趣味
警察にも見捨てられたものの、一応、こいつが勝手にうちに上がり込んだだけでこっちは被害者だってのを認知させただけでもまあよかったとは思ったが、大虎が警官とのやり取りまで録音して、
『あいつらすぐに自分が言ったこと、なかったことにするよ?』
と口にしたことで、ゾッとした。確かに、今回の通報をなかったことにして俺を逮捕しに来ることだって有り得ると思えてしまった。
「まあでも、ウチがいるって分かったらもう来ないし安心していいよ~♡」
とかホザきやがる。なんなんだ、こいつのこの自信は……!?
「知るか!」
言いながら俺は、ヤケクソ気味に風呂に入った。少しでも気分を落ち着かせたかった。トイレにこもった時もそうだったが、俺は、通帳やカード類や現金は常に持ち歩いていて貴重品は家には置いてない。だから、まあ、盗まれてそんなに困るものも家にはないから、そっちは別に心配してなかった。むしろなんか盗んで出て行ってくれればそっちの方がありがたかった。風呂に入ってる間も、
『なんでも好きなもん持ってっていいからさっさと出てってくれ……!』
とも思ってた。なのに、
『なんでこいつ、こんなに寛いでんだよ……』
俺が風呂から上がってもまだ素っ裸でエアコンの暖房の風を使って髪の毛を乾かしてやがった。
「なにこの部屋、ドライヤーもないとか、マジ有り得ないんですけど~?」
もうわけが分からない。どんな親に育てられたらこんな奴になるんだ? 俺の長女も、俺のことを心底軽蔑はしてたみたいだが、ここまでふざけてないぞ?
「知るか、俺は髪の毛はいつも短くしてっからドライヤーとか使わないんだよ!」
と言い返す。
そしたら大虎はいきなり俺の髪を何ヶ所か摘まんで、
「きゃはは♡ オッサン、頭のてっぺんの毛、メッチャ細いじゃん! てっぺんからハゲてくるヤツだ~! そっかそっかあ、髪の毛長くしてムレたら余計にハゲるかもだからね~。気にしてんだ~」
とまで笑いながら。
だから大虎の体が俺の視界に入ったりするものの、エロさなんかまったく感じなかった。しかも、腹が立つのを通り越して、呆れ果てて。
「ほっとけ! そんなことは分かってるっての! それにもう四十だしな。今から剥げてきたって別に普通だろ!」
言い返して俺はミネラルウォーターを二リットルのペットボトルから直飲みする。
ちなみに俺は酒は飲まない。煙草も吸わない。趣味は車をいじることだったが、最近はなんかそれも飽きてきて、ミニカーを集めるのが趣味になってた。と言っても、そんなに高価なレアものみたいなのは持ってない。
精々、二百円とか三百円、一番高いヤツでも二千円程度で買えるものばかりだ。
すると大虎は、
「ねえねえ、オッサン、これってディーノってヤツだよね」
って言いながら、窓枠んところに置いてあったミニカーを手に取ったんだ。
なんで知ってる? 女子高生が……!?
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