第18話 探索と特訓

 ドラゴンが立ちふさがって進めない、上層へ上がるための階段がある道。そこまで行くのを一旦諦めた僕達は、逆に下層に向かって進むことにした。


 下層へ向かう目的は外への出口を見つけるため。階段を上がっていく方法以外で、外へ出る手段を探すためだった。




 下層へ進んでいくと、モンスターと遭遇することになったので戦う。苦戦するが、倒せないほどの強さではなかった。ドラゴンと戦うために鍛える特訓として、戦闘を繰り返しつつ、どんどん下へ向かって進んで行った。下へ進むたびに、僕達は強さも手に入れた。しっかりと鍛えられた。


 


「フレデリカさん! 前方から3匹のゾンビピッグが出てくるので、お願いします。その後ろにウィッチが居ます。そっちは僕が対処しますので任せて下さい。2人は、ウイッチの魔法攻撃に注意して!」

「おう! 任せろ」

「姉さん、背中は任せて」

「任せた! 優も頼む!」

「はいッ!」


 僕は2人に指示しながら、ウィッチに照準を合わせてファイアアローを放った。


 ウィッチは魔力耐久力が高くて魔法も使ってくるモンスターなので少し厄介だが、こちらから連続で魔法を当てて、相手に魔法を使う隙を与えないように手数で強引に押し切る。



 一方、近寄ってきたゾンビピッグと呼ばれている豚のような姿のゾンビ化しているモンスターに、フレデリカさんが大剣を叩きつけるように斬り込んでいく。


 シモーネさんはフレデリカさんの後ろに付いて、ゾンビピックのフレデリカさんに噛みつこうとする攻撃を牽制して撃退。次々と敵に仕留めていく。


 


 リーヴァダンジョンに入った時に比べると、明らかにレベルアップしている2人。しかし、下層へ向かいながらの特訓を始めた序盤のうちは非常に苦戦していた。



 リーヴァダンジョンの10階層で遭遇して戦闘していたモンスター達と比べたら、今戦っているモンスターは、耐久力や生命力が何十倍も高かった。


 そのため、フレデリカさんの持つ大剣で精一杯の力で斬りつけても十分なダメージを与えられずに、反撃を受けてしまうので倒しきれない。シモーネさんの弓矢による攻撃は、モンスターの身体に当たっても突き刺さらずに強靭な肉体に跳ね返されて、四苦八苦していた。弓矢を突き刺すには、力が足りない。



 そこで僕が、魔法を使って相手している敵の行動を麻痺させて、動けなくしてから魔法で防御力を下げる。2人の攻撃を通るように敵を弱らさた後とどめを刺させて、倒させることに。色々とサポートしながら、戦闘を繰り返した。これで経験値が彼女達にも入る。


 かなり時間は掛かったけれど、繰り返しモンスターを倒した2人はみるみるうちに成長していった。筋力と俊敏性が上がって、大剣の刃や弓矢がモンスターの身体にも通るようになっていた。


 僕のサポート無しで、モンスターを狩れるようになっていた。敵を早く倒せるようになって、成長するスピードもアップ。それからは短時間で、かなり腕の立つ剣士と弓使いになっていった。




「またモンスターが、段々と強くなってきてますね」

「そうね。かなり深くまで潜ってきたから」


 下層へ来るたびに、感じていた僕の素直に思った感想を口にする。


 どうやら、下へ行くほどにモンスターが強くなっていってるので、下層に行っても出口は無さそうだと思う。だけど、外へ出る手段は何がキッカケになるかわからないので、まだ希望は捨てない。


 


「エリオットの魔法による補助が無いと、戦いがキツくなってきたな」

「私たちは、エリオット君にお世話になりっぱなしね」

「うーん、そうですね……」


 申し訳無さそうにする2人。彼女達もちゃんと成長しているけれど、先に進むたびに、敵も相応に強くなっている。だから、あまり自分の成長を実感できていないようだ。なんと声を掛けるべきか思いつかないので、僕は話題を無理やり変えることに。


 


