第431話 決定的な相違
神造次元壁を打ち破った先に現れたのは、また新たな別の神造次元壁だった。
他の全ての面を破壊してみたが同様だった。
神造次元壁でできた箱のようなものに閉じ込められたと思っていたが、その箱の外側にひと回り大きい別の箱があったのである。
神造次元壁は、≪
その強度と耐久性においては、同等量の≪神力≫による隔壁に優り、これこそがゴドゥバルドというあの赤衣赤顔の神の権能あるいは≪御業≫であるらしかった。
この神造次元壁を創生するのに必要な≪神力≫がどれほどなのかはわからないが、この箱状のものが幾重にも重なっているのだとすると、一枚一枚破壊していたのでは、脱出するのに時間がかかりすぎる。
クロードは≪戦刃創製≫で≪神力の剣≫を出現させると、それを神造次元壁に向かって構えた。
自らの全ての≪神力≫を高密度に圧縮させ、持てる最大の速力と突進力で一気にすべての神造次元壁の囲いを突破する目的だった。
だがそれでも突破するには至らず数十枚の神造次元壁を破壊するのがやっとだった。
おかしい。
この神造次元壁の箱は、一体何重になっているのだ?
そして連中の狙いは一体なんだ。
このような真似をして何の得があるのか。
消耗戦狙いか、それともただの時間稼ぎか。
もう一柱の神ダグクマロが静かなのも気になる。
奴が口走った手筈とは何だ。
そして、俺を閉じ込め、自身は一向に向かってくる気配がない。
「まさか……」
クロードの脳裏に不吉な考えが
根拠はないが、もしかするとダグクマロはルオ・ノタルの世界に向かおうとしているのではないか?
これまでの戦いで廃墟同然の≪大神界≫内で目標となるような対象はそう多くはない。
この多重神造次元壁の箱の外で、この俺を打つべく大掛かりな≪御業≫を用意していたり、こうして永遠に俺を閉じ込めておこうというのならまだ良いが、奴らの狙いが俺ではないとすると事態は最悪だ。
とにかくここを出て、ダグクマロが何をしようとしているのか確かめなければならない。
クロードの胸中を焦りと言い知れぬ不安が満たしていく。
周囲の状況をもう一度再確認しようと振り返ってみて、唖然とした。
これまで突破してきた神造次元壁の損傷がもうすでに修復を終えようとしていたのだ。
新たな壁を作り出すと同時にその修復も行う。
ゴドゥバルドという神の驚くべき力量にクロードは自らの傲りと油断を悔いた。
考えてみれば、この巨大な≪大神界≫を十の次元階層に区切り隔てるという荒業をやってのけていたのである。
その体積分の神造次元壁を造り出せるのだとしたら、これを正攻法で脱出するのは至難であることをクロードはここに来てようやく理解したのである。
『さしもの貴様も、俺の≪創壁≫には手を焼いているようだな』
ゴドゥバルドの≪念波≫が届いた。
こいつ、先ほどまでダグクマロの前でほとんど沈黙していたくせに一体、何の用だ。
『さすがに焦りが見えるようだが、そこでしばらくそうしているといい。これだけの強度の壁を作り続けるのは、俺にとってもなかなかに骨が折れることであるからな。ダグクマロが今、お前の未練を消し去りに向かっているが、それほど時はかかるまい。そのわずかの間、俺と話でもして待っていよう。俺は他の二人ほど、お前のことを忌み嫌ってはいなかった。仲間に迎え入れるのを提案したのも俺だぞ。感謝しろ』
「ちょっと待て。俺の未練とは何だ?」
『知れたことよ。お前が我らに敵対の意志を持ったのは、あのルオ・ノタルが原因なのだろう。あの世界が無くなれば、お前が我らと敵対する理由は無くなる。大丈夫だ。≪大神界≫を一度、真っ新にした後、今よりもさらに素晴らしいルオ・ノタルをお前自身が創り出せばいい。俺も力を貸すぞ』
ふざけるな。
ルオ・ノタルの世界を消し去るつもりだと?
クロードは怒りで打ち震えた。
そして、なぜこの神々と心底手を取り合うことが不可能なのかを理解した。
俺とこいつら神々との間には決定的な相違がある。
超越者ゆえなのだろうが、こいつらには、全てのものが取り返しのつかない掛け替えのないものであるという認識がない。
気に入らなければ壊し、また創り直せばいいという考えが根本にある。
悪意によるものではなく、こいつらは心の底からそれが正しいことであると思っているのだ。
その
そしてルオ・ノタルの世界を失った俺がどんな行動に出るのか、お前たちは完全に読み誤っている。
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