番外編 雅なる仙女 弍

お茶会は無事に終わりを告げた。本当に西王母からも助力が望めるかは分からないが、それでも皇宮での敵が減ったと考えれば、多少は楽にもなる。

漸く息が吐けると、鸚史は祝融の宮に寄ると、長椅子を一つ占領する形で横になった。祝融はそれを呆れた目で見るも、咎める事は無い。立場で言えば祝融が上だが、鸚史の主では無い。だからと言って、皇族の宮で好き勝手して良いかと言えば違うだろう。


「鸚史、昔、遠慮するなとは言ったが、彩華の前でぐらい真面目で居ようとは思わんのか」

「どうせいつかは露見するんだ。早いうちに本性を知っておいた方が良いさ」


勝手気ままに語る姿は、薙琳の為に怒りを見せた男とは、別人と見間違うほどの姿。正面に座っていた彩華も驚く顔こそ見せたが、彼女もまた見て見ぬふりを心得ていた。自然と、顔は知らぬ存ぜぬといつもの澄ました顔に戻っていた。

祝融も、これ以上言っても無駄と諦め、自身も姿勢を崩し、椅子に背を預け天を仰いでいた。何とも自堕落だが、炎天下の中、佇み主人を待っていた雲景は一足先に祝融が帰してしまった為、口煩く言う人物がここには居ない。

女官達がお茶を運んで来てくれる時ですら、特に直そうとしない。女官達の慣れた姿に、いつもの事なのだと、認識すれば、彩華は静かに茶器を手に取り、安心出来る味に静かにお茶を啜った。


「しかし、彩華。意外に肝が座っているな」


一人姿勢を正し、茶器に口を付ける彩華の姿を、祝融は肘を突きながら、呆然と見ていた。


「そうでしょうか。場慣れしていないからこそ、西王母様は仕切りに話しかけて下さったのでは?」

「最初はな。だが、ああ言った場で緊張でまともに喋れん奴もいる。それに比べれば、お前は大したものだ」

「お褒めに預かり、光栄です」


粛々と頭を下げる姿が、わざとらしくもあるが、照れ隠しだったのか、耳が赤く染まっていた。やはりまだ若く、褒められ慣れていない姿が、初々しい。だからこそ、西王母の前で見せた姿が、異質に映った。


「……彩華、燼は何者だ?」


祝融の鋭い眼差しが、彩華に刺さった。彩華が気まずさから目を伏せ、逸らした。主人の問いかけに対して、答えているも同然の行為だったが、それでも自らの口から答えるのは、憚られた。


「……祝融様が、考えている通りかと」

「はっきりと言え、別に咎めるとかは無い」


彩華は眉を顰め、ぐっと茶器を握りしめた。


「お前は、何を見た」

「……私には、あれが未だに何だったのか、分からないのです」


茶会の場で、口にした話は事実である事には変わりなかった。彩華は、乾いた喉に握りしめていた茶器の中身を流し込むと、ゆっくりと口を開いた。


「あれは、四年程前になります……」


――


黄色と紅色で山々が染まっていた。

紅葉を上空から自由気ままに眺め、酒でも飲みながら贅沢に行楽。龍の姿でなければ飛べないのが難点ではあるが、何とも素晴らしい計画だろうか。……と言う空想に浸り、実際は矛を片手に山々を見回っている。冬の静寂が差し迫る頃、陰なる存在も少しづつ、静かな眠りへと落ちていく。春への目覚めに向けて、力を蓄え、生命力溢れる芽吹きの季節を、ただ待つのだ。


彩華は遠くで、鳥が騒ぎ立てるのが見えた。それまで、獣の鳴き声や虫の音、鳥達の囀っていた穏やかな山々が一変した。静かな一点から一斉に飛び立つ鳥達に、異常と知らされている様なものだった。

この時期は妖魔が少なく、人でも狩る事が容易とあって、妖魔狩りを生業とする者が山へ入る事が多い。腕に自信のある者から、単に威勢が良い者が多く、帰って面倒事に繋がることもよくあった。