「かなり下まで降りたと思うんですけど、最下層はまだですかね?」


 10階層や20階層でドラゴンのような伝説級モンスターが出現するダンジョンがあるという記録は、王国に無かったはずだ。ドラゴンが生息しているフロアがあった地点で、かなり下層のほうだと予想する。


 少なくとも、ドラゴンが居た場所は30層位の位置だろうと思う。そう考えると、そこから更に20層を下がってきた今は、合わせて50層以上は降りてきたようだ。


 


 僕の記憶している場所で、そんなに層の深いダンジョンは王都の近くに存在しないはず。フレデリカさんとシモーネさんの2人にも聞いてみたところ、最近の情報では王都の近くにあるダンジョンで40層を超える地下に潜ったという話は聞いていないという。


 僕達がリーヴァダンジョンで引っかかった転移の罠。転移の規模や視界が暗転した10秒という転移にかかった時間から考えてみたが、王都にあるリーヴァダンジョンからそんなに遠く離れた場所ではないと思っていた。しかし、どうやら想像している以上に遠くに飛ばされた可能性が出てきた。


 


 罠に引っかかった時、魔法陣の内容をもっとシッカリ観察していればよかったな。魔法陣によって指定された転移先を読み解いて、僕達が今居る場所について分かったかもしれない。


 かと言って、あの時はシモーネさんと距離を詰めて離れ離れにならないようにするので精一杯だった。あの時、僕だけ転移の魔法を身に着けているローブが無効化してしまい、シモーネさんとフレデリカさんの2人と離れ離れになっていたら、彼女達はドラゴンにやられていただろう。


 そんな最悪な状況を考えると、今でも最良の判断だったとは思う。


 


 本格的に、今居る位置がわからなくなってきた。せめて最下層にたどり着ければ、何のダンジョンなのか分かるはず。なので、その情報から自分たちの今いる場所など特定できるかもしれない。だが、最下層にはいつたどり着けるのだろうか。それが、分からない。


 


 下がれど下がれど、ダンジョンが続いている。再び、精神的に追いつめられてきた僕達3人。


 フレデリカさんとシモーネさんの2人はどんどん成長している。階層を下るごとに驚異的なスピードでレベルアップしていくが、まだまだドラゴンと対峙するには能力が足りないかもしれない。


 


 どうすれば助かるのか、考えてみる。


 


 僕1人でドラゴンと戦うために、2人を魔法で眠らせてしまうか。余計な手出しをさせないように。


 いや。2人を眠らせても、ドラゴンと戦闘している近くに彼女達を眠らせてたままにしておく訳にはいかないし、


 ドラゴンの攻撃が届かない遠くの場所で眠らせておいたら、今度は僕がドラゴンと戦っている間に2人がモンスターに襲われるかもしれない。だから、この案は却下。


 


 2人を置いて、僕だけ先に上層へ急いで戻る。その後にドラゴンに特攻というのはどうだろう。


 2人が僕に追いついた時には、ドラゴンを既に倒せている。いやでも、2人を置いて行った場合、索敵や牽制を請け負っている魔法使いの1人が抜けることになるか。今までの連携が崩れて、戦闘が非常に厳しくなる。


 ちゃんと3人が揃っていないと、上層へ戻れないかもしれないので却下。


 


 朝にダメと言われた方法だけど、1人で挑ませてもらえないか。もう一度、2人を説得することは出来ないか。それとなく聞いてみるたが、やはりダメだった。


 囮役や援護でも良いから、戦闘に私達も参加させてくれないと戦うことは許可しない。そう提案してきた2人。


 今の彼女達では、ドラゴンの攻撃を受け切れることが出来そうになかった。なので僕は、2人を守ることに集中しながらの戦いになっていしまう。そうすると、今より勝てる見込みが少なくなるので、却下。


 


 色々と案を考えてみるが、どれも十分でない。どうするのが一番良いのだろうかと考えに熱中するあまり、奥へ奥へとすごいスピードで下層へ潜っていった。


 「あれ? 先へ続く道がない……?」

「ということは、もしかして……?」

「ここは、最下層なのか?」


 気が付くと、僕たちは最下層へたどり着いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キョウキョウの思いつき・未完作品集 キョウキョウ @kyoukyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