第435話 親子の再会

あれが、オルタたちなのかと一瞬、自分の目を疑ってしまった。


オルタは双頭の黒く巨大な犬のような姿で、たてがみ一本一本と尾が蛇であったし、一方のヴェーレスは三つ首で、オルタと同様に蛇で構成されたたてがみを持つ巨大な獅子の姿をしていた。


親子ゆえであろうか、人の姿を取っていなくても、自分が愛するあの双子たちであることは確信できた。

雰囲気というか、その≪神力≫のもつ波長とえにしが自分に連なる存在であることを本能に訴えかけてきているのだ。


オルタとヴェーレスは、その巨体に似合わぬ機敏な動きで、縦横無尽に星の海を群れ為す神々をその鋭い顎と爪で、次々と屠っていく。


その神々の死せる残骸が、≪神力≫の粒子となりクロードのもとに集まっていく動きを見せると、双子たちはようやく、自分の到着に気が付いたようだ。


『父上、私です。オルタです。わかりますか?』


蛇の尾を振り、駆け寄ってくる。


その仕草がどうにもほほえましかったので、思わず笑みがこぼれてしまった。


「ああ、少し驚いたが俺にはわかったよ。無事で何よりだった」


『ちょっと、オルタ! そんな子供みたいな真似しないでちょうだい。今は戦闘中なのよ』


ヴェーレスがその三つの首の口から、それぞれ≪豪炎≫、≪凍結≫、≪雷撃≫の属性を持つ≪御業≫を放ち、オルタや俺に向かってきた神たちを穿うがった。


「ヴェーレスの言う通りだ。オルタ、まずは敵を片付けるぞ。親子の再会はその後ゆっくりするとしよう」


クロードも≪神輝の剣≫を手に、敵に向かっていった。



オルタとヴェーレスの力は想像以上であった。


第三天であるエナ・キドゥを優に凌駕する≪神力≫の大きさを持ち、多彩な≪御業≫を使いこなしている。


神としての力に目覚めたばかりの頃の自分を思い返してみるとこれは驚くべきことであった。


そんな双子たちと、もはや≪大神界≫に並び立つ存在がいないほどの莫大な≪神力≫の所有者となったクロードにとって、もはや凡百の神々など敵ではなかった。



形勢は一気に動き、瞬く間に周囲の神々を全て打ち倒すと、束の間、静寂が訪れ、ダグクマロが到着するまでの間、クロードたち親子だけのひと時となった。


ヴェーレスの話によると、クロードが到着するまでの間、戦況が膠着状態になったのには理由があったのだという。


≪神核≫を砕き、消滅させたはずの神が一定時間経つと蘇り、再び襲ってくるという謎の現象が繰り返し起こっていたらしい。


クロードが到着してからは、≪神核≫を砕かれた神たちは全て≪神喰≫の力で吸収されてしまうため、復活は叶わなかったようだが、倒しても倒しても蘇ってくる神たちには相当消耗させられてしまったとヴェーレスが愚痴をこぼした。


確かに、ここにやって来るまでに感じた≪神力≫の数は二十前後だったはずだが、クロードがここに来て倒した数だけでも五十体はくだらなかったと思う。


それはおそらく戦いの最中、到着前にオルタたちが倒した神々も蘇り、戦列に加わってきていたからなのだろう。



クロードは、オルタとヴェーレスに第十一天までで起きた出来事をかいつまんで説明した。


そして今この場に、残る第十天、≪死生≫のダグクマロが向かってきていることを告げると双子たちもここに残り、共に戦うと強い意志を表してくれた。

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