日が沈み始め、夕闇も近い。そうなると、妖魔は一気に活動的になる。彩華は身を捩り、速度を上げると、その一点へと向かった。


秋の静寂前、本来ならば大した数はいないだろう。

だが、上空から見た景色に、彩華は固唾を飲み込んだ。

生い茂る樹々の隙間から見えるのは、溢れんばかりの妖魔が、黒い一体の獣を取り囲んでは、その身に食らいつこうと、敵意を剥き出しにしていた。

そして、その獣もまた、牙を剥き出し、爪を立てては、妖魔を打ちのめしていた。


「獣人族……なのか?」


黒い獣は、熊にも見える。猛威を振るうその強さだは只の獣のはずが無いとは理解できても、鋭い眼光と怒りを含む咆哮が人を思わせない。既に、全身は血に塗れているのか、どす黒く鈍く夕陽に照らされている。

闇が近くなり、妖魔の数は増すばかり。迷っている時間など無かった。彩華は妖魔の気を逸らす為、空中で人の姿へと転じると、その勢いのまま黒い獣の近くにいた妖魔に矛を突き立てた。

矛は頭に突き刺さり、勢いで妖魔の頭蓋は砕け凹んだ。

声をかける暇など無かった。黒い獣を背後に、ひたすらに妖魔を狩った。今の所、彩華に向けられた敵意は妖魔だけ。どことなく安心感を覚えていたものの、彩華は背後に気を配る事を忘れる事は無かった。

気を抜けば、その爪が、牙がこちらに向く様な気がしてならなかった。


程なくして、日が沈んだ。火を焚く隙も無く、鬱蒼と茂る木々の隙間を縫う様に駆けていた妖魔の姿が途切れた。最後の妖魔を狩ると、振り返り、背後にいた獣の姿をはっきりと捉えた。

月明かりに照らされた姿は確かに黒い大熊だった。だが、瞳は紅く輝き、妖魔のそれと似ている。その身にこびり着いた妖魔の血の所為だろうか、妖魔が居なくなっても尚、毛は逆立ち興奮冷めやらぬと呼吸は荒々しい。


「お前は、獣人族か?」


未だ剥き出しになったままの牙と爪を視界にとらえながら、警戒は怠れないと矛を手放せないまま、言葉を発した所で、返答は無い。襲ってこない事が既に、妖魔ではないと答えは出ているも同然だった。であれば、何故人の姿に戻らないのだろうか。彩華は、相手に警戒を解かせる事が先決と、矛を地面に突き刺した。


「怪我をしているか確認したい。人に戻ってくれると助かるが。」


一歩近づいた時だった。黒い獣は彩華に向かい大きく腕を振り上げた。あまりに突然で、彩華は後ろに下がるのが遅れ、右肩に爪が食い込んだ。右肩から溢れる血に、彩華は肩を抑えるも、黒い獣は暇など与えてはくれなかった。傷を庇いながら逃げ惑う彩華を猛追しては、殺意と共に拳を振り上げる。


「(当たったら、骨が砕けそうだな……)」


初手こそ、黒い獣の一撃をお見舞いされたが、意外にも冷静だった。獣人族と対峙していると言うよりは、妖魔や只の獣に近かった。動きが単調で、速さだけなら彩華の方が優っている。勿論、拳が当たれば致命傷は避けられないだろうが。

彩華は、黒い獣を翻弄するかの様に、軽々と飛び跳ねては、その身に溜まった興奮を木々にぶつけさせた。

そうこうしている間に、彩華は矛を取り戻すと、背中に納めた。


「良い加減、戻ってくれないかな。家に帰りたく無いなら、街に送り届けるし」


聞こえていないのか、やはり反応は無い。それどころか、更に怒りを宿した瞳が鈍く紅く光っては彩華を捉えていた。


―ヴォオオォォォ


咆哮。獣の雄叫びが森に響いた。


「良いよ、好きなだけ相手になってやる」


そう言って、真正面から相手をしてやると、彩華は矛を構えた。相手が何かも分からないのにも関わらず、彩華は自分でも何を考えているかが分からなかった。ただ、この暗い不気味な山に一人放っておく事が出来なかった。

