好きな色は？

どの色が好きですか？

　テレビ番組を見ていると、このような企画が行われていた。

「好きな色はなにか。理由もお聞かせください」

私たちにとって当たり前に存在する色という存在。企画は色の人気者を決めるという趣旨で開催されたようだ。

最初に子どもたち、次に若者、最後に中高年の方々といった順番でランダムに聞いていくと、番組内で説明された。

　はじめに、子どもたちが画面に登場した。元気いっぱいに答えてくれた。

「赤！元気いっぱいになれそうだから」

「ピンク！可愛い感じだから」

なんとも微笑ましい光景であった。概ね、明るい色が好きだと答える子が多かった印象だ。自分が好きだと思うものをハキハキと伝える姿は、視聴者の心も和ませたに違いないだろう。

　次に、若者たちがテレビに映る。子どもたちと違って冷静に答えてくれた。

「青かな。穏やかな気持ちにさせてくれる気がするから」

「白です。何色にも染まっていない感じがするので。自分を貫き通すというか」

真面目な回答であった。テレビのインタビューに淡々と答える姿からは、もう幼さを感じさせない。視聴者もまるで我が子の成長を見たかのように錯覚しそうな、若者たちの態度であった。

　最後に、中高年の方々が画面に映った。どの色が好きかと丁寧に聞いてみると、驚くべきことに同じ答えが返ってきた。

「グレーですね。黒と白の中間、黒とも白とも言い切れない色ですから。特にグレーゾーンが大好きです。良いとも悪いとも判断されませんから。いやあ、良い色ですよ。皆さんもそう思いません？」

その答えが飛び出すたびに、質問をするスタッフの顔には冷や汗が流れていた。

　スタッフと視聴者の双方で、このような思いがフツフツと沸き上がった者は多かったと思われる。

「あなたたちの心は真っ黒ですね。どんな色でも受け付けようとはしないのだから」