ワルの吹き溜まり>。いわく<自分の名前が漢字で書けたら合格できる入試>のあの学校。そして私の母校でもある」
「昔よりはマシになったとは聞いてるが、それでも底辺オブ底辺校だろ? でもまあ、そこ出身のお前がうちの会社に入れるんだから、上澄みから沈殿物までいろいろいるんだろうが」
「うん。私の娘もその上澄み部分だけどね。でも、その大戸ってコは、『昔に比べてマシになった』あの学校でも悪目立ちしてるコで、援助交際、今は<パパ活>って言うんだっけ?してるってよ~く知られてるそうだよ。学校もサボりまくって出席日数は常にギリギリだとか。正直、三年に進級する前に辞めるんじゃないかとも言われてるって」
「とんでもねえ奴だな……」
まさかこのルートから情報が入ってくるとは思ってなかったが、牧島の口ぶりだと、悪目立ちはしてるもののなんかヤバい連中と繋がりがあるような感じじゃなかったから、その点では少しホッとしたのだった。
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