黒い獣が牙を向けては防ぎ、腕を振り上げては避け続けた。

矛の柄で小突いては、せめて気絶ぐらいしてくれないものだろうかとも考えたが、あまりの大きさに彩華の力ではびくともしない。


「(頑丈だなぁ)」


反撃こそ出来なかったが、動きが単調なおかげか、彩華は余裕があった。歴戦と言える程には、妖魔の相手をしてきたのが功を奏したのか、獣同然の動きしかしないのであれば、避ける事は簡単だった。

そうなれば、後は相手が力尽きるのを待つだけ。

そして、空が白み始めた。大熊の動きは鈍くなり、次第に力つき、地面に倒れ込んだ。

あれだけ暴れたのだ、最早動く気力はないだろう。


「朝か……」


白んだ空を呆然と眺めながらも、彩華はそのまま帰る訳にもいかず、ひとまず火を起こすと、矛を地面に突き立てた。未だ血の止まらぬ右肩に適当に布を巻くと、腕を組み、立ったまま木に背を預け、目を閉じると僅かな休息を取った。

警戒を解いた訳ではない。目が覚めても尚、正気に戻らないならば、手立てを考える必要がある。彩華自身、そこまで実力があるわけでもなく、体力的に考えても黒い獣の方が上だろう。

あちらに知恵が戻り、回復してしまったのなら、より慎重に事を運ばねばならない。

神経を研ぎ澄ませ、焚き火の火の粉が爆ぜる音を聞きながら、彩華は黒い獣が目醒めるのをじっと待つしか無かった。


――


朝日が昇り、山々に朝を知らせる鳥の囀りがうるさくなった頃、呻き声にも近い声が、彩華の耳に届いた。


「……うぅ」


黒い獣に目を向ければ、もぞもぞと気怠そうに身を起こそうとするも、力付きまた地に伏せる。それを幾度と無く繰り返し、漸く身を持ち上げ、その瞳に彩華が映ると、再び毛を逆立て警戒を見せたが、その瞳には妖しい紅色は消えていた。


「……話せる?出来れば、真っ当な会話がしたいのだけれど」


彩華の口調には怒りも無ければ、優しさも無かった。彩華らしいと言えばそれまでだが、無関心とも言える。


「名前は?」


落ち着いた口調が獣に響いたかはわからない。それでも、気怠そうに座る姿は、最早、只の熊だった。


「……ジン」

「獣人族の村から来たんでしょ?自力で帰れる?」

「帰れない」


正気に戻ったのなら、とっとと帰って欲しかったが、どうにも本人に帰る気がないらしい。だが、それよりも気になったのは、辿々しい喋り方だった。声色こそ低く聞こえるが、転じていると声が変わる事もある。


「人の姿を見せてくれると、助かるのだけど……」


ジンと名乗ったそれは、じっと彩華を見たかと思うと、目を閉じた。体が波打ち、熊の姿はその身に吸い込まれ、姿を現したのは、小柄な少年だった。


「(子供だったか……)」


知らなかったとは言え、幼気いたいけな子ども相手に、気絶させようと、何度か後頭部を殴ったはずだが大丈夫だろうか。

先程の大熊との大きさの違いに目を丸くするも、熟練の獣人族と違って単調な動きばかり見せていた事には納得ができていた。何の訓練も積んでいない子供が、がむしゃらに拳を振るい、怯えていただけなのだ。

