戦(らんきんぐせん)
ホテルを出る時に、扉が壊れた事をフロントの従業員に告げて出ていく。
従業員は怪訝そうな顔をしていた。
それもそうだろう。俺が着込んでいる衣服は、血が付着したもので、傍から見れば薔薇が咲いたシャツを着込んでいる様に見える。
「何処で始めるんですか?」
「そうだな」
適当に会話をする。
俺は道路を歩いている。
その隣に零戸が居て、後ろにはベイビーフェイス、その後ろにはチェイサーが居た。
このまま、走って逃げるかと考えたが、体力の消耗が激しい。
逃げられるかどうか不安だったし、逃げた事で何かしらのペナルティを与えられる方が怖い。
諫の事だから、きっと、逃走に対する罰もきちんと考えている筈だった。
「…此処で、やるか」
俺はそう告げた。
其処は、戦場には相応しい場所だった。
誰も居ない、誰も近寄らない、薄暗い路地裏。
狭く、薄暗く、地面は泥濘が多い。
表通りから溶けた雪の汁が、今も裏路地に流れて水溜まりを作る。
「此処ですか、良いですよ、スノーマンさん」
「その呼び名嫌いなんだよ、敬基って呼べ」
見るからに年下だろ、だから、さんを付けて呼べ。
そう言おうとした時だった。
「貴方は、シンドバッドさんのシステムにケチをつけるんですね」
目を細めて、光を失った黒瞳が俺を睨んでいる。
システムにケチ、とは。二つ名の呼び方が嫌いだと言う部分だろう。
「心底、理解出来ませんよ。この人が、シンドバッドさんの同期で、ライバルだったなんて…失礼な事を言いますが、貴方は、シンドバッドさん程に凄い人間じゃありません。リリスさんで、ようやく及第点なんですから」
「口喧嘩がバトルの本質か?」
いいえ、と言いながら。
スーツケースから取り出した、黒色に、紫の波紋が刻まれた鉈を取り出した。
「ルールを理解してない様なので、此処で説明をします。ランク20以上は、玩具を与えられ、それ使っても良い事になってます」
「玩具…それが玩具か」
玩具と言うには、殺人鬼が手入れをしてそうなものだった。
「ねぇ、トージ」
傍にいた零戸が、その玩具の方に目を向けて、俺の肩を叩く。
「あれ…妖刀だね、使用者が代償を払う事で能力を発揮する武器」
「…それも怪異に関連する事か?」
俺がそう聞くと、零戸は首を縦に振った。
「…じゃあ、諫の馬鹿に聞かねぇとな」
何故、そんな代物を所持しているのかどうかを聞かなければならない。
「シンドバッドさんを馬鹿と言いましたね…あの人は凄い人なのに…許せない、そんな侮辱的な言葉は…例え、シンドバッドさんの友人であろうとも…僕が粛清してやる」
「来いよ
俺は手招きをして挑発した。
白雪ガ鮮血ニ染マル瞬間-トキ- 三流木青二斎無一門 @itisyou
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