番外編 雅なる仙女 壱

ふう鸚史おうしは、自分が恵まれた家柄だと、幼き頃より理解していた。政治的権力の高い家であり、父親の言は六仙程では無いにしても、影響力はある。あまりに格式高いと面倒だが、自分は次男と悠々と生きるつもりでいた。後継としては一応数えられているが、興味もない。

家督である父は、皇族の中でも忌み嫌われている男の肩を持ち、その男の力になる様に言う。恐らく、鸚史が次子であり、後継に興味がないからこそ、そう命じたのだろう。もしかしたら、鸚史に何らかの期待を寄せたのかもしれないが、どこまで深読みすればいいかもわからず、今となっては、友人の力になる程度にしか考えていない。

友人と呼べる程に、仲が良くなった男は、その家柄に苦労している。継ぐ家督があるわけでもなく、後継としても、継承権も低く、そもそも存在するかどうかも分からない。それにも関わらず、何かと彼のは騒がしい。


そして、彼が新たな従者を迎えたのが、話の種となってしまった。道を塞ぎ、突っ掛かってきたのは、数名の文官を引き連れた祝融の異母兄。何番目だったかは忘れたが、あまり良い印象は無い。と言うよりは、印象自体が皆無だった。身なりからして、文官だったか、そんな程度だ。


「(何て名前だったか……)」


印象も薄く、名前も思い出せないと鸚史はひたすらに頭の中の記憶を手繰り寄せたが、これと言って手応えもなく、すっぱりと諦めてしまった。普段は、皇宮の外を飛び回っているため、覚える必要もないとたかを括っていたが、こうやって不意打ちで出会う事を考えると、皇帝の近しい親族ぐらいの名前は把握しておいた方が良さそうだと、改めて実感させられる。

そして、その異母兄は、祝融が引き連れている中でも、見慣れない黒髪の龍人族の女をまじまじと見た。龍人族ではあったが、片田舎の小領地の娘。玄家の分家に当たるが、知名度は低い。


「嫁として貰い手の無い、龍でも引き取ってきたのか?」


何とも、下品な物言いに、背後についていた龍人族は眉一つ動かさなかった。本人は至って気にしていない様子。そもそも、反論するわけにもいかないのだが、無表情を貫き、言葉を受け流す術を知っている様だった。ただ、侮辱された当人に対して、自分の麾下が侮辱されて黙っていられない男が一人。


異母兄上あにうえ、女だからと言って、結婚が全てでは無いのでは?彼女は、妖魔どころか業魔にすら立ち向かう。その勇ましさたるや、歴戦の武官と相違ありません。」


何とも良い笑顔で、自身の従者を褒めちぎる。いつもならば、穏やかに躱し、その場を立ち去るが、どうやら侮辱する相手を間違えてしまった様だ。

祝融の顔は段々と陰り、異母兄へと詰め寄っていった。

いくら弟とは言え、六尺を優に越える殺気立った大男に詰め寄られ、恐怖を感じないはずがない。異母兄の顔色は悪くなり、冷や汗まで出ている始末。


「異母兄上は文官であらせられますが、だからと言って、武官の仕事を知らぬわけでもありますまい。」

「な……何が言いたい。」

「彼女は臆する事なく、民の為、自ら進んで妖魔狩りを行っていた。妖魔の一頭も斬った事の無い異母兄上には、苦労はわからないでしょう。今一度、剣を握って皇軍に混ざってみては?」

「馬鹿げた事を!」

「皇宮に籠っていては、陰と対峙する者の真価もわからない。畏怖を知っても尚、俺の麾下を貶めたければ、俺を侮辱しろ。貶める要因があればだがな。」


鸚史には、祝融がどんな顔をしているかまでは見えなかったが、異母兄の顔色を見れば、何となくだが想像がついた。逃げる様にその場を去り、後を追う文官達の姿は何とも滑稽だった。恐らく、祝融や従者を侮辱しようなどとは二度と思わないだろう。