今も、不安か怯えか、彩華を見てはいるものの、その瞳は空虚だった。

彩華は帰れないと言う子供をどうしたものかと考えるものの、先ずは、妖魔の血に塗れた体を清潔にする事が先決だと、ジンに近づいた。


「とにかく、川に行こうか」


ジンは小さく頷き、焚き火を消し、歩き始めた彩華に続いた。


――


話を終えると、彩華は茶器を再び手に取った。話し続けた所為で、喉が潤いを求めていた。お茶を流し込めば、小さく息を吐き、姿勢を崩し肘を突いたまま話を聞いていた主人が目に入った。


「燼は何故暴れていた」

「……些細な事だった様ですが、怒りを抑えられなくなり人を傷つけ、動揺してしまったみたいです。常に意識はあったそうですが、眠るまで怒りは鎮まらなかった様です」

「それで引き取ったのか」


彩華は静かに頷いた。行き場のない子供に手を貸し、生活基盤を与えた。燼が彩華に従属心が芽生えるのも、頷ける。


「一度、村に話をつけに行ったのですが、手がつけられなくて困っていた、寧ろ助かるとまで言われてしまいました」

「燼の姿からは、想像できんな」

「えぇ、私の前では大人しく、これと言って問題行動はありません」


大人しい子供。それが、祝融の燼に対する印象だった。話を聞く限り、不安定な部分もあるが、彩華と過ごした四年で何も無いなら、鳴りを顰めているか、治ったか。果たしてどちらかなど、判断も着かず、今は考えるだけ無駄だった。


「そろそろ、お暇させて頂きます。燼も、待っている事でしょうから」


彩華の言葉で、外を見れば、夕暮れ近くと日が橙色に染まりかけていた。


「そうだな、近々、また外に出る事になるだろう。その時は、頼む」

「承知致しました」


彩華が粛々と頭を下げると、今度は鸚史が徐に立ち上がったかと思うと、腰に手を当てては、背を伸ばした。


「さて、俺も帰るかな。彩華、送ってくれ」

「人の従者を扱き使うな。歩いて帰れ」

「私は構いません」

「そう言う事だ。じゃあな」


彩華が再び祝融に向かって頭を下げると、鸚史に続く形で宮を出ていった。

夕暮れ時になって、漸く日差しが弱まった。これなら穏やかに飛べそうだ。彩華は鸚史と適度に距離を取ると、龍へと転じた。鸚史は、あっさりと乗り込むと、空高く飛び上がった。鸚史が暮らす貴族街までは大した距離はない。一気に高く登ったかと思えば、そのままゆっくりと降っていった。その先には、青々とした庭が目に入り、龍の姿でも問題なさそうな場所を見つけると、ゆっくりと地に降りた。


「助かった」

「いえ、大した事はしておりません」


龍の姿のまま軽く目を伏せると、そのまま飛び立とうとする。


「彩華、先ほどは、祝融に従っても良かったんだ。お前の主人は祝融だからな」

「えっと……それは……」

「祝融に命じられたのなら、従うしかないが、主人でもない者の言葉など、無視しても良いと言う事だ。龍が簡単に人を背に乗せるなと教わると聞くが、郭家は違うのか?」

「いえ、そう教わります」

「なら、教えは無視して誰でも背に乗せるのか」

「鸚史様は祝融様のご友人でもありますので、深くは考えておりませんでした」


龍にとって、背に乗せるのは、矜持に関わると幼い頃より教えられる。

馬にはなるな。人を背に乗せる事で、獣と同じ価値しか無くなると教えているのだが、朱家は進んで姜家の馬となったとも言われている。それを真似てはいけない。龍族としての誇りを失わないためにも、安易に人を背に乗せる事は躊躇われるのだ。その為か、殆どが皇帝の命があって初めて、その背に人を乗せた。龍族で自ら進んで背を差し出す者は少ないが、彩華はその数少ない内の一人と言えるが、大概は変わり者と呼ばれている。


「……成程、変わり者の龍か。祝融にはもってこいの人材だったわけだ」

「それは……」

「俺も、変わり者って事だ」


それは、獣人族を従者とする所だろうか。それとも、皇族の居宮で長椅子に横になれる度胸の事だろうか。殿下と呼ぶべき相手を、呼び捨てで呼ぶ所だろうか。思い当たる節はいくつも浮かんだ。


