第416話 大神界の巨悪
ああ、駄目だ。
どこまでも膨張していくようなこの形態は危険だ。
クロードは、異変に気が付き駆けつけてきたトラマーユたちとは違う第二天の神々を貪り喰いながら、考えた。
俺というものが希薄になっていき、どこまでも広がっていきたい際限のない欲求に支配されてしまう。
同時に取り込んだ神々の記憶の断片と感情が濁流のように流れ込んできて、一時、飲み込まれてしまいそうになった。
自分がただの人間であったことを忘れてしまったなら、恐らく俺はもとのクロードに戻れなくなってしまう可能性がある。
クロードは慌てて全≪
手足があり、顔と胴体がある。
どうやら自分が記憶している人間クロードというものの姿に戻れたことに安堵したが、自分を良く知る人が違和感を感じない程度の再現率であるかは少し不安になった。
周囲を見渡すと虚無の海が広がっており、第二天の遠く離れた惑星にようやくいくつかの≪神力≫が感じ取れるような閑散とした状況になっていた。
どうやら近場にいた神々をも夢中で取り込んでしまっていたらしい。
≪神力≫がさらに大きくなったことにはメリットがあるが、随分と時間をロスしてしまった。
今は、先を急がなくてはならない。
遠方で感じられる≪神力≫からは、恐れの感情の波動が伝わって来るばかりで敵意などは感じられなかったため、放置しておくことにした。
クロードは第三天との間を仕切っている
自らの力が大きく増していることもあって、第二天の侵入時と比べると、もはや障害など無いに等しく、神造次元壁も脆く感じた。
どうやらこの下層次元からの侵入を阻むシステムは、俺のように急激に力を増しながら
神造次元壁の厚みも強度も、第二天の境よりほんの少し強化された程度であったし、封印結界も同様だった。
もしかしたら、第三天の神々の実力は第二天の神々とこの神造次元壁の強度の差ほどしか違いがないのではないか。
第三天にやってきたが、第二天の時のように駆けつけてくる神は一柱もいなかった。
『誰かいないのか? このまま、第三天を素通りし、第四天に向かわせてもらうぞ』
第三天中に響き渡るようなありったけの≪念波≫で呼び掛けてみるも応えは無かった。
感知できたのは、息をひそめるような神々の気配とそこから漏れ出る畏れの感情の弱々しい波動ばかりだ。
これは推測だが、第一天と第二天で起きたことがもう上の次元には周知され、俺の≪神力≫の増大を防ぐ目的から、接触を禁じるような下知が為されているのかもしれない。
そうであるならば、少し時間を浪費してしまうが、こちらから出向いて行き、狩れるだけの神を狩って、いくらかでも力を増す方が得策かもしれない。
なにせ目指すのは第十天。
所有する≪神力≫は少しでも多いに越したことはないのだ。
周囲を探ると複数の≪神力≫の反応があった。
ただ、第一天と第二天に比べて、神の個体数がかなり少なかった。
どうやら、この≪大神界≫は上層に行くほどに神の個体数は減り、それに反比例して≪神力≫の大きい優れた神が存在するようだ。
この第三天にはエナ・キドゥの生み出した≪世界≫もどこかにあるはずであるし、所属する神も彼女と同等クラスだと考えればよいか。
クロードはすぐに第四天に向かうようなことをせず、手早く第三天の神々を狩っていった。
強く、速く、強大なクロードの前に、第三天の神々は逃げ惑い、それすらも叶わなくなると、ためらうことなく命乞いをした。
その神々を無慈悲に滅し、己の力の糧とする。
これらの神々の創った世界には、それぞれルオ・ノタル同様の民がおり、その信奉する神を滅ぼし、取り込んでいく行為に罪悪感を感じないわけではなかったが、こちらにも背には代えられない状況がある。
命乞いをし、逃げ惑う神々を手にかけていくことは、決して気分がいいものではなかった。
だが、これはお前たち上位次元の神々が自ら招いた事態でもあるのだ。
自分たちと異なる性質と出自を持つというただそれだけの理由で俺を忌避し、排除しようとした。
あのルオ・ノタルの世界で、ただ一人の人間として愛すべき人たちと共に暮らしていくことだけが俺の望みの全てであったのにだ。
≪大神界≫全体の価値観に照らし合わせたなら、俺は確かに危険分子であり、巨悪であろう。
なにせ大量殺神者であり、しかもそれを喰らい己の力とする化け物なのだ。
だが、そのことを自覚しながらも、もはや引き返すことはできない。
力だ。
さらに大きな力がいる!
俺を危険視し、第一天ごと無に帰そうとした、第十天ダグクマロ。
そして一柱は消滅したらしいから、残る二柱の名も知らぬ≪始まりの四神≫たち。
この≪大神界≫の
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