「無駄な時間を過ごしたな」


そう言いながらも、すっきりとした顔をして見せる祝融。反対に、彩華の方が不安な面持ちへと変化していた。


「祝融様、兄君にあの様な物言いをしては……」

「気にするな、弱者と決め付けられたなら、それを払拭する方が時間が掛かるからな。一度言っておかねば、お前の沽券に関わる」


弱味は見せてはいけない。何より自分の臣を守れないとあっては、それこそ弱い立場に置かれる事となる。脅してはいたが、やり方は兎も角、怒りを見せた事に関しては何も間違ってはいないだろう。


「二度と彩華の前に顔見せる事も無いんじゃないのか?」

「三歩、歩いて忘れてなければな」


思わぬ祝融の言葉で、鸚史は吹き出しそうになってしまった。


「こんな所で笑わせるなよっ」


そう、今いるのは皇宮真っ只中。よりにもよって、面倒な相手と出くわしたとは思ったが、それを鳥頭と宣う。流石の彩華も唖然と祝融を見つめるばかり。

相当に立腹したのだろうが、場所が悪い。人気は無いが、何処で誰が見ているとも分からない。無用な争いは、本来なら避けるべきなのだ。だからこそ、祝融はいつも軽く躱す。今回ばかりは、彩華を守るためであり、侮辱された事が気に食わなかったのだろう。


「可哀想に、これが知れ渡れば、いよいよ利閣りかく様の立場は無くなるでしょうね」


雲景が走り去る男を眺めながら、心にもない事を無表情で呟いていた。その言葉で、鸚史が思い出すよりも前に答えが目の前に降ってきてしまった。


「(そうだ、利閣だ)」


祝融には、異母兄が三人いる。長兄道托、次子阿孫、そして、間抜け面を晒した三子利閣。上二人は優秀な武官であり、どちらも皇軍の将軍職を担っている。そして、四子祝融と五子静瑛は、皇帝の命を受け業魔討伐の為各地を奔走している。上も下も、実績を重ね、それなりに名を上げている。これに挟まれていては、立つ瀬も無いと言うものだ。それを思うと、雲景の言う通り、哀れにも見える。

祝融の年齢をみれば、利閣が不死なのは確かな筈だが、それでも心労からか、老いがちらつき始めてはいた。


「(下手をしたら、早々に歳食って死ぬな)」


不死の死因は老衰が多い。精神の老い、衰弱全てが肉体の老いへと繋がる。最悪の場合、只人の寿命よりも加速度的に歳を取る……何て事も稀にあると聞く。精神と肉体を鍛えれば、不老不死の如く若さを保ったまま、永く生きることも可能とされているが、それが出来る者は極わずかだ。

祝融も全く異母とは言え、兄弟という感情が無いという訳でも無いのか、利閣が過ぎ去った方を目で追っていた。


「気になるか」

「……さてな」


恐らく、祝融も利閣の老いには気付いているだろう。祝融とて、好きで敵意を向けた訳でもない。兄弟として生まれたにも関わらず、関係は希薄どころか悪意で澱んでいる。世襲が当たり前のこの国で、仲良く真っ当な兄弟関係を築ける者も少ないのも事実な為、これと言って祝融達の関係が珍しいかと言われると、そうでもない。ただ、祝融の場合は、皇帝の孫ではあるが、皇帝が一代で生き続けるため、後継というものが存在しない。鸚史から見れば、彼らは何をそこまで祝融を敵視しているかが理解できなかった。


「祝融様、そろそろ」

「そうだな」


いつまでも、この場に佇んでいるわけにもいかない。雲景に促され、一向は、本来の目的である皇宮の一角へと足を運んだ。

途中、彩華の足取りが重くなった。恐らく、緊張しているのだろう。そもそも、今日呼び出されたのは、鸚史と彩華だった。そして、呼び出される覚えも無い相手とあって、顔にこそ出ていないが、田舎で悠々と過ごしていた女の胃はキリキリと締め付けられている事だろう。祝融の従者として勤め始めて、まだ二ヶ月と経っていないにも関わらず、目をつけられてしまったのが運の尽きだ。嫌味を受け流す事が出来ても、立ち回りまでは上手くはいかないだろう。