「変わり者同士、仲良くしてくれ」


皇族とも繋がりのある高位の貴族とは思えない、屈託のない笑顔を見せる。確かに、鸚史は変わり者と言えるかも知れないと、彩華は納得してしまった。


「私の様な、低位の者で宜しければ」

「卑屈だが、まあいいか。じゃあな」


鸚史が屋敷に向かう後ろ姿を見届けると、彩華は風家邸を後にした。

空を優雅に舞う黒い龍。貴族街の端にある、比較的小さな邸宅が見えた。彩華が皇都に勤めるからと、郭家当主が急ぎ用意したものだった。古い建物ではあったが、多少の補修によりそれも目立ったものではない。客人を招く事の出来る応接間があり、住み込みの使用人用の居室まである。貴族街の中では小さいが、燼と二人の使用人と暮らすには大き過ぎるほどだった。

龍が降り立つには十分と言え無いが、貴族街でも端のため人気が少ない事を良い事に、邸宅前に降り立つのが日常になっていた。


日中は空いたままになっている門をくぐり、そのまま、かんぬきを閉める。盗られるものなど何も無いし、皇都は治安も良い。本来なら、必要も無いが、私兵を雇っていない家だと、割と普通らしい。女と子供しか住んでいない家、何より、貴族街の端とあって一応警戒心は持っている事を示せと、口を酸っぱくして言われていた。


玄関までの間にある、小さな庭園。来た当初は手が入っておらず、草木は伸び荒れ放題だったが、職人顔負け……とはいかずとも、何とか客人に見られても問題無い程度にはなってきた。

鍛錬を積む場所に丁度良いのもあったが、燼の暇潰しに庭いじりを任せていた。器用とまではいかずとも、道具をどれなりに揃えたら、二ヶ月余りで様になってきたのだから、意外に向いているのかもしれない。


「彩華」


呆然と立ちすくみ、庭を眺めていたら、頭の上から声が降ってきた。


「お帰り」


あどけなさを残す顔が、欄干から覗いていた。無邪気で、子供らしい姿が、彩華の心を締め付けた。


―何の見返りも無く……


「(そんなの、求めるわけないじゃない)」


彩華には、ずっと求めていた物があった。家族らしい形。親と子、兄弟、母親とはそれなりに関係を築いてはいたが、いつも彩華のやり方に不満を抱いては嘆いていた。父親とも和解はしたが、今更家族の形にも慣れない。兄達は、彩華が皇族の一人の従者になった事で、余計に関係は捻れてしまった。

燼だけが、彩華にとって、家族と呼べる存在だった。だからこそ、燼がであるかなど、彩華にはどうでも良い事だった。

家族に見返りなど求め無い。主従関係になどなりたくない。沸き立つ感情を抑えながら、俯き返した返事は、弱々しいものだった。


「……ただいま」


途端に、頭上でどたどたと足音が五月蝿く響いた。再度欄干を見上げれば既に燼の姿は無く、不思議に思いながら、中に入ろうと扉を開けると、燼が戸の前に立って待っていた。


「何かあった?」


心配そうな顔に、彩華は首を振るしか無かった。

また、少し伸びた背に、目線が近くなってきたと、頭に手を置きそのまま撫でる。

嫌がってはいるが、諦めたのか、態とらしい溜息を吐いて見せる。


「彩華、人前では止めろよ」

「分かってる」


口を尖らせ、不満気な顔を見せても、決して、その手を払い除ける事は無い。反抗期が終わったのか、それとも気を使っているのか。どちらにしても、彩華は燼の子供らしい顔付きに、心洗われる様だった。


「今日、何とかって偉い人とお茶飲んだんだっけ?」

「西王母様ね、後で話してあげる」


燼の頭から手を離し、二人並んで、漸く帰る場所と呼べる様になった家へと入っていった。

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