「(可哀想なのは、彩華だな)」


鸚史も同じように名を連なって呼ばれたが、祝融の近くにいれば自ずと名も知られる機会もあるだろうと、特に気にもしていない。


「彩華、今日はお茶に呼ばれただけだから、安心しろ。龍を喰ったりしないぞ」

「それは、わかっているのですが……」


場を和ませようと鸚史が隣を歩く彩華に声を掛けるも、顔色は変わらない。令嬢らしからぬ生活をしてきたのもあって、作法に疎い訳ではないが、自信がないと言う。結婚する予定もなければ、皇宮に勤める予定も無かったのだから、仕方がないとも言えるが、皇宮に来てしまったからには、仕方が無いで済まされない。もう一人の赤髪の龍人族は小慣れているからか、平然としている。普段から、その姿を見ている所為もあって、こんなびくびくと怯えた龍人族もいるのかと、思わず感心してしまう程だった。


皇宮の本城を抜け、しばらく歩くと睡蓮が咲き乱れる池が見えてきた。そして、その池の真ん中にぽつんと建てられた東屋。既に、当人は寛いでいる様子で、こちらに顔を向けていた。


「私はここで待ちます」


雲景はあくまで祝融の従者。呼ばれていない為、本人の顔を見る事出来ない。暑い日差しの中、この場で待たされる事に同情もするが、正直に言えば、面倒ごとに巻き込まれなかったその立場が羨ましくもあった。


東屋まで伸びる一本の橋を渡ると、東屋の中で天女と思しき美姫と謳われる女……六仙の一人でもある西王母が座っていた。

神子の様に穏やかだが、腹の中は全くもって見えては来ない。扇子で口許を覆い隠すも、その目は何とも冷たい。

六仙の前では、皇族である事など、意味を為さない。祝融が自然と頭を垂れると、鸚史と彩華もそれに続いた。


「よい、皆頭を上げなさい」


凛とした涼しげな声に、顔を上げれば、朗らかな笑顔をむけている。

皇帝と同等の権威を持つ六仙。まず、直近で謁見する事も叶わない相手である事は明白だ。天命を受けし者と称えられる祝融ならいざ知らず、風家の次子や玄家の分家生まれに何の用があると言うのだろうか。

用意された卓の一角に座り、鸚史は隣に座る彩華を一瞥するも、その表情は固い。


卓の上には、生菓子や季節の果物が彩良く並べられ、何とも贅沢だ。とても、身分の無い二人を迎える為に用意されたとは思えない歓迎ぶりに、鸚史は不信感しか抱けないでいた。

それは、祝融も同じ様で、取り繕った笑顔を見せている。彩華が同席しているのもあって、気を抜くわけにもいかない。


「祝融、そちの新しい従者を紹介してはくれぬのか?」

「これは失礼致しました。墨省エイシン郭家子女彩華。この度、私の麾下と相成りました」


嘘臭い笑顔で述べるも、腹の中では「どうせ知ってるんだろう、わざわざ聞くな」、なんて考えていそうで、今にも、そんな声が聞こえてきそうだ。


「可愛らしい龍だこと、随分と若い者を引き込んだのだな」

「確かに若いですが、実力は確かです」


彩華は三十程度で龍の寿命を考えると、若い方である。そもそも、龍は若い時間が長く、肉体年齢は然程、重要視されていない。彩華の場合は、精神的な未熟さを見抜かれたのだろうが、無作法という訳でもない。これからを生きる時間を考えれば、特に問題にもならない程度だろう。


「西王母様、我が友人風鸚史と従者郭彩華への御用命をお聞かせ願えますか?」

「気をつけた方が良い、短気は女に嫌われる。」


勿体ぶっているのか、卓の上に並んだ切り分けられた梨を串に刺すと、ゆっくりと口に運んでいた。此方としては早々に用事を済ませ帰りたいのだが、どうやらその気は無いらしい。

更には、固まっている彩華にまで梨を勧めている。下手に断る事も出来ずに、梨を一口二口と頬張っていた。呑まれかけている。祝融と目を合わせるも、仕方が無いと、卓の上にある茶菓子や茶器に手を伸ばした。


本当に茶会に呼ばれただけなのか、そのまま和やかに時間は過ぎた。

珍しくも無い龍人族の女と話がしたかっただけなのか、終始気を遣い彩華に話しかけては、何かと勧めている。見様によっては、扱い易い不慣れな彩華を選んだ様にも見えなくは無い。

気さくに話しかけては、妖魔と相対してきた事から郭家が所有する金山に陰の存在があったことまで何かと細々と質問攻めにしていた。時折、彩華が困り顔を見せては祝融が助け舟に口を挟むが、意外にも彩華は慎重で、下手なことを口走る事は無かった。


「(完全に彩華を標的としたか?)」


最早、鸚史には目もくれない。鸚史は帰らせてくれと叫びたくもなったが、話を遮って帰るほど、無作法者にも成れない。折角だからと、適度に話を聞いては、高級な茶と茶菓子を口に運んだ。


「そう言えば面白い話を聞いたのだが、二人は獣人族を手懐けているらしいな」


二人、その言葉に鸚史は自身も該当すると、口に含んでいたものを茶で流し込んだ。


「それは、私の従者や彩華嬢が預かっている子供の事を言っているのでしょうか?」

「そうだ。郭彩華は兎も角としては、風鸚史は何故、従者を連れて来なんだ?」

「あくまで祝融殿下のお付きとして、西王母様に拝謁しました故、今日はいとまを与えております」


普段から休みが無いと、わざとらしく目の前で愚痴をこぼしていた。恐らく、自室でたっぷりと眠っている事だろう。もしかしたら、こっそり剣を振う妹の相手でもさせられているかもしれない。


「そうか、関係は良好か?」


正直聞かれるまでも無かった。


「信頼しております。田舎者と彼女を罵る者もおりますが、信頼された立場を羨んでの事でしょう。……西王母様も、その手の事を言いたいのでしょうか?」

「鸚史!」


不躾な物言いに、鸚史は西王母から目を逸らす事も無かった。彩華を守った祝融とでは、相手の格が違いすぎる。それでも、獣人族は何かと、弱者と決めつけられる。どれだけ力があろうが、どれだけ才があろうが、田舎者と蔑み罵る。

鸚史にとっては、たとえそれが相手が六仙だとしても許せる事では無かった。


「祝融、良い。不遜だが、許そう。獣人族を従者にする者など、珍しいと思ったのも事実。妾は、獣人族の女と子供が虐げられていないかが、知りたかっただけ」


茶器を揺らし、面白いものを見たと、朗らかに笑う。


「妾は獣人族が低俗と扱われるのが嫌いでな。獣人族も、それを甘んじて受け入れている節があるが故、対処が出来なくてな」


途端に鸚史は気まずくなり目を伏せた。試された。そして、見抜けなかった。


「……それを最初に言って頂きたかったのですが」

「警戒している様だったからの。慎重なのは良い事だが、見抜かれない様に精進しなさい」


最もな意見だった。裏をかくことに慣れすぎた弊害と言うべきか。六仙などと高尚な方が思惑も無く、近づいてくる訳がないと思い込んでいた事を、鸚史は反省するしかなかった。


「西王母様が獣人族を優遇していると言った話は聞いた事がありませんでした」

「目立った動きをすると、却って邪魔になる。代わりに、そなたらの様に獣人族を同等に扱う者を支持している。滅多にいないがな」


通りで、話を聞いた事も無かった訳だが、今の話で思い当たる人物は何人かが、鸚史の頭に浮かんでいた。


「それで、彩華嬢。そなたの従者はどうであろうか?」

「彼は、従者ではありません。私が後見人になっているだけで、そう言った約束もありません」

「では、何の為に連れてきた」

「実力は私以上にありますが、将来的に祝融様にお仕えする選択肢もある……と言うだけで、特に理由はありません」

「……待て、下手をしたら、何の見返りもないと言う事か?」

「たまたま拾った孤児に実力があった。それだけです」


何とも淡白な返答だった。彩華には執着というものが無いのか、家を出る時もあっさりしたものだったと聞く。今の返しも、突き放している様で、距離がある。性格もあるのだろうが、いまいち掴み所が無い。


「龍人族は他種族と婚姻どころか、養子縁組も不可能だ。後見人などと言っているが、たいした拘束力は無い筈。そもそも、なぜ拾った」

「本当に、偶々でした。妖魔がより集まっている箇所に討伐へと向かったら、その中心に彼が居ました。転じた姿は、成人した獣人族でしたが、その時の彼は十を過ぎたばかりだったと聞いています。妖魔を全て滅した後も、殺気立ち、私に敵意を向けていました。とても、話ができる状態では無く、放っておけば何をするかも分からない。荒っぽい手段ではありましたが、彼を説得し、何とか落ち着かせました」


彩華の言う荒っぽい手段というのは、力尽く捩じ伏せたという事だろう。


「……それは、本当に子供か?」

「子供だからこそでは?力の扱いが分からず、人を傷つけて混乱した。そんな所でしょう」


何ともしれっと答える彩華の様子に、西王母は何とも得難い表情を見せていた。

虚実混じりにも聞こえる話に、西王母は怪訝な顔つきを見せていた。それは、鸚史も同じだった。獣人族では、確かに気性が荒い者も生まれる事はある。獣本来の本能が呼び覚まされ、転じていない時でも、心身に影響するのだという。それでも、僅か十の子供が妖魔に囲まれ怯えずにいられるだろうか。立ち向かえたとして、助けてくれた者を更に警戒する必要があるのだろうか。既に燼と面識のある祝融は何か得心を得た様に頷いた。


「彩華、それは全て事実か?」

「この場で嘘など付けません」


それまで見せていた未熟な姿が消え、姿勢を正し落ち着いた様子を見せた。先程までの姿が嘘としか思えないほどに、堂々と、西王母と目を逸らす事も無い。肝が据わっているのか、それとも……


西王母は、ぱちんと音を立てて扇子を閉じると、鋭い目で捉え、舐める様にまじまじと彩華を見た。


「可愛らしい龍というのは、撤回する。祝融、良い従者を得たな」

「その様です。これも又、巡り合わせと言えるでしょう」


田舎者?悠々と過ごして来た?鸚史は言葉と、環境下だけが彩華本人を構成する情報だった。


「(肝が据わってるだけじゃ無いな)」


場慣れしていないのは確かにある。だが、彩華が飲み込まれる事は無いだろう。普段、掴み所がないと思っていたのは本質ではなく、その内に強く揺らぐ事の無い精神を持ち合わせている。


「(とんでもないものを拾ってきたな)」


話を聞く限り、燼も何かしら抱えているが、かなりの強者。彩華の命しか聞かぬのは難点だが、それでも、手の内にある事には変わりない。問題があるとすれば、彩華が燼に執着していない事だろう。


「……その内、その獣人族の子供にも会ってみたいものだ」

「まだ成人前と未熟故、西王母様と面通し出来るほど、作法も備わっておりません」

「そうか、それは残念だ」


再び扇子を開いては、口許を隠し、表情を濁す。西王母の目には何も写っていない。燼をどう見るか、彼に何を求めているのか。強い駒は誰しもが欲しい。特に、この様な不安定な時代にこそ、望まれるだろう。

西王母が何故獣人族を助け、優遇するかは分からない。実際に功績があったとしても、やはり腹の中を探っては、相手の動向を探るしか無いのだと思い知らされた